漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 093

2023-07-18 05:04:15 | 貫之集

あだなりと おもふものから さくらばな みゆるところは やすくやはゆく

あだなりと 思ふものから 桜花 見ゆるところは やすくやはゆく

 

桜の花はどうせすぐに散ってしまうと思うものの、だからこそその美しさに惹かれて、見えるところをあっさり通り過ぎることはできないのであるよ。

 

 「あだなり」は「徒なり」で、ここではうつろいやすくはかない意。
 花はすぐに散ってしまうけれども、それゆえに人は心を惹かれるという歌意は、古今集0101 にも通じますね。

 

さくはなは ちくさながらに あだなれど たれかははるを うらみはてたる

咲く花は ちくさながらに あだなれど 誰かは春を うらみはてたる


藤原興風