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龍の尾亭<survivalではなくlive>版

いわきFCの応援、ソロキャンプ、それに読書、そしてコペンな日々をメモしています。

佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店)を読んだ。

2017年08月05日 16時41分35秒 | メディア日記
たった一冊佐藤正午の本を薦めるのなら、これにはしないだろうと思った。

あまりに面白く、あまりにシンプルで、かつあまりにも上手に描かれているこの作品『月の満ち欠け』をその人に紹介してしまったら、その後どうすればいいか分からなくなる、そんな気持ちで読んだ。

何だろう 「キツネに 鼻を摘ままれた」感じ、とでもいえばいいのだろうか。
とにかく語られている話の筋は、読み終わってみれば荒唐無稽かつシンプルだ。

だが。これをどうやったらこんなにも面白く描けるのか?いや、今し方読み終えたばかりの小説なのだから単純に 「面白かった」といえばそれで済みそうなものだが、そう簡単にはいかないのだ。

もちろん 「語り口の妙」とか 「テクニック」とか「佐藤正午だからな」と呟いてもいいのだが、このなんともはやもっていきところのない 楽しい「騙され感」は、むあ読んでみるしかない、と言うべきだろう。
こういうモノは、お金を払って読み、 「二度と読まない」となるかもしくは 「一生ついていきます」となるしかないんじゃなかろうか。私は無論後者なのだが。

読んだ後の感想を聞きたくなる小説だ。小説の 「物語の筋」についてではない。この小説が、読まれてしまったそのことについての、である。

ちなみに私が見知らぬ人に薦めるなら『鳩の撃退法』にしておきたい。身近な人なら 「直木賞だよ」といってこの本を渡すかな(^_^)