
黒光りするほどのどす黒いのは何だろう。
福島県民、特に原発被災者に元気を与えてくれたフラガールたちの故郷に今も残る炭鉱から排出されて築かれたボタ山のようでもあるが、決してそれほどの大きさのものではないし、かと言って何かの燃えカスが堆積したものでもなさそうである。
この薄汚さの中に、白い雪のようなものも混じっているが、やはりどうやら雪そのものである。
それにしても不気味なほどの汚さである。
むろん、これを食べてみたいとか、舐めてみたいというような者は居ないであろう。
ところで、この汚れの正体は何なのだろうか。
もしかしたら、いま日本国中で一番有害なものとして怖れられているセシウムによるものなのだろうか。
むろん、セシウムは「目に見えない、臭わない」のが特色だから、この黒さはセシウムの色ではない。
これらの堆積物の山の所在地はすべて車道のすぐ脇にある。
もともとは道路の除排雪によって車道脇に堆積させられた人工の雪山であるが、当初は純白でミニ・アルプスさながらにきらきら輝いていたのだが、やがて次第に黒ずんできて、ひどい場合は黒ペンキで塗り固められたようになる。
どうしてこれほどまで黒ずんでくるのかを研究した学者の存在は知らないが、おおよそのことは推察できる。
つまりは
沿道の大気と路面自体も汚れきっているから、除雪の際に路上の粉塵が一緒に押し込められ、融雪に伴い露わになったり、沿道の大気の粉塵が降り積もったり、路面の泥になった粉塵がクルマの走行により跳ね上げられたりして「汚れ」に度を加えたものであろう。
クルマの走行が多ければ多いほど、またクルマの速度が速ければ速いほど排気ガスに含まれる汚染物質や有害で微細な粒子が多く撒き散らされ、またタイヤの回転に伴い舗装道路の磨滅も激しくなり、それだけ多くの粉塵が生じる。

一年前の大震災に伴う原発事故の後に放射性物質の「除染」が強く叫ばれる一方で、多数のクルマの走行に伴う有害物質の大量噴出にはきわめて鈍感になっているようだ。
いかにセシウムが除染された(セシウム自体は減少するわけではない)としても、日本の大気には有害物質が蔓延し、路面は有害粉塵の生産工場であることを忘れてはならないだろう。
車道の脇に堆積された人工雪山の極度の汚れはこのことを教えてくれているのだ。
だが、愚かな車用族はなおもクルマの使用をやめようとはしないであろう。
そしてセシウムさえ除染されれば「安全安心」が回復されると信じているようでもある。
加えて言うなら、原発なしに現在のクルマ社会もありえなかった(※注)のだから、セシウムなど「受けて立つ」べきではないか。
※注 本体と諸部品の大量生産のためには膨大な量の電力が不可欠 また、特に夜間操業の場合は夜間も稼働する(日中と夜間で出力の上下が困難)原発は頼りになる。