goo blog サービス終了のお知らせ 

天地を 照らす日月の 極みなく あるべきものを 何をか思はむ 

わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても あはむとぞ思う

バイノス

2011年10月19日 | 科学
 100分の1ミリの緑色の藻類がセシウムやストロンチウムなど放射性物質を効率よく取り除くことを、山梨大と東邦大が確認した。大量に増やすこともでき、来月に福島県伊達市の住宅地で土壌を洗ったり、建物の壁、道路に塗ったりして、除染に使えないか実験をする。
 この藻類は、ベンチャー企業の日本バイオマス研究所(千葉県柏市)の湯川恭啓社長が5年前にめっき工場の廃液処理施設で見つけた。単細胞で葉緑素を多く含む新種で、バイノスと名づけられた。
 バイノスは生命活動が活発で色々な物質を取り込むことから北里研究所の伊藤勝彦博士が除染に利用できないかと提案し、山梨大医学部の志村浩己助教らが福島県内で取った汚染水で実験した。すると、10分間で放射性ストロンチウムを8割、セシウムを4割取り除くことができた。バイノスが細胞のまわりに出す分泌物が放射性物質を吸いつけて離さないとみられる。
 湯川社長によると、バイノスは細胞分裂の速度が速く、培養すれば容易に増やせる。乾燥すると重さが10分の1ほどになるため、除染後の廃棄物の量を減らすことも期待できる。
 今後、他の企業と協力して放射性物質の汚染水処理や、農地や住宅地の除染に活用したいという。住民が簡単に使えるよう、壁や道路に、塗料のように塗りつけて乾いたらはがして、除染できないか調べる。~10.19朝日(編集委員・浅井文和)

ペプチド生成過程

2011年09月30日 | 科学
 国立大学法人東北大学大学院理学研究科の大竹 翼助教・掛川 武教授らは独立行政法人 物質・材料研究機構の谷口 尚グループリーダー・中沢 弘基名誉フェローらと共同で、高温高圧条件でのアミノ酸の重合実験をおこない、タンパク質の元となるペプチドが単純なアミノ酸(グリシン、アラニン)から作り出されることを明らかにしました。
 これまで、生命の起源を探る有機物合成実験によってアミノ酸など単純な有機物の生成機構は少しずつ解明されてきましたが、それらが原始地球の環境の中でさらに進化する過程はほとんど未解明でした。今回の実験では、より複雑な高分子の生成に成功し、より高圧で、より高濃度のアンモニアが存在することがアミノ酸やペプチドの安定性に重要であることを明らかにしました。
 これは、タンパク質の元となる物質の生成が原始地球の海底地下で起きていたことを示唆しています。つまり初期地球に海が出現した後、海底地下に単純な有機物が濃集し、海底堆積物が圧密・脱水される過程でより複雑な有機物へと“進化”したとする説を支持しています。
 本研究成果は、米国学術誌Astrobiologyのオンライン版で近日中に公開される予定です。~27日東北大学

 タンパク質の元と成る物質の精製が原始地球の海底地下で起きていたことを示唆する結果。生命の起源を探る有機合成実験では、アミノ酸の生成メカニズムは解明されつつあるが、アミノ酸からタンパク質になる過程は明らかになっていない。

 生命は複雑に高分子化された有機物で構成されており、その複雑な高分子は単純な有機物が重合することによってできあがってきたという、「化学進化」という概念が一般的となっている。ただし、これまでの初期地球環境や宇宙環境を模擬した有機物合成実験においては、今のところアミノ酸などの単純な有機物のみが生成されている状況だ。そのため、化学進化の場が初期地球のどこだったのかはまだ判明していない。また、生命活動には水が必要不可欠であることから、一般には、有機化合物は海水中で高分子に進化したと考えられている。アミノ酸の重合反応は吸熱反応であることから、高温条件下で反応が促進されるため、海底熱水系が化学進化および生命誕生の場として適当な環境であると、これまでのところ注目されてきた。しかし、高温の海水条件下ではアミノ酸の分解も速やかに起きてしまう。200℃以上だと数時間の内に分解してしまうため、海底熱水系で生命が誕生したとは考えにくいという見方もある。

 一方、NIMSの中沢弘基名誉フェローは、生命起源の地球史的考察から、海洋堆積物に吸着したアミノ酸などの有機化合物がその後の続成・変成環境の加圧・加熱によって脱水重合し、生命誕生に必要なより複雑な有機物へと進化したであろうとする「海底地下での分子進化説」を提案。
 今回の研究の成果は、単純な有機分子の安定性と重合反応において、圧力が重要な要因となることを示し、有機物の化学進化が海底地下で起こったことを示唆するという。また、高圧下におけるアミノ酸の安定背には周囲のアンモニア濃度が重要であることが示唆されたわけだが、初期地球においては、隕石衝突や海底熱水からの高いアンモニアのフラックスによって海水および海底堆積物中でも高濃度のアンモニアが期待される。高アンモニア濃度の海洋や海洋堆積物中にアミノ酸が安定に存在し、海洋堆積物が積層して圧密脱水する過程で、単純な有機分子が脱水重合して生命の誕生に必要な高分子さらには巨大分子になったと推定されているとした。

 今後は、こうした巨大分子が、どこでどのように遺伝や代謝機能を獲得したかといった、生命の発生の最終段階の謎に迫るとする。

小惑星で化学反応

2011年08月13日 | 科学
 【ワシントン=共同】南極などで見つかった隕石から、生物のDNA(デオキシリボ核酸)を構成する分子を発見したと、米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙センターなどの研究チームが、11日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。
 地球上の生命は、宇宙から飛来した物質が元になって誕生したとする説を後押しする結果だ。
 DNAは生命の設計図ともいわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類の分子が並んでいる。チームは12個の隕石を分析。アデニンやグアニンのほか、これらと構造のよく似た炭素や窒素から構成される分子を複数発見した。
 隕石からDNAを構成する分子が見つかったことは過去にもあったが、宇宙で形成されたものかははっきりしなかった。今回発見された分子は、南極の土壌や氷には含まれていないものもあり、割合も高いことから、隕石が地球に落ちた後に地球上の生物などから混入したとは考えにくいという。
 研究グループは、今回見つかった分子は、小惑星で化学反応によってできた可能性があると指摘している。〔共同〕

p53

2011年08月01日 | 科学
 がんを抑える遺伝子を増やす仕組みを、九州大生体防御医学研究所の鈴木聡教授らのグループが突き止めた。この遺伝子を邪魔する特定の分子がわかった。この分子が少ないがん患者は5年生存率が高かった。これを応用すれば、新たな抗がん剤開発などが期待できるという。
 31日付の米科学誌ネイチャーメディシン電子版に掲載された。この分子は「PICT1」。がん細胞の中でPICT1の発現が抑えられていると、がんを抑える遺伝子として知られる「p53」がよく増える仕組みがわかったという。
 大阪大の森正樹教授らのグループと共同で患者から摘出したがん組織のPICT1の発現量と、5年後の生存率を調べた。食道がん患者で発現量が高かったグループは生存率が25%。一方で低かったグループは42%だった。大腸がん患者ではそれぞれ62%、81%となり、PICT1の発現量が低いと生存率が高かった。~朝日新聞より

鉱脈と命脈の源

2011年07月18日 | 科学
 深海の海底には、水温400°Cにも達する熱水が噴き出している噴出孔があります。深海の高い水圧により、この高温でも水は液体のままで沸騰しません。その水は豊かな無機物を含み、太陽の光は届きませんが、無機物から有機物を合成する生物活動が活発です。鉱脈と命脈の源といえます。

 超高温の熱水に溶解している鉱物が0°Cに近い海水と接触すると、接触面で化学反応が進み生成物が析出・沈殿してチムニー(煙突)ができます。銅・鉄・亜鉛などの硫化物がチムニーをつくり、黒い雲状の物質を噴出するものをブラックスモーカーと呼び、バリウム・カルシウム・ケイ素などから成るものをホワイトスモーカーと呼ぶ。沖縄トラフではブルースモーカーが発見されています。
 チムニー周辺には、本来、生物に有害であるはずの硫化水素やメタンなどを材料に有機物を合成する熱水生物群集や、鎧のような硫化鉄の皮膚を持つ生物などが発見されています。また、熱水噴出孔近傍の海底下に生息している好熱性の微生物も熱水に巻き込まれて大量に噴出してます。多くはバクテリアですが、温度の上昇に伴い古細菌の割合が増加します。

 バクテリアは各種硫化物から有機物を合成します。バクテリアの大部分に金属耐性があり、嫌気性金属呼吸(テルル酸呼吸)をして、嫌気的に金属を還元します。バクテリアは増殖して厚いマット状に広がり、これを餌にする端脚類やカイアシ類などが集まってきます。そして巻貝・エビ・カニ・チューブワーム・魚類・タコなどより大きな生物とともに食物連鎖を形成します。
 チューブワームには口も消化管もなく、バクテリアを体内に寄生させます。チューブワームは先端の赤い冠毛状の部分で硫化水素・酸素・二酸化炭素などを取り込み、特殊なヘモグロビンと結合させて、寄生するバクテリアに供給します。その代償にこのバクテリア(イオウ酸化微生物)は有機化合物を合成してワームに供給します。
 アメリカ領サモアのNafanua海底火山近くでは、ウナギばかりが固まって生息する通称Eel Cityが発見されています。