島国ニッポンの山国から

地球温暖化、クルマ社会の諸問題、時評、街作り提言などを島国の中の四方を山で囲まれた山形盆地からのつぶやき

忘れてならない、もう一つの南アフリカ

2010-07-07 18:19:09 | クルマ社会の問題
 ワールドカップ・サッカー南アフリカ大会もそろそろ決勝戦。
 決勝戦が終われば閉会セレモニー。
 そこに、ある歴史的人物が現れるかどうかに関心を向ける日本のサッカーファンや日本チームのメンバーはどの程度存在するであろうか。
 本来ならば、その人物こそこの大会の南アフリカへの誘致に尽力したのだから、開会イベントには当然出席し、ロイヤルボックスあたりで感慨深げな表情をしていたはずである。
 ところが、その開会の直前に彼のひ孫が交通事故で急死した。
 その彼こそ、悪名高い白人による黒人に対するアパルトヘイト(人種隔離)策の撤廃運動のために20年以上の牢獄生活を余儀なくされていたが、1991年に黒人初の大統領となったネルソン・マンデラ氏である。
 愛するひ孫の交通事故死は実のところ決して単なる偶然や不運によるものではない。
 ひ孫の死はまさしく南アフリカの病巣の現実を象徴している。
 マンデラ氏は南アフリカ大会の実現により南アフリカ国民が人種を超えて一体化できる一つの大きな契機にしようと考えていたのだが、現実は白人層はオランダ系(彼らはアフリカーナー、つまりアフリカ人と自称している)がラグビー、イギリス系がクリケットに関心を向け、サッカー人気は黒人層が主体のようだ。
 だが、スタジアム付近の道路はサッカー観戦に向かう観客のクルマでいつもひどい渋滞に見舞われているのだが、そのクルマの所有者の多くは黒人層で、南アフリカ黒人社会にも急速にマイカーが普及し、経済的な富裕層や中間層が増えていることを物語る。
 サッカースタジアムの内側ではブブゼラの大合奏が耳をつんざいているが、スタジアムの外側でも大量のクルマの走行とクラクションによる騒音も耳をつんざいているようだ。
 一方、近年の経済成長に反比例するかのように暴力の蔓延などで治安の悪化が進み、「世界有数の犯罪大国」と揶揄されるまでになっている。
 たぶん、クルマの使用においても無軌道ぶりや暴走、酒気帯び運転などが蔓延しており、事故死者も戦争並みの凄い数になっていることであろう。(※日本とて死者数はかつての三分の一以下になったとはいえ、数千人というのはイラクやアフガンの爆弾テロによる犠牲者以上である)
 こんな中でマンデラ元大統領のひ孫は犠牲になったのである。
 この南アフリカの現実をサッカー熱に浮かされ、日本選手たちに深い感動を吐露する日本人はこの現実を忘れてはならないであろう。