わたつみの わがみこすなみ たちかへり あまのすみてふ うらみつるかな
わたつみの わが身越す波 立ち返り 海人の住みてふ うらみつるかな
よみ人知らず
私の身を超える大波が寄せては返す、漁師が住むという海辺を見るように、繰り返しこぼれる涙に身を濡らしながら、あなたのことを恨んでいるのです。
あふれる涙を身を越える大波に喩え、第五句で「浦見つる」を「恨みつる」に掛けて歌全体に巧みに二重の意味を詠み込んでいます。わずか三十一文字でどうしてこんなにうまく表現できるのかと、いつも思いますね。