エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

自動車ベンチャーの担い手はシリコンバレーの起業家

2011-11-10 07:13:32 | Weblog
シリコンバレーの起業家像は、昔のヒューレット、パッカード、ウィリアム・ショックレー、「8人の裏切り者」と呼ばれた起業家やロバート・ノイス、ゴードン・ムーアのような技術者から、1970代後半以降のスティーブ・ウォズニアック、ノーラン・ブッシュネル、ゲーリー・キルドールなどの技術者兼経営者、そして90年代以降のラリー・エリソン、スコット・マクナリー、ジム・クラークなどの経営者、2000年以降のステイーブ・ジョブス、ジョン・チェンバース、エリック・シュミットなどの経営者へと変遷しています。
そして、その変遷から自動車ベンチャーの担い手が登場してきています。テスラ・モーターズの創立者エロン・マスクは、インターネット決済のPayPalの創業者であり、自動車産業で長い経験を積んだ上でテスラを創業したわけではありません。また、テスラ・モーターズには、グーグルの創業者のラリー・ページ、セルゲイ・ブリンなどインターネットの申し子で、これまでの自動車産業とは全く関係ない人たちがこの企業の投資家として名を連ねています。
クーロン・テクノロジーの創立者リチャード・ローエンソールは、もともと、グラフィカルワークステーションのベンチャー企業、スターデントやテレコム関連のベンチャー企業、ストラータコムなど、シリコンバレーで典型的なハイテクベンチャー企業で経験を積んだ起業家であり、自動車関連の仕事をしてきたわけではありません。また、ベタープレイスの創立者アガシは、以前はドイツのソフトウェア大手のサップのプロダクツ・技術グル-プの責任者で、彼も自動車業界にいたわけではありません。
自動車産業はこれまで100年かけて今日の市場を形成し、インフラを醸成してきました。ところが、これまで全くといってよいほどデトロイトとは直接関係の無い人生を歩んできた人たちによって、新たな自動車産業がシリコンバレーバレーから生まれようとしています。


伸長する自動車関連ベンチャーと「シリコンバレー・モデル」

2011-11-09 06:59:38 | Weblog
ここ数年間で、自動車関連のベンチャー投資は数十倍に加速しました。03年には800万ドルに過ぎなかったアメリカの自動車関連ベンチャーへの投資は、08年には3億ドルにも上昇。また、09年第2四半期には、自動車関連ベンチャー投資が太陽光・風力発電などを押さえ、環境技術関連投資のトップ33%を占めました。
アメリカの自動車関連ベンチャーでは、テスラ・モーターズ(Tesla Motors)、フィスカー・オートモーティブ(Fisker Automotive)とったプラグインハイブリッド車や電気自動車の開発企業として有名です。シリコンバレーにはテスラ・モーターズやフィスカー・オートモーティブの対抗馬も登場しています。シンク・グローバル社です。09年3月になって、クライナー・パーキンスなどが投資を決め、小型のEVの開発・販売を行なっています。加えて最近ではV・ヴィークルがクライナー・パーキンスによる投資、さらには元石油王で再生可能燃料の開発に資金提供をするT・ブーン・ピケンズ氏による投資で注目を集めました。
では、その「シリコンバレー・モデル」が情報通信技術やエレクトロニクスとは一見係わりの無い自動車関連ベンチャーなどグリーンテック分野で現在なぜここまで脚光を浴びるようになったのでしょうか?
それは、これまで長い年月を経てシリコンバレーで培われたエレクトロニクス、情報通信技術、材料技術、ナノテクノロジーなどの技術の多くが、実は太陽電池、蓄電池、燃料電池、バイオ燃料、先端的電池、電力制御技術など、グリーンテックの多くのアプリケーションの要素技術でもあるからです。これらの技術の発展、これらの技術を駆使して新しい企業を起こそうという起業家、これらの起業家に資金を提供するベンチャー・キャピタル、さらに、これらの活動を後押しする州政府および連邦政府の積極策が、イノベーションのネットワークを形成し、シリコンバレーでグリーンテックの地域クラスターの醸成を可能にしているのです。
このことは、シリコンバレーのサンカルロス市にあるテスラ・モーターズを始めとするシリコンバレーにおける自動車関連ベンチャーのビジネスモデルおよびそれを支えている技術構造を見ると、よくわかります。それは、半導体やコンピュータシステムのビジネスモデルと技術構造に非常に似ています。
つまり、キーテクノロジーあるいはコアーコンピテンスは自社でしっかり抑え、世界で最先端のポジションを維持しつつ、それ以外の技術、コンポーネントは外部から調達し、出来るだけ身軽な経営を行なっていこうとしています。例えば、テスラ・モーターズは03年に無名のベンチャー企業として創立され、ゼロから出発してほんの5年のうちに、世界で最先端とされる電気自動車を生み出しました。テスラ・モーターズは自動車産業にシリコンバレー・モデルを持ち込んだと言えます。プラグインハイブリッド車や電気自動車の伸長に伴って、自動車産業は伝統的な製造業からハイテクノロジー産業に近づいているのです。

シリコンバレーのグリーンベンチャー投資

2011-11-08 07:46:44 | Weblog
シリコンバレーでは環境エネルギーベンチャーへの投資が急拡大し、関連産業が生み出す雇用も増加しています。従来主力のIT産業は失速しており、環境エネルギー産業を新たなけん引役に育てられるかに注目が集まっています。
 08年にシリコンバレーの環境エネルギーベンチャーに振り向けられたベンチャー・キャピタル(VC)の投資額は190億ドル弱で、07年から9割以上増えました。環境エネルギー新市場の拡大を有望視したVC各社が環境エネルギーベンチャーを支援する動きを強める一方、半導体企業などへの投資を減らしました。このことは、シリコンバレーのベンチャー・キャピタルの雄クライナー・パーキンス(KPCB:Kleiner Perkins Caufield & Byers)の投資動向を見ても明らかです。クライナー・パーキンスは、グリーンテック分野においては、過去5年以上にわたり45社、6億ドル以上投資してきています。その多くは、公表していないステルスモードのものです。今後の関心領域としては、Power Management for PC Networks, Smart Grid and AMI, Home Security and Energy Managementだとしています。08年は、全米の環境エネルギーベンチャー投資額の3割以上がシリコンバレーに振り向けられました。ベンチャー急増などを受け、環境エネルギー産業が生む出す雇用「グリーンジョブ」も増加しています。
09年に入ると、景気の落ち込みの影響が環境セクターへも影響し、全体的な投資動向はやや落ち着いた傾向にあります。しかし、環境関連のトップ・ベンチャーファンドはいずれも、09年中に1~数件の環境技術ベンチャーの投資を予定し、その予算枠も既に組み込み済みと言われています。
環境ベンチャーへの大型投資で知られるコスラ・ベンチャーズの08年までの投資先は、主に太陽光発電と風力発電でしたが、今後は「水関連」と「省エネ化」の2分野に注力するとのことです。特に、エアコンの効率化による省エネに注目しています。 09年9月1日コスラ・ベンチャーズは、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)、ミシガン州職員退職年金基金、カリフォルニア大学評議委員会などからクリーンエネルギーに特化した投資ファンド2本で計10億ドル以上の資金を調達したことを明らかにしました。 米ベンチャー・キャピタル協会によると、ベンチャーファンドの調達額としては09年で最大です。
09年以降の環境エネルギーベンチャーへの投資動向は、何んと言ってもオバマ大統領の政策による追い風の影響を受けています。特に、08年12月末で満了することになっていた代替エネルギーに対する生産・投資税額控除(PTC・ITC)が太陽光に関しては8年、風力に関しては2年延長されたことが大きなインパクトを与えています。
さらに、シリコンバレーではインテル、IBM、グーグルなどIT企業も積極的にベンチャー企業に対して投資しています。このうち積極的な姿勢を見せているのはインテルです。インテルは、ベンチャー・キャピタルであるIntel Capitalによる投資により、スタートアップ企業のネットワーク化に取り組んでいます。
Intel Capitalは、今まで1000億ドルを投資してきていますが、08年において総額15億9000億ドルの投資を行っており、クリーンテクノロジー関連への投資はその約10%を占めています。09年に入り、クリーンテクノロジー関連のベンチャー企業5社へ出資しています。出資額は合計1000万ドル。いずれもスマートグリッドなどエネルギー効率技術の普及促進を目的としています。
Intel Capitalが09年に出資したのは、企業向けに電力管理サービスを提供するCPower、スマートグリッド向けネットワークOS企業のGrid Net、サーバやデスクトップPC向けデジタル電力制御装置メーカーのアイルランドのPowervation、省電力を目的としたHPCソリューションを提供する米Convey Computer、IPベースの家庭用リモート監視システムメーカーのiControlの5社です。
Intel Capitalの今後の投資対象企業のうち注目されるのは、Grid NetとiControlです。インテルは、かつて無線LAN対応のノートパソコン用チップを開発し、瞬く間に無線LAN接続が広まったように、現在はWimax用チップを開発してWimaxで同様の戦略を展開しようとしています。日本でも、モバイルWimax対応チップを内蔵したノートパソコンを、ソニー、パナソニック、富士通、NEC、東芝などの日本メーカーとレノボやエイサーなどの海外メーカーも相次いで販売しようとしています。Grid NetとiControlは、WimaxをベースとしたインテルのHAN・HEMS戦略の一環と見ることもできます。

グリーンバレーへと変貌するシリコンバレー

2011-11-01 07:27:37 | Weblog
「スマートグリッド革命」は,アメリカの中でもシリコンバレーを基点に始まっています。米西海岸サンフランシスコの南、スタンフォード大学やサンホゼの周辺に集積する産業群よりなるシリコンバレーは、図表に示すように、半導体、PC・コンピュータシステム・周辺機器、ソフトウェア、通信・インターネット、バイオテクノロジー・ライフサイエンス、グリーンテックと幾度となく脱皮の過程を繰り返してきました。その都度、イノベーションの主役は代わってきましたが、折り重なるようにしてその活力を向上させ、その都度存在価値を高めています。そして今、グリーンテック、スマートグリッドが新しい主役として登場してきているのです。
スマートメーターのスタートアップ企業の成長株として近年において俄然注目されているシルバー・スプリング・ネットワークの最高財務責任者ワーレン・ジェンソンは、「02年に創業したときは、スマートグリッドについて語る人はいなかった。私たちはいち早くグリッドの可能性に注目し今日の地位を築いた」と語っています。この言葉が示すように、まずシリコンバレーでは、創業から数年を経過したスマートグリッド関係企業が先行者利益を享受するようになり、市場の拡大とともに大企業や様々な他の分野のスタートアップ企業が続々と参入しています。
これらの企業のなかには、太陽電池の薄膜、薄膜成形に必要な真空機器や材料、省エネ型照明や省エネデバイス、商業ビルの省エネモニタリングの機器やサービス、燃料電池、クリーンコール(石炭の効率的利用技術)、ナノテク材、小規模水力発電タービン、センシングデバイス、電気自動車関連など数多くの新興企業が含まれています。
電気自動車の充電スタンドを手がけるベタープレイスや、太陽光パネルを開発するサンパワー(Sun Power)、薄膜材料を手がけるスパッタリングマテリアルズ(Sputtering Materials)などを筆頭に、シリコンバレーの環境エネルギーベンチャーはいまや数百社ともいわれています。電気自動車開発のテスラ・モーターズも、一時的に苦境に立ち従業員のレイオフに追い込まれましたが、今では勢いを盛り返しています。「シリコンバレー・モデル」は進化し続けているのです。