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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 722

2025-04-07 04:16:32 | 貫之集

かづら

うちみえむ おもかげごとに たまかづら ながきかたみに おもへとぞおもふ

うち見えむ 面影ごとに 玉かづら 長き形見に 思へとぞ思ふ

 

かづら

私の面影を思い出していただくたびに、私のこの玉鬘をいつまでも私の形見として思ってほしいと私は思っています。

 

 721 の詞書からの歌の二首目。「かづら」は髪飾りないし添え髪(今で言う「ウィッグ」でしょう)のこと。「玉」は接頭語ですね。この歌では髪飾りの意の普通名詞「玉鬘」でもあり、同音で「長し」かかる枕詞「玉葛/玉蔓」でもあるのでしょう。


貫之集 721

2025-04-06 04:13:42 | 貫之集

橘公頼の帥の筑紫へ下るとき、その日阿波守敏貞朝臣、継母の典侍におくるものどもに加へたる歌

くすり

しばしわが とまるばかりに ちよまでの きみがおくりは くすりこそせめ

しばしわが とまるばかりに 千代までの 君がおくりは くすりこそせめ

 

橘公頼(たちばな の きんより)の帥が筑紫へ下るとき、その当日に公頼の子の阿波守敏貞朝臣が継母である典侍に贈った品にそえて詠んだ歌

くすり

もうしばらくここに留まる私に代わって、この薬こそがいつまでもあなたさまを見届けてくれることでしょう。

 

 「帥」は太宰権帥(だざいのごんのそち。大宰府の長官とは別に仮に任ぜられる官位。)の意。
 同じ詞書での歌が「くすり」の721(本歌)、「かづら」の 722、「装束」の 723 と三首続きます。

 


貫之集 720

2025-04-05 04:21:17 | 貫之集

ものへ行く人待つほどすぐれば

おもふひと またさもあらず あふさかの せきのなこそは なのみなりけれ

思ふ人 またさもあらず 逢坂の 関の名こそは 名のみなりけれ

 

旅立つ人の送別の宴に、送られる人がなかなか現れずに待ちあぐねて詠んだ歌

心を通わす人もそうでない人も逢うという逢坂の関だが、それは名ばかりで、別れを惜しもうとしているのに逢えずにいることよ。

 

 歌枕中の歌枕と言って良い「逢坂の関」、何千回何万回と歌に詠まれてきたのでしょうね。でも手元でわかる貫之の歌(約1300首)に限ると「あふさか」を含む歌は六首。意外に少ないですね。


貫之集 719

2025-04-04 05:16:52 | 貫之集

師尹の侍従のよませたまふに

とほくゆく きみをおもふに ひともみな ほととぎすさへ なきぬべらなり

遠く行く 君を思ふに 人もみな 時鳥さへ なきぬべらなり

 

師尹の侍従の仰せで詠んだ歌

遠くに旅立って行くあなたのことを思って人はみな泣いている上に、時鳥までもが同じ思いで鳴いていることです。

 

 「師尹の侍従」は藤原忠平の五男、藤原師尹(ふじわら の もろまさ)のこと。名前は書かれていませんでしたが、「左大臣殿の五郎」として、実は 334 にも登場していました。第五句「なき」が「泣き」と「鳴き」の掛詞になっていますね。


貫之集 718

2025-04-03 04:13:12 | 貫之集

おなじ少将、ものへ行く人に火打ちの具して、これに薫物を加へてやるに、よめる

をりをりに うちてたくひの けぶりあらば こころざすかを しのべとぞおもふ

をりをりに 打ちてたく火の 煙あらば 心ざす香を しのべとぞ思ふ

 

おなじ師氏の少将が、旅立つ人に火打ちをして香を焚くのにそえて詠んだ歌

おりおりに火打ちを打って焚くお香のかおりがしたならば、その香にこめた私の思いを偲んでください。

 

 「薫物(たきもの)」とは、さまざまなお香を合わせて作った練り香のこと。旅立つ人へのはなむけにお香を焚く習慣があったのでしょうか。
 この歌は、後撰和歌集(巻第十九「離別羇旅」 第1304番)に入集しています。