エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

“ウィン・ウィン”を産み出す政府によるディカプリング

2011-06-21 07:47:08 | Weblog
思えば、供給が一方的に需要に合わせるという従来の電力ネットワークの考え方は、需給双方に負担を強いるものとも言えます。地域独占を保証された供給側は、供給責任を果たすためにピーク需要に合わせて発電設備を保有しなければならず、必然的に設備の稼働率は下がり、コストは上昇せざるをえません。そうなると、需要側も低稼働率ゆえのコストアップを反映した高い電気料金を受け入れざるを得ないなります。これに比して、供給側のみならず需要側からの要請も入れた電力ネットワークであるスマートグリッドは、供給側と需要側の“ウィン・ウィン”の状況を産み出す可能性を切り開くものです。
このようなスマートグリッドによる“ウィン・ウィン”の状況は、電力会社が通信キャリアモデルで“蛙とび”(リープ・フロッグギング)をすれば可能となります。09年6月の米連邦エネルギー規制委員会(FERC)スタッフ報告書によると、19年に最大188ギガワット(GW)、20%の負荷平準が需要応答 により実現することができると報告されていますが、通信キャリアの世界では、通信時間、通信距離、通信計画に基づいた通信レートにより料金体系を設定しており、分単位で料金設定を変えた料金体系を設定するという「リアルタイム・プライシング」(Real Time Pricing)は当たり前のことです。 
この考え方をスマートグリッドの需要応答 により実現すれば、電力会社は収益を向上させることができます。このことは、すでに通信キャリアが実践して証明して見せたところであり、電力会社は儲かるビジネスモデルへと容易に“蛙とび”できるのです。この効果については、アメリカの場合では、ユーザが払う電気料金の低廉化のみならず電力会社のインフラコストがキロワットアワー当たり25~45セント節約されると試算されています。
現状では、アメリカの電力会社の多くは固定料金制のみをユーザに提供しており、使用時間帯別の料金設定にはなっていません。しかし、アメリカでスマートメーターによる需要応答の効果を実証したものとして、米DOEの国立研究所であるPacific Northwest National Laboratoryが08年に行ったGridwise Olympic Peninsula Demonstration Projectがあります。これは、5分間隔のリアルタイム・プライシングによる効果をブロードバンド環境で実証したものです。実証の結果、ピーク電力を15~17%減少させ、平均的な家庭で15%電気料金が安くすることができるとことが明らかになりました。
このようになれば、電力会社側にもよりスマートな電気の使い方を提案する新しいビジネスチャンスが生まれることになります。これらの結果として、省エネルギーやCO2削減を意識したライフスタイルが定着すれば、環境負荷の低減という社会としての課題解決にもつながります。また、それに対応した家電製品への需要が高まれば、新しい市場の開拓が進み、産業面から見ても大きな需要創出効果が望めることになるでしょう。このように、需要応答 はユーザ、電力会社、経済、社会というすべてのステーク・ホルダーに対してメリットを提供しうる“ウィン・ウィン”の仕組みを提供するものなのです。
ただし、スマートグリッドの進展は、短期的には電力会社の売り上げを減少させることも事実です。このため政府としては、電力会社の売り上げと利益を「ディカプリング」するための規制上のインセンティブ、設備投資に対する減価償却の特例などの措置を講ずる必要があります。この場合、キロワットアワー当たりだけではなく、キロワット当たりでインセンティブを付与する方式をとると促進効果が高まります。

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