龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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『図書館の魔女』(上・下)高田大介著 講談社刊を読了。

2015年05月10日 22時40分27秒 | 大震災の中で
『図書館の魔女』(上・下)高田大介著 講談社刊を読了。

読み終わった直後の満足感の中で、すぐに誰かに勧めたくなる本と、誰に勧めようか、と考える本とがある。

そしてこの本は間違いなく後者だ。

もちろん、実際にはどんな本だって相手を選んで「推薦」しなければならない。
薦められて迷惑ってことはあるだろう。
「猫に小判」か「釈迦に説法」かってだけの話じゃなくて、むやみに「お薦め」すればいいってものじゃあない。

この本は読者を選ぶんだろうなあ、と思った。

第45回メフィスト賞受賞。

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とにかく書き過ぎ(=語り過ぎ)というぐらい書いているのだが、なにせ「図書館の魔女」が主人公なのだからその言葉に対する拘りや蘊蓄も、描かれている対象とシンクロしていてかつそれがこの小説の骨格を支える前提となってもいて、かつ面白いのだから文句をいう筋合いではない。

だがそれにしても、ストーリーの割には分量が長い。続編も出ているようだが、さらに続いていくのだろう。
図書館の中の少年と少女の関係という小さな物語と、国と国の存亡を賭けた権謀術数渦巻く政治・軍事のお話とを関連づける「大風呂敷」はまず見事といっておきたいなあ。

私は図書館の匂いがしてくるような本の話題や言葉を巡るいろいろを味わっているだけで幸せでしたが。

ファンタジーファンに薦めるべきなのか、いわゆる図書館モノが好きな読者に推すべきなのか、それとも言葉フェチ・「言語探偵モノ」(そんなジャンルがあるとして、ですが)におすすめすべきなのか、迷ってしまう本です。

作者は言語を専門とする研究者だという。ル・グィンや上橋菜穗子、エーコもそうだが、私にとっては学者肌の人の書く「物語」が面白い。

素人には分からないような難しくて面倒くさい蘊蓄が、単なる小説の「ケレン味」としてではなく、世界像の基盤や骨格、あるいは肝心な物語の核を支える大切な力となっている作品には、格別の読む喜びがある。

そんなこんなで誰に勧めたらいいのか分からないけれど、おすすめです。