エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

シリコンバレーのグリーンベンチャー投資

2011-11-08 07:46:44 | Weblog
シリコンバレーでは環境エネルギーベンチャーへの投資が急拡大し、関連産業が生み出す雇用も増加しています。従来主力のIT産業は失速しており、環境エネルギー産業を新たなけん引役に育てられるかに注目が集まっています。
 08年にシリコンバレーの環境エネルギーベンチャーに振り向けられたベンチャー・キャピタル(VC)の投資額は190億ドル弱で、07年から9割以上増えました。環境エネルギー新市場の拡大を有望視したVC各社が環境エネルギーベンチャーを支援する動きを強める一方、半導体企業などへの投資を減らしました。このことは、シリコンバレーのベンチャー・キャピタルの雄クライナー・パーキンス(KPCB:Kleiner Perkins Caufield & Byers)の投資動向を見ても明らかです。クライナー・パーキンスは、グリーンテック分野においては、過去5年以上にわたり45社、6億ドル以上投資してきています。その多くは、公表していないステルスモードのものです。今後の関心領域としては、Power Management for PC Networks, Smart Grid and AMI, Home Security and Energy Managementだとしています。08年は、全米の環境エネルギーベンチャー投資額の3割以上がシリコンバレーに振り向けられました。ベンチャー急増などを受け、環境エネルギー産業が生む出す雇用「グリーンジョブ」も増加しています。
09年に入ると、景気の落ち込みの影響が環境セクターへも影響し、全体的な投資動向はやや落ち着いた傾向にあります。しかし、環境関連のトップ・ベンチャーファンドはいずれも、09年中に1~数件の環境技術ベンチャーの投資を予定し、その予算枠も既に組み込み済みと言われています。
環境ベンチャーへの大型投資で知られるコスラ・ベンチャーズの08年までの投資先は、主に太陽光発電と風力発電でしたが、今後は「水関連」と「省エネ化」の2分野に注力するとのことです。特に、エアコンの効率化による省エネに注目しています。 09年9月1日コスラ・ベンチャーズは、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)、ミシガン州職員退職年金基金、カリフォルニア大学評議委員会などからクリーンエネルギーに特化した投資ファンド2本で計10億ドル以上の資金を調達したことを明らかにしました。 米ベンチャー・キャピタル協会によると、ベンチャーファンドの調達額としては09年で最大です。
09年以降の環境エネルギーベンチャーへの投資動向は、何んと言ってもオバマ大統領の政策による追い風の影響を受けています。特に、08年12月末で満了することになっていた代替エネルギーに対する生産・投資税額控除(PTC・ITC)が太陽光に関しては8年、風力に関しては2年延長されたことが大きなインパクトを与えています。
さらに、シリコンバレーではインテル、IBM、グーグルなどIT企業も積極的にベンチャー企業に対して投資しています。このうち積極的な姿勢を見せているのはインテルです。インテルは、ベンチャー・キャピタルであるIntel Capitalによる投資により、スタートアップ企業のネットワーク化に取り組んでいます。
Intel Capitalは、今まで1000億ドルを投資してきていますが、08年において総額15億9000億ドルの投資を行っており、クリーンテクノロジー関連への投資はその約10%を占めています。09年に入り、クリーンテクノロジー関連のベンチャー企業5社へ出資しています。出資額は合計1000万ドル。いずれもスマートグリッドなどエネルギー効率技術の普及促進を目的としています。
Intel Capitalが09年に出資したのは、企業向けに電力管理サービスを提供するCPower、スマートグリッド向けネットワークOS企業のGrid Net、サーバやデスクトップPC向けデジタル電力制御装置メーカーのアイルランドのPowervation、省電力を目的としたHPCソリューションを提供する米Convey Computer、IPベースの家庭用リモート監視システムメーカーのiControlの5社です。
Intel Capitalの今後の投資対象企業のうち注目されるのは、Grid NetとiControlです。インテルは、かつて無線LAN対応のノートパソコン用チップを開発し、瞬く間に無線LAN接続が広まったように、現在はWimax用チップを開発してWimaxで同様の戦略を展開しようとしています。日本でも、モバイルWimax対応チップを内蔵したノートパソコンを、ソニー、パナソニック、富士通、NEC、東芝などの日本メーカーとレノボやエイサーなどの海外メーカーも相次いで販売しようとしています。Grid NetとiControlは、WimaxをベースとしたインテルのHAN・HEMS戦略の一環と見ることもできます。