4回目です。
受検者の方とのお話しやブログ・メールでのやり取りの中で、「過去問そのままの問題は良いのだが、形を変えられたりすると、正解を導くための連想ができない。」「自分以外の受検者が、問題に対して辿った思考の迹を読むのが非常に参考になる。」といったことをお聞きすることがあります。そこで今回は、先日の 26-3 の問題を例に、正解に到達するための本試験中の思考パターンについて書いてみたいと思います。
26-3 の分析結果として「過去問と1級四字熟語の知識で正解できる問題(分類A~C)」で121点取れるということを書きましたが、「そのものズバリ」でない問題について、これらの知識に基づく連想や類推で解けるかどうかはかなり保守的に見ていますので、「分類E」とした問題(79点分)の中にも、これらの知識で正解しうる、あるいは正解を二者択一くらいまで絞れる問題というのも相応に含まれています。そんな問題や、過去問そのものでも忘れてしまった問題などについて正解に近づくための参考になれば良いのですが。
1.わからない音読みは音符で読む
これは改めて書くほどのことではなく、皆さん自然に実践されていることだと思いますが、漢字にはその成り立ちとして、意味を表す部分(「意符」または「義符」といいます。)と、音を表す部分(「声符」または「音符」といいます。多くは、部首でない部分です。)からできているもの(「形成文字」といいます)が数多くあります。漢字の成り立ちとしてはこの「形成文字」が圧倒的に多いのですから、わからない音読みを問われたら、その漢字の一部分に注目して読みを推定することが有力です。
【坡陀】
26-3 (一)3. の問題ですが、これは「分類A」の中にはありません。私に到っては恥ずかしながら 【坡】 という漢字を見た記憶もなく、当然読み方も知りませんでした。ですのでここは「音を表すであろう部分」に着目です。 【土】 は部首でしょうから、音を表すのはおそらくは 【皮】 。ですのでこの漢字の音読みは「ハ」か「ヒ」であろうとの推測が成り立ちます(実際にこの漢字の音は「ハ」または「ヒ」でした)。ここから先は感覚になってしまいますが、私は「ハ」の方を採用して「はだ」と解答、無事、正解でした。
その他にも今回の音読み問題の中では、
【娶嫁(しゅか)】 【娶】 の 【取】、【嫁】 の 【家】 が音符
【和煦(わく)】 【煦】 の 【句】 が音符
【
車(じしゃ)】 【
】 の 【而】 が音符
【駐紮(ちゅうさつ)】 【紮】 の 【札】 が音符
など、仮に音読みを知らなくても正解できるものが少なくありません。もちろん、音符の読み方自体が複数あったり、時の経過とともに読みが変化している漢字もあったりということはありますが、少なくとも、単なるあてずっぽうで書くよりは、はるかに高い確率で正解に辿りつけるでしょう。
2.同じ音符の漢字は同じ音ではないかと推定する
本質的に上の「1.」と同じことですが、同じ音符を持つ漢字は音読みも同じである可能性が高い、ということになります。ほんの一例ですが、今回の問題では、
【皴裂(しゅんれつ)】 の 【皴】 が 【俊】 【逡】 などから
【緘黙(かんもく)】 の 【緘】 が 【感】 【鹹】 などから
読みを推定することが可能でしょう。
3.同じ漢字を使っている熟語・四字熟語を想起する
このところ音読み問題は難化が著しく、「過去問そのまま」の出題が減少しているばかりでなく、そもそも熟語としては「辞典」にも載っていないものが数多く出題されています。従って本試験では、「漢字は見たことはあるが、熟語としては初見」という問題にたくさん出くわすことになります。しかしそこでうろたえてはいけません。その「見たことはある漢字」が使われていて、過去問の勉強などを通じて自分が知っている熟語を想起できるかが極めて重要です。本試験の振り返りの記事ですでに書いたことが多いですが、いくつか例を拾ってみます。
【梳盥】 そかん
【梳(そ)】 はもともと知っていましたが、26-1 で出題された 【書疏】 の 【疏】 からの推定も可能でしょう。 【盥(かん)】 の方は一瞬詰まったのですが、 【盥漱(かんそう)】 (頻出問題で、最近では 21-2 で出題。「分野別」の12ページにも載っています。)が想起できて、無事に正解。 【梳盥】 という熟語自体は初見でしたが、過去問の知識で正解に辿りつけた例です。
【斃仆】 へいふ
「分野別」25ページの 【薨死(へいし)】 と、1級四字熟語 【桃傷李仆(とうしょうりふ)】 から正解に到りました。
【銜恤】 がんじゅつ/かんじゅつ
こちらは「分野別」54ページの 【賑恤(しんじゅつ)】 と、1級四字熟語 【鳳凰銜書(ほうおうがんしょ)】 【銜尾相随(かんびそうずい)】 などから。「銜」を含む1級四字熟語は5つありますが、どれか一つ思い出せれば正解できる問題でした。
この「想起する」ということが、学習開始当初にはなかなかできないかもしれませんが、繰り返し(=飽きるほど!)学習することによって徐々にできてくると思います。一定の基礎力がついた段階から、ネット上の模擬試験問題などで「想起」の訓練をすると良いかもしれませんね。
(
は島根県立大学e漢字フォント
の漢字フォントを使用しました。)
受検者の方とのお話しやブログ・メールでのやり取りの中で、「過去問そのままの問題は良いのだが、形を変えられたりすると、正解を導くための連想ができない。」「自分以外の受検者が、問題に対して辿った思考の迹を読むのが非常に参考になる。」といったことをお聞きすることがあります。そこで今回は、先日の 26-3 の問題を例に、正解に到達するための本試験中の思考パターンについて書いてみたいと思います。
26-3 の分析結果として「過去問と1級四字熟語の知識で正解できる問題(分類A~C)」で121点取れるということを書きましたが、「そのものズバリ」でない問題について、これらの知識に基づく連想や類推で解けるかどうかはかなり保守的に見ていますので、「分類E」とした問題(79点分)の中にも、これらの知識で正解しうる、あるいは正解を二者択一くらいまで絞れる問題というのも相応に含まれています。そんな問題や、過去問そのものでも忘れてしまった問題などについて正解に近づくための参考になれば良いのですが。
1.わからない音読みは音符で読む
これは改めて書くほどのことではなく、皆さん自然に実践されていることだと思いますが、漢字にはその成り立ちとして、意味を表す部分(「意符」または「義符」といいます。)と、音を表す部分(「声符」または「音符」といいます。多くは、部首でない部分です。)からできているもの(「形成文字」といいます)が数多くあります。漢字の成り立ちとしてはこの「形成文字」が圧倒的に多いのですから、わからない音読みを問われたら、その漢字の一部分に注目して読みを推定することが有力です。
【坡陀】
26-3 (一)3. の問題ですが、これは「分類A」の中にはありません。私に到っては恥ずかしながら 【坡】 という漢字を見た記憶もなく、当然読み方も知りませんでした。ですのでここは「音を表すであろう部分」に着目です。 【土】 は部首でしょうから、音を表すのはおそらくは 【皮】 。ですのでこの漢字の音読みは「ハ」か「ヒ」であろうとの推測が成り立ちます(実際にこの漢字の音は「ハ」または「ヒ」でした)。ここから先は感覚になってしまいますが、私は「ハ」の方を採用して「はだ」と解答、無事、正解でした。
その他にも今回の音読み問題の中では、
【娶嫁(しゅか)】 【娶】 の 【取】、【嫁】 の 【家】 が音符
【和煦(わく)】 【煦】 の 【句】 が音符
【


【駐紮(ちゅうさつ)】 【紮】 の 【札】 が音符
など、仮に音読みを知らなくても正解できるものが少なくありません。もちろん、音符の読み方自体が複数あったり、時の経過とともに読みが変化している漢字もあったりということはありますが、少なくとも、単なるあてずっぽうで書くよりは、はるかに高い確率で正解に辿りつけるでしょう。
2.同じ音符の漢字は同じ音ではないかと推定する
本質的に上の「1.」と同じことですが、同じ音符を持つ漢字は音読みも同じである可能性が高い、ということになります。ほんの一例ですが、今回の問題では、
【皴裂(しゅんれつ)】 の 【皴】 が 【俊】 【逡】 などから
【緘黙(かんもく)】 の 【緘】 が 【感】 【鹹】 などから
読みを推定することが可能でしょう。
3.同じ漢字を使っている熟語・四字熟語を想起する
このところ音読み問題は難化が著しく、「過去問そのまま」の出題が減少しているばかりでなく、そもそも熟語としては「辞典」にも載っていないものが数多く出題されています。従って本試験では、「漢字は見たことはあるが、熟語としては初見」という問題にたくさん出くわすことになります。しかしそこでうろたえてはいけません。その「見たことはある漢字」が使われていて、過去問の勉強などを通じて自分が知っている熟語を想起できるかが極めて重要です。本試験の振り返りの記事ですでに書いたことが多いですが、いくつか例を拾ってみます。
【梳盥】 そかん
【梳(そ)】 はもともと知っていましたが、26-1 で出題された 【書疏】 の 【疏】 からの推定も可能でしょう。 【盥(かん)】 の方は一瞬詰まったのですが、 【盥漱(かんそう)】 (頻出問題で、最近では 21-2 で出題。「分野別」の12ページにも載っています。)が想起できて、無事に正解。 【梳盥】 という熟語自体は初見でしたが、過去問の知識で正解に辿りつけた例です。
【斃仆】 へいふ
「分野別」25ページの 【薨死(へいし)】 と、1級四字熟語 【桃傷李仆(とうしょうりふ)】 から正解に到りました。
【銜恤】 がんじゅつ/かんじゅつ
こちらは「分野別」54ページの 【賑恤(しんじゅつ)】 と、1級四字熟語 【鳳凰銜書(ほうおうがんしょ)】 【銜尾相随(かんびそうずい)】 などから。「銜」を含む1級四字熟語は5つありますが、どれか一つ思い出せれば正解できる問題でした。
この「想起する」ということが、学習開始当初にはなかなかできないかもしれませんが、繰り返し(=飽きるほど!)学習することによって徐々にできてくると思います。一定の基礎力がついた段階から、ネット上の模擬試験問題などで「想起」の訓練をすると良いかもしれませんね。
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