素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅した日本列島の古代ゾウの仲間たち(その1)中本博皓

2023年01月20日 11時53分38秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち

      《 少し準備に時間を要しましたが、いままでに書いた「絶滅した日本列島のゾウのはなし」を読み直して、書き残している古代ゾウの仲間や幅を広げて増補したい部分を「絶滅した日本列島の古代ゾウの仲間たち」と題して書いて見ることにしました。》

  

            絶滅した日本列島の

          古代ゾウの仲間たち(その1)

 

 Ⅰ.日本列島には凡そ2000万年前にもゾウの仲間がいた

 

 1.日本列島はどのように生まれたのか

 凡そ2000万年前頃の日本列島ってどんな地形だったんだろうか、と調べて見ましたがちょっとやそっとで、理解できる代物ではありません。ましては、その頃の日本にゾウがいたと言われましても、わたしのような素人には信じがたいことです。

 そこでいくつか文献をひも解いてみました。その中の一つに平朝彦(1946- )氏の『日本列島の誕生』(岩波新書、1990)がありますので、少しばかり引用させてもらいました。平氏は次のように分り易く説いてくれています。

 「日本列島の地質を調べて見ますと、日本海側に海が侵入してきたのは、第三紀中新世、約1500万年前の時期です。それ以前には、湖や河川環境を示すような植物化石や珪藻の化石が産出する地層が堆積しています。

 したがって、地質のデータは、約2000万年前ぐらいから日本列島と大陸のあいだには陥没した地形があって、そこには広い範囲にわたって湖沼や河川が存在していたことを物語っています」(139頁)、と大変分り易く語っています。また、平氏は、それ以前には、日本列島と大陸の間には海が存在した証拠はないとも述べています。

古第三紀・漸新世の古地図を使って、こうした事象について調べて見ますと、2500万年前頃までは大陸とひとつになっていて、その後の日本列島と大陸との間には、平氏が指摘しているように海の存在した証拠はないことが分かります。

新第三紀・中新世頃になりますと、日本海側に海洋が出来てきます。この頃になりますと、グリーンタフ(green tuff)造山運動と呼ばれる現象が起こり、地殻の沈下が大きくなりますと、海洋の部分と言うか、海の部分が拡大するようになりました。さらにいままでは大陸にあった朝鮮半島の東側あたりまで海洋が侵入するようになったと言われています。

中新世には、現在の日本海にあたる海域にいくつもの割れ目が出来て、陥没が始まりましたが海が広がりはそれほど大きくはなかったようです。海底では火山活動が活発になり、火山灰や火山礫、溶岩が海底に堆積しました。

 また、地下から噴き出す熱水によって溶岩などが変化し、グリーンタフ(緑色の火山灰が固まったもの)、「擬灰岩」と呼ばれる緑色の岩石(緑色擬灰岩)が出来たと言われています。

  2.ステゴロフォドンゾウがいた

 ゾウ類の化石骨は、これまでにも日本列島の至る所から多数産出されています。しかしそのほとんどが臼歯であり、あるいは切歯(せっし:象牙)であることが多いのです。その理由は、とくに臼歯の場合、頭蓋骨や体骨等他の骨に比べて「化石」と言われるように「石」のように固いため、半永久的に残りやすいことがその理由として挙げられます。また、「象牙」と呼ばれる切歯の場合も同じように固いのです。

 体骨である脊椎や肋骨など壊れやすい骨でもゾウ類の場合大きいことも理由かもしれませんが他の大型獣に比べてもかなり完全な形で残されている場合が多いのです。

 ところで、発掘された化石骨の中でも、古生物学の研究において、臼歯は重要な意味を有しています。それは、その磨滅のしかたから当該「ゾウ」の年令を推定することが可能であるからなのです。その意味では、牙もまた太さ、長さから雌雄を判別する場合や年齢を推定するのに大切な役割を担っているのです。

 

 これまでも、発掘されたステゴドンゾウの臼歯や牙(切歯)、ナウマンゾウでも同じなのですが、彼らの臼歯や牙(切歯)などを研究することによって、雌雄の別や若齢のゾウか、成獣のゾウか、あるいは老齢のゾウかを判断し、年齢を突き止めたりできますので大切な意味があるとされています。

 それだけではありません。臼歯の形態から、どんな長鼻目類なのかを見分けるのにも大切なのです。日本列島に生息していたゾウ類として、これまでは主としてステゴドン科やゾウ科のゾウ類について扱って来ました。そのほとんどが、500万年前未満の地層から発見されたものばかりでした。

 しかし、いろいろ調べて見ますと、日本列島にはそれよりももっと、もっともっと昔にもゾウの仲間が生息していたことが分かって来ました。

 大雑把な言い方をしますと、凡そ2000万年前頃と言われているのですが、湊正雄(1915-1984)の『目でみる日本列島の生い立ち』(築地書館、1973)22-②(新第三紀・中新世前期の古生物1900万年前から1650万年前まで)では、ステゴロフォドン(Stegolophodon)が生息していたことを記しています。