あだなりと おもふものから さくらばな みゆるところは やすくやはゆく
あだなりと 思ふものから 桜花 見ゆるところは やすくやはゆく
桜の花はどうせすぐに散ってしまうと思うものの、だからこそその美しさに惹かれて、見えるところをあっさり通り過ぎることはできないのであるよ。
「あだなり」は「徒なり」で、ここではうつろいやすくはかない意。
花はすぐに散ってしまうけれども、それゆえに人は心を惹かれるという歌意は、古今集0101 にも通じますね。
さくはなは ちくさながらに あだなれど たれかははるを うらみはてたる
咲く花は ちくさながらに あだなれど 誰かは春を うらみはてたる
藤原興風