
五月といえばまだ春の季節
下界には当然まったく雪は見当たらない。
でも、周囲の高山を仰ぎ見れば、頂上部分が見事なまでに白いベールで被われているのがわかる。

これを何の先入観も持たずに眺めるだけなら、「心が洗われる」とか「疲れも吹き飛ばされるようだ」とか、或いは「癒される」ほどの美しさだとかの賛辞が並べたてられ、それゆえに山形は豊かな自然に囲まれて県民も幸せだと言われるのであろう。
だが、これらの真白き冠雪はただ単に美しいだけなのであろうか。
確かに山形は福島県の隣県でありながら下界での放射線量の測定値は関東地方南部よりも低い。それも、山形盆地の周囲にはこれらの高い山脈が連なり、事故の原発からの放射性物質を遮っているからである。
それでも、頂上付近の放射線量は下界よりも多いとは言えないか。
放射性物質は福島原発からのみ流れてきているわけではない。
先週は山形盆地もかなりの黄砂で覆われて、周囲の山並みもさっぱり見えないことがあった。
黄砂は申すまでもなく中国大陸から西風により運ばれて来るのだが、90年代までに数十回にわたり行われた西部砂漠地帯での核実験による残存放射性物質がそれらの砂塵の中にかなり含まれているのだという。
むろん、それ以前に中国の核実験場のすぐ近くの中央アジアで行われた旧ソ連による核実験での残存放射性物質も含まれていると考えるべきであろう。
ああ、麗しき美白の冠雪の中で「日中ソ」の放射性物質が“共存”していることになる。
◆ 写真「上」は山形市街ビルの展望室から望まれる月山
「下」は東北アルプスと言われる朝日連峰 ◎ともに5月18日撮影