かはのせに なびくたまもの みがくれて ひとにしられぬ こひもするかな
川の瀬に なびく玉藻の みがくれて 人に知られぬ 恋もするかな
紀友則
川の早瀬になびいている玉藻が水に隠れて見えないように、私も思いを知ってもらえないつらい恋をしていることよ。
「みがくれ」は「みがくる(ここでは『水隠る』)」で、水の中に隠れる意。同音で「見隠る」という言葉もあり、こちらは見えたり隠れたりする意です。0561 から五首続いた友則の恋歌、いずれも同じ歌合せ(『寛平御時后宮歌合』)の席での題詠ですので基本的には空想で詠んだものと思われますが、あるいは叶わぬ恋に苦しんだ実経験もあってのことでしょうか。