あかつきの なからましかば しらつゆの おきてわびしき わかれせましや
暁の なからましかば 白露の おきてわびしき 別れせましや
暁という時間帯がなかったなら、白露の置く朝に起きて、これほど寂しい別れをすることもないであろうに。
第四句「おきて」が「置きて」と「起きて」の掛詞になっています。
この歌は後撰和歌集(巻第十二「恋四」 第862番)、拾遺和歌集(巻第十二「恋二」 第715番)に入集しています。紀貫之は三代集といわれる最初の3つの勅撰和歌集(古今集、後撰集、拾遺集)でいずれももっとも多くの歌が入集した歌人となっています。このことからも、貫之が当代随一の歌人であったことがわかりますね。