エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

画期的な固定価格買取り制

2011-11-24 06:31:11 | Weblog
化石燃料発電や原子力発電に比してコストの高い再生可能エネルギーを大量に導入するにはビジネスリスクが伴います。このビジネスリスクを軽減するためドイツが採用した政策が「固定価格買取り制度」(フィード・イン・タリフ)で、現在ではスペインを始め多くの欧州諸国でも採用されています。
固定価格買取り制度の効果は、再生可能エネルギーによる発電を導入する個人・企業に大きな収入を生むので、設備投資が加速して再生可能エネルギー発電産業を爆発的に育成する効果を有する点です。そのため、固定価格買取り制度の登場により再生可能エネルギー発電関連産業は、研究開発レベルから大量生産レベルへと移行し、スケールメリットでコストをさげるとみられています。
この制度の起源は、ドイツ西部のアーヘンのNGO「太陽エネルギー促進ネットワーク(SFV)」設立者が提案したことにさかのぼります。「アーヘンモデル」とも称されるこの考え方は、再生可能エネルギーによる電力を電力会社が一定期間高い価格で全量購入し、必要な費用は電力料金に上乗せするというものです。1991年の「電力買取り法」で始まったこの政策は、2000年に系統への優先接続の確保などを盛り込んで「再生可能エネルギー促進法」(EEG)として全面改正され、さらに04年に一部改正されたのち、08年に大きく改正されて09年1月よりより施行されています。
具体的な内容としては、買取り価格(通常電力単価比)は約3倍、制度の適用期間は20年、買取りの対象となる電気は発電量全量というもので、09年時点での買取り対象は、太陽光、風力、地熱、バイオマス(2万kw以下)、埋め立て・下水がス(5000kw以下)、小水力(5000kw以下)、波力、潮力による発電です。
ドイツの固定価格買取り制は、常に時代のニーズ、環境に合うように見直されており、再生可能エネルギーの全量買い取り制度を検討している日本にとって大いに参考になります。最新の08年改正は、20年までに電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を20%から30%に引き上げ、その後も継続的に上昇させるとしましたが、固定価格買取り制については、それが社会に定着し、再生可能エネルギーの割合が急速に上昇してきている実態を踏まえて制度改善がなされました。
 すなわち、固定価格買取り制の下での太陽光発電の取り扱いについて、電力料金の上昇という国民負担の増大にも配慮し、買取り価格を引き下げるとともに、太陽光発電について買取り期間中の買取り価格の低減率を他の再生可能エネルギーよりも高めたり、導入量によって低減率を変化させるとしています。さらに、再生可能電力発電事業者が、希望すれば固定価格制を離脱することができ(暦月ベースで離脱し、暦月ベースで復帰できる)、直接電力を販売することができることを規定し、再生可能電力発電事業者の自立化にも配慮しています。