ラウル。わたしはね、まえに一度だけ地下におりてみた事があるの。
ほんとうに壮観だったけれど、地下三階までおりたら、それ以上さきに進むのがこわくなってやめてしまったわ。
でも、私の足元に、さらに二階、町がひとつすっぽりはいるくらいの空間が広がっていた。
だけど恐ろしい形をしたものがあらわれたので、わたしは逃げ出したの。
あそこには真っ黒な悪魔がいて、釜のまえに陣取って、シャベルや熊手で炭火をかきたて、炎を燃え上がらせ、近づこうとする人がいると、きゅうに竈の赤い口をあけて脅したりするのよ!
ま、妖精も見た事がある、と明言しているクリスティーヌちゃんですから。原作に幻想的な雰囲気を出すための描写なのかも、と考えてました。
絵的にはすごく好きな描写です。
竈・・・かまど・・・ならシャルル・ガルニエの造った炉が少なくとも1989年あたりまでは稼動していたようです。
一階の板金作業場にあり、オペラ座で使われる物を造っているようです。
ミシェル・サラザン 「パリ・オペラ座」 音楽の友社
じゃ地下のはエリックの何かに使うかまどだったのでしょうか?でもそれではオペラ座のスタッフに気づかれてしまいますしね、ありえないでしょう。
やはりクリスの幻覚なのでしょうか・・・。
そういえば「溶鉱炉のような」という表現も原作で時々使われます。
製鉄が盛んになった時期に近いというのもあるのかもしれません。
フランス製鉄業は1850年代以降鉄道建設と結びついて,本格的な発展を開始しました。
(ベッセマー転炉法がいち早く導入されました)
でも、ラウルとダロガの時の拷問部屋は電気でした。
しかしペルシャで電気というのはありえないような気もします。やっぱりかまどとかそういう火力など使った方法で加熱していたのでしょうか?