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8.12ゲノム科学から見た低線量被曝の考え方~福島原発事故に対する緊急提案

2011年08月14日 | まつりごと
 国会での発言が評判を呼び、問い合わせが殺到したため、東京大学先端科学研究センター・児玉龍彦教授が12日、緊急講演を行ないました。「日本政府は、最近の最先端研究が全く反映されていないICRP(国際放射線防護委員会)の報告書を採用している」「総理大臣には島津社長の所に行って、1か月でやってくれと頼んでいただきたい」以下、その要点。 by Ustream

 国会で説明した事に補足を加えての説明と、国会の話から一歩進めて提案したいと思います。放射性物質が放出された時に私どもが一番心配するのは、内部被曝という遺伝子を傷つけることです。昔の考え方と今日では、ヒトのゲノムが読まれてからは一変するような状態になっております。チェルノブイリの約4割の子どもの染色体の7番が3つになっている。放射線などで遺伝子が切られるとその後に一部重複して、遺伝子が2コピーになってしまう。もう一つが1コピーで、合計3コピーになる現象が知られています。7q11という領域のコピー数が3つになっているということが見付けられました。昔はゲノムという染色体のことがよくわからなかったので、低線量の被曝というのが確率論であったり、修復する機能があるんだと言われてきました。しかし、ゲノム科学でみますと、DNAの切断が起こると、一定の率でパリンドローム変異がおこり、それが原因となって遺伝子が活性化される。それに刺激されてレット遺伝子が活性化されて、さらにそれから10年とか20年経つと、もう一つの遺伝子が変異を起こして癌化するというメカニズムが、かなり決定論的なメカニズムとしてわかるようになってきました。
 それで、よくα線の核種を飲んでも大丈夫と言われますが、これは殆ど、ネズミとか犬で行われている実験で、寿命が2~10年の動物で行われているのです。2~10年の実験ではこのように20年以降、人間に起こる放射線障害というのがわからない。我々が、内部被曝を問題にする時には、人間での内部被曝を問題にしなくてはいけません。今までの低線量被曝の議論で、一部に疫学や統計学での証拠が必要だと言われますが、疫学や統計学というのは、一つの経過が終わった後にそこから原因をみるという学問的作業であります。甲状腺がんの場合もこの問題が如実に表れまして、チェルノブイリで実は91年ごろに甲状腺がんが増えてきているということが、実際コンセンサスとなったのは2005年。4000人と言われる甲状腺がん、15人の子どもの死亡例が出た後にはじめて、疫学とか統計学でコンセンサスになるということになった。それで、今我々が、福島原発の後で考えなくてはいけないのは、これから起こる障害や事態を予測する。シュミレーションするという事を積極的に行なって、この事態に対処するということが非常に大事だと思っています。ヨウ素131は半減期が8日です。大体一か月で10分の1に減りますから、2カ月で100分の1、3か月で1000分の1になりますので、今日ではほとんど検出できません。
 先程予測の問題が非常に重要だと申し上げましたのは、3月15日にヨウ素が大量に放出されていた時に実際にはわが国は、128億円かけてSPEEDIというスーパーコンピューターの予測システムがフルに稼働していました。私も、スーパーコンピューターを使う仕事をしておりますので、同業者の動向はよく知っておりまして、SPEEDIが完全に地震とその後の混乱の中でコンピューターとしては稼働していたということをよく存じております。それにもかかわらず、今出ている様々な報告をみますと「SPEEDIの予測という入力されるデータが十分でなかったから発表されなかった」という見解が出ていますが、これは非常に大きな間違いです。全てのデータが揃った場合にはこれは予測ではなくて、我々は実測と呼びます。今、コンピューターを使う必要性というのは少ないパラメーターで最適の予測をやるというところに非常に大きな能力があります。現にSPEEDIで行われていた予測は、その後、飯館村などの放射線を含むプルムの移動を非常に正確に予測しております。実際に南相馬に支援で入って感じましたのは、南相馬の多くの方があの時点で海沿いの線量の低い所から飯館村の方に避難したと。当日にプルムの非常に多かった所に行ってしまった方がいらっしゃいます。こういうことを避けてこれからの放射線障害を予測するということが科学者に対して課せられたもっとも大きな使命であり、全ての関係の方々が様々な科学論争での見解を捨てて、これから起こる事態に、どういうふうに子どもや妊婦を守っていけるかということを真剣に考える段階になっているのではないかと思って国会で発言させていただきました。
 これから最も大きな問題になると現在考えていられることはセシウム137です。これは土壌その他の調査で現在最も多量に検出されている核種です。30年という長い寿命を持っていますから、これからかなり長期にわたって検討すべき問題です。日本の土壌では土の流出が約40年で半分起こるとされており、半減期が30年ですので、普通の田畑が半分になるのに17年かかり、今後一番の問題になります。チェルノブイリでは、大体、尿中に6ベクレル/リッター位セシウムが出る地域では、かなりの方が増殖性の膀胱炎になり、非常に多数の方に早期の膀胱がんが出来るということが報告されています。セシウムによる健康障害を予防していくということは待ったなしの課題であります。特に、被災初期にヨウ素131をひょっとしたら吸引しているかもしれない子どもなどにおいては特別の重点的の注意が必要ではないかと思っております。
 東大のアイソトープセンターでは事故の後1時間ごとに測定したり、東大の様々な水、土壌、農場の農産物等の測定を全力を挙げて行いましたが、約1ヶ月ぐらい経った頃から測定を全部自動化して、1時間の測定の物は本部でウエブ上で全て提示できるように体制が整いまして、5月から南相馬への支援を開始いたしました。20k圏の幼稚園や学校より、30k圏の方が線量が高い。毎朝バスで1700人の子ども達が、100万円のスクールバスで線量の高い方へいっている事態に遭遇しました。このことは非常に問題ではないかと、原子力対策委員会に相談しまして、原子力対策委員会も、この20k圏、30k圏の指定をどのように解除して子どもたちを守るかということを検討しています。しかしながら、この議論は実際には保障問題とリンクしている。国会などで、強制避難は優先的に支援するけどそれ以外は後回しということになっていますが、これは、実際には汚染を受けたのは住民であります。高い線量を受けたり避難をしているということは、強制であろうとなかろうと、これは基本的に住民被害として保障されるべきものであり、補償問題と被曝問題を切り離して、子ども達が多くの被曝を受けないように一刻も早く手を打って欲しいと痛切に感じております。
 一般的な線量計測というのはほとんど意味をなさないということです。室内で下に向けて線量を測ると0.2μシーベルトであるのが、上に向けて測ると0.45μシーベルトと線量計を上に向けたらバッと線量が増えてしまう。屋上に上がって測ってみますと、屋上は33μシーベルトというようなところがたくさん出てきます。それは、セシウムが土などの粒子にくっついてが雨のたびに流れて濃縮されていきます。こういう事態から私どもが考えましたのは、一律の線量区切りだとか、一つの数値で代表的にやるようでは、今の事態に対処できない。ですから、細かく測定して住民と一緒に考えるということが必須なんではないかという事を痛感いたしました。この線量ならいいのではないか、この線量なら避難じゃないか、いろんな方がいろんな事を言っていますがこれは現地の実情にあっていません。
 福島原発の事故が起こってからの議論でこのような子どもと妊婦の議論が全く行われていません。日本の国土というのは、すべからく、子どもと妊婦を最優先しなくてはならないという責務を科学者も政治家も経済人もマスコミの方もすべからく負っていると思います。今は、様々な意見の違いを超えて、日本国民が総力を挙げて、この子どもと妊婦が安心できる日本の国土を作り上げるために、力を挙げる時だと思っています。国会でお願いしたことも、そのことの一点に尽きます。それで、実際の除染に入ってみまして、二つのことにすぐ気付きました。滑り台の下とか子どもが触る部分の除染はすぐにできるが、なかなか0.5μシーベルト以下にならない。妊婦や子どもに安全な量になかなかならない。これはγ線が100メートル位の距離でまわりからきますので、こうした子どもが口に入れてしまうような緊急な除染活動だけでは、本当に妊婦と子どもが住める日本の国土に復旧するということは、不可能なのではないかということに思い至りました。そのために、緊急の除染だけでなくて、恒久的な除染が非常に大事だと思っています。一つだけ緊急の除染に関して申し上げますと、緊急な除染をお母さんや先生がやる時に、必ず内部被曝に注意して下さい。マスク、手袋、長靴、それから、作業中の飲食禁止。一番大事なのは、高い線量のところは、まず線量計で測って専門家が取り除いてから、お母さんや先生が除染に当たるということを必ず守って欲しい。
 長期の土壌汚染に関しては様々な問題があります。そして、住民が農耕し、生活し、働き、住み、家族と一緒に過ごしている土地ですから、ここの判断というのは基本的に住民の方が判断する必要があります。その時に考えることは、私の家はどうなっているか、学校はどうなっているかという正確な汚染マップです。これは空からの汚染マップが必要だと感じています。家の周りを知りたいとメールもいただいています。空からのマップ作りは無人ヘリコプターで採れば細かいものが取れる。汚染されているすべての自治体にすぐやる課を作ってもらって、依頼があったら測りに行って欲しい。どの程度までならどの程度の除染が出来るか調べていただきたい。平均値でここを汚染地域にするとか強制収容と言われている。これは絶対にやってはいけないことです。自治体ごとのきめ細やかな対策を作る。そのために信頼される委員会を作っていく。残念ながら今までの不祥事がある方にはこの委員会には入って欲しくない。私ここで一言訂正をさせていただきます。国会で違法行為をしているということを申しましたら、専門家の方から「違法行為を奨励する発言を東大教授としては行わないように」と言われました。
 日本の中にどういう技術があるかという一例を申し上げますと島津製作所の北村さんというこの世界の第一人者、このような機械。要するに流れ作業で50ベクレル/kgの測定するような機械は、大体3カ月あれば作れるということを聞いております。そうすると、もし6月にスタートすれば収穫期の9月までにできるかと思っていたのですが、実際には今、もう8月です。それで、総理大臣には島津社長の所に行って、1か月でやってくれと頼んでいただきたい。いろんな会社のいろんな意見があるでしょうが、現実にはそれだけ急を要しているということです。今、マスコミなども何かの汚染物が出るたびに大騒ぎしてそれを追っかけていますが、現在様々なところで子どもの尿などからセシウムが出ているということが報道されています。ということは、かなりの食品の中にセシウムが入り込んでいます。ですから、食品のチェックというのは待ったなしの問題になっていると思います。実際には問題になりますセシウムの処理につきましては、現在粘土鉱物との強固の結合が70%になっています。封じこみ構造での埋め込みが中心になっています。低レベルの放射性廃棄物を封じ込めるという考え方です。日本の土木会社のノウハウを一刻も早く引き出して、この知見を活かしていってほしい。力を合わせれば必ず日本の国土を取り戻せると思っています

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