goo blog サービス終了のお知らせ 

漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 1056

2022-09-20 06:53:51 | 古今和歌集

なげきこる やまとしたかく なりぬれば つらづゑのみぞ まづつかれける

なげきこる 山とし高く なりぬれば つらづゑのみぞ まづつかれける

 

大輔

 

 嘆きという木を伐採して山のように高くなったので、頬づえばかりつくありさまとなっています。

 非常にわかりづらいですが、山登りの際に杖を突くように、山のように増えた嘆きに悩んで頬杖を突いている、ということですね。「こる」は「樵る」で木を伐採すること、「つらづゑ」は「面杖」で頬杖のことです。
 作者の大輔(たいふ)は但馬守源弼(みなもと の たすく)の娘で、古今集への入集はこの一首のみ。0463 の作者源忠(みなもと の ほどこす)も源弼の息子ですから、大輔と忠は兄妹ないし姉弟の関係ということになりますね。忠の方は、名を「恵」と表記することもあるのですが、そうすると「大輔」が女性で「恵」が男性と、現代人の感覚からすると真逆な感じがしますね。^^;;

 


古今和歌集 1055

2022-09-19 05:09:35 | 古今和歌集

ねぎごとを さのみききけむ やしろこそ はてはなげきの もりとなるらめ

ねぎごとを さのみ聞きけむ 社こそ はてはなげきの 森となるらめ

 

さぬき

 

 お参りに来た人の願い事をそれほどたくさん聞いてきたお社こそ、しまいには人々の「嘆き」の木で森になっていることでしょう。

 「ねぎごと」は祈りの言葉、願い事の意。「なげき」には「嘆き」と「木」が掛かっています。霊験あらたかな神社の話を聞いての詠歌でしょうか。
 作者のさぬきは、讃岐守であった安倍清行の娘。古今集への入集はこの一首のみです。


古今和歌集 1054

2022-09-18 05:54:48 | 古今和歌集

よそながら わがみにいとの よるといへば ただいつはりに すぐばかりなり

よそながら わが身にいとの よるといへば ただいつはりに すぐばかりなり

 

くそ

 

 実際は関係ないのに、わが身に糸を縒るように従兄弟が寄りついていると人が噂をする。糸は針の穴を通すけれど、そんな噂は偽りとしてやり過ごすだけです。

 詞書には「いとこなりける男のよそへにて、人のいひければ」とあります。「よそへ」は関係がある意で、ここでは作者とそのいとこの男とが恋仲にあるということ。歌の中では、「いと」が「糸」と「いとこ」、「よる」が「縒る」と「寄る」、「いつはり」が「針」と「偽り」、「すぐ」が「挿(す)ぐ」と「過ぐ」の掛詞になっていて、巧みに二重の意味を詠み込んでいます。

 作者のくそは、平安時代前期の女流歌人源久曾(みなもと の くそ)のこと。詳しい系譜は不明で、古今集への入集はこの一首のみです。


古今和歌集 1053

2022-09-17 06:23:59 | 古今和歌集

なにかその なのたつことの をしからむ しりてまどふは われひとりかは

何かその 名の立つことの 惜しからむ 知りてまどふは われ一人かは

 

藤原興風

 

 いったいどうしてそんな浮き名が立つことが惜しいのか。噂になったことを知って戸惑うのは、自分一人ではあるまいに。

 表面的な歌意はともかく、真意のほどはわかりづらい歌です。噂が立って傷つくのは自分一人ではなく相手も同じということですが、だから恐れる必要はない、というくらいの意味でしょうか。


古今和歌集 1052

2022-09-16 05:52:33 | 古今和歌集

まめなれど なんぞはよけく かるかやの みだれてあれど あしけくもなし

まめなれど 何ぞはよけく 刈萱の 乱れてあれど あしけくもなし

 

よみ人知らず

 

 まじめであっても何の良いことがあろうか。乱れた振る舞いをしても、何も悪いこともないではないか。

 第二句の「よけく」は「良し」のク語法。「刈萱の」は「乱る」にかかる枕言葉ですね。真面目な作者が、乱れた行いをしても咎めだてされない人々を見て、少々やっかんだ(?)歌でしょうか。