あきならで おくしらつゆは ねざめする わがたまくらの しづくなりけり
秋ならで おく白露は 寝覚めする わが手枕の しづくなりけり
よみ人知らず
秋でもないのに置いている白露は、夜に目が覚めてしまう私の枕の雫なのです。
白露は涙を見立てたもの。「手枕」と言えば、共寝の相手の手を想像しますが、それが独り寝の自分の手であることも、恋の苦しみを感じさせますね。
あきならで おくしらつゆは ねざめする わがたまくらの しづくなりけり
秋ならで おく白露は 寝覚めする わが手枕の しづくなりけり
よみ人知らず
秋でもないのに置いている白露は、夜に目が覚めてしまう私の枕の雫なのです。
白露は涙を見立てたもの。「手枕」と言えば、共寝の相手の手を想像しますが、それが独り寝の自分の手であることも、恋の苦しみを感じさせますね。
うきめのみ おひてながるる うらなれば かりにのみこそ あまはよるらめ
うきめのみ 生ひて流るる 浦なれば かりにのみこそ あまは寄るらめ
よみ人知らず
浮き海布ばかりが育って流れている浦に狩りに来る漁師のように、憂き目ばかり見ているわたしのところにあなたは仮そめにしか来てくれないのでしょう。
「うきめ」が「浮き海布」と「憂き目」、「かり」が「狩り」と「仮」の掛詞になっていて、さらに「浦」を自身に、「あま」を思いを寄せる相手に準えての詠歌で、歌全体に巧みに二重の意味を持たせています。
はながたみ めならぶひとの あまたあれば わすられぬらむ かずならぬみは
花がたみ めならぶ人の あまたあれば 忘られぬらむ 数ならぬ身は
よみ人知らず
見比べる相手がたくさんいるので、忘れられてしまったのでしょう。ものの数にも入らないわたしのような者は。
「花がたみ」は摘み取った花を入れるかごのことで、細かい網目が並んでいることから、「めならぶ(=「見比べる」の意)」に掛かる枕詞として使われます。