2023.03.14撮影
冒頭の画像の植物は、実は、ゼラニウムであって、ゼラニウムでない、そして、ゼラニウムである。うん。
「ゼラニウム」はローマ字で書くと、Geranium です。これは、ラテン語やドイツ語などで読むと「ゲラニウム」のように「g」の音になりますが、英語では「ジェラニウム」のような「j」の音で読みます。日本語では、この「j」の音を「z」の音に変えて、Geraniumを、「ゼラニウム」と読みます。
この花の「所属」を、科よりも上の分類である目(もく)から書くと、次のようになります。種名、あるいは、園芸種名まではわかりません。でも、重要なのは、属名だけが「ゼラニウム」系でないこと。
フウロソウ(風露草)目 Geraniales「ゲラニアレス」
フウロソウ(風露草)科 Geraniaceae「ゲラニアケアエ」
テンジクアオイ(天竺葵)属 Pelargonium「ペラルゴニウム」*
日本での園芸上のグループ分け「ゼラニウム」
2022.10.18撮影 2023.03.14撮影
今日この記事で「ゼラニウム」として取り上げている植物は、18世紀には、その名の通り、フウロソウ属 Geranium「ゲラニウム」とされていました。
でも、18世紀も終わり近くになって、フランス革命の年(1789年)に、
このフウロソウ属 Geranium「ゲラニウム属」が、
新たに、
1.フウロソウ属 Geranium「ゲラニウム属」と
2.テンジクアオイ属 Pelargonium「ペラルゴニウム属」に
分けられたのです。
そして、このわたしたちの慣れ親しんでいる「ゼラニウム」の所属は、テンジクアオイ属 Pelargonium「ペラルゴニウム」になりました。
テンジクアオイ属
2023.03.14撮影 2023.10.18撮影
ですから、今日の植物は、
昔は、
・ヨーロッパで、Geranium と呼ばれた(民間では、現代においても)
・日本でもそれにならい、「ゼラニウム」という
現在の生物学上の分類は、
・Geranium「ゲラニウム属」ではない
・Pelargonium「ペラルゴニウム属」(テンジクアオイ属)である
園芸上は、
・習慣に従い、ペラルゴニウム属全部を旧名で「ゼラニウム」と呼ぶ
あるいは、
・ペラルゴニウム属の一部を「ゼラニウム」と呼ぶ(以下の1)
ペラルゴニウム(テンジクアオイ属)の、園芸での分類は、
1。ゼラニウム(四季咲き)
2。ペラルゴニウム(花が大型、丈が高い)
3。アイビーゼラニウム(葉の形がツタの葉の形)
4。センテッド・ゼラニウム(ハーブ・ゼラニウム)(芳香がする、食用ではない)
そして、今日の植物は、その狭い意味1での「ゼラニウム」です。2の例は、この記事の最後に写真を掲載します。
2023.03.14撮影 2023.06.06撮影
わたしが小学生のとき、母がこのゼラニウム(テンジクアオイ)に凝っていて、庭に何種類も作っていました。
あるとき、わたしがお稽古事の道筋でちょっと変わったゼラニウムを見たのです。見とれたのですが、どうしようもない。子どものことだから、ぼ〜〜、としているだけ。お稽古への行きに見たのですが、帰りにも立ち止まりました。こんなにきれいな花の大きな株、今までなぜ気がつかなかったのだろう、って。
母にさっそく言いましたよ。おかあさん、すごくきれいなゼラニウムを見たよ、変わってるよ、って。お稽古に行く途中で見たの、と。あんなのうちにあるといいね〜〜
すると、母は、ひと枝もらってきてちょうだい、と言うのです。水に入れておけば根が出るから、それを植えればいいから、と。掘り取って、と頼むんじゃないから、許してくれるはず。
あんなあ、子どもにそんな使いさせるか?? でも、母が言うには、子どもだからこそ頼みに行ける、って。
2023.03.14撮影 2023.06.10撮影
親の所望すること断るわけにもいかず、次の週、お稽古のとき、、、いえ、実行できませんでした。次の週も、花を横目で見ながら通り過ぎただけ。その次の週は、花を見ないようにして通りすぎた。その次の週からは、別の道を通るようになった。
ここまで遅れると、母が催促するようになりました。知らない人のおうちに訪ねていくのは恥ずかしい、と言うと、母は、そうだね、flowerconnectionちゃんの気持ちを考えなかったね、ごめんね、って。
謝ってもらえると現金なもので、次の週には、恥ずかしさをかなぐり捨てて、ひと枝もらってきました。そのおうちの人は、知らない子どもが急に訪ねてきたことにだけでも驚いているのに、その上、ゼラニウムをくれ、なんて言うので、びっくりしただろう。
このゼラニウムがどんなゼラニウムだったかのは、忘れました。それに、母の育てていたゼラニウムは、なぜか庭からみんな消えてしまった。今から思えば、母が長期入院したからかな、と思います。
今回の帰省では、上の画像のうち右側の八重咲きのゼラニウムを庭に植えました。母がたいへん喜んでくれました。
2023.06.06撮影 2023.06.06撮影
母がゼラニウムを育てるようになる前、実は、わたしは「ゼラニウム」という花の名前はすでに知っていました。でも、見たことはなかったんです。
なぜその花の名前を知っていたか、というと、翻訳物のヨーロッパのお話しで子ども用に書き直したものを、大量に読んでいたからです。描写に、ゼラニウムがいっぱい出てきた。ヨーロッパの家と言えば、窓の外にこのゼラニウムの鉢を飾っているものだ、ぐらいにまで思っていました。
でも、どんな花か知らない。わたしの持っていた植物の図鑑には載っていませんでした。その図鑑は、日本で見られる植物の教育用だったのだと思います。
2023.06.09撮影
これは、母の育てているペラルゴニウム(テンジクアオイ)です。この、花びらが大きく柔らかめで、多くは花びらにブロッチの出るペラルゴニウムは、園芸上の分類では、先に書いた分類の2「ペラルゴニウム」になります。
母は、この花が気に入っているらしく、よく花をつけているので、わたしもうれしいです。
と、ますます感傷的になってきました。大学に入学するために親元を離れて以来ですよ、両親とこんなに長い時間を過ごすのは。改めてお知り合いになったような感じであるとともに、昔のことをたくさん思い出します。