エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

野心的なイギリスの「暖かい家、よりグリーンな家」戦略

2011-11-30 07:26:47 | Weblog
EU「建築物のエネルギー性能改善に関する指令」をさらに前進させているのがイギリスです。イギリス政府は10年3月2日、家庭部門のCO2削減のための戦略としては画期的な「暖かい家、よりグリーンな家:家庭部門エネルギーマネージメント戦略」(以下「家庭戦略」)を発表しました。家庭部門のCO2排出量は、英国全体の排出量の4分の1を占めます。イギリスでは、20年までに家庭部門のCO2排出量を29%削減することを目標としており、その目標実現に向けた取組みをさらに加速するため、今回の家庭戦略が発表されたものです。
 家庭戦略は、①15年までに、実行可能なすべての住居で屋根裏や壁に断熱材を設置する、②すべての家庭にスマートメーターを設置し、エネルギーの効率的利用を実現する、③最大700万世帯で1枚壁断熱や、ヒートポンプなどの再生可能エネルギー技術を導入し、環境性能向上を実現する、④賃貸住宅に住む人にも高いレベルのエネルギー効率性を享受させる、⑤都市部で地域暖房を拡張する、⑥エネルギー効率という新しい産業で6万5,000人の雇用を創出し、さらには関連機器のサプライチェーンを含めこの数倍の雇用を創出する、という目標を掲げています。
このため、エネルギー供給会社は13年以降、地方自治体による家庭での省エネ支援の取組みへの参加が義務化され、これまで以上に自治体と連携した取組みが求められます。エネルギー供給会社はさらに一定量の炭素削減が義務化され、もし達成しなければ、利益の10%を罰金として科せられます。また、地方自治体に対しても、省エネ推進のための施策として、地方税の減税などの独自のインセンティブを提供することが求められています。さらに第三者機関も巻き込み、それぞれの地域に特徴的な支援の枠組みで取り組むことが期待されています。
 今回の戦略は、賃貸住宅の省エネ推進にも力を入れています。新しい「暖かい家」基準を策定し、実行可能な場所では断熱材や低炭素熱設備を20年までに導入することを家主に求めています。導入の際、家主に対してはエネルギー供給会社に義務化した支援が提供される見込みです。また、省エネ設備を導入した家庭に対して、その費用を設備導入で節約された光熱費に上乗せして分割払いする「pay as you save」型スキームが現在、試験的に実施されていますが、その仕組みを賃貸住宅にも適用します。設備導入費用を後払いで借家人が分割して支払う仕組みです。
さらに、省エネ設備の導入によって高まるエネルギー性能を、住宅市場に正しく反映させる方法も検討するとしています。消費者に対する助言支援も用意されています。現在、イギリス政府が設立した「エネルギー・セイビング・トラスト」によって省エネ事例の紹介や助言が行われていますが、それを発展させて消費者が省エネ設備導入の効果を理解し、さらにさまざまなオプションを比較できるような、無料助言サービスを設ける計画です。そこでの助言提供者や、省エネ設備の設置者に対する新しい認証システムも導入する予定です。
 今回の家庭戦略では、家庭での省エネ実現に向けた設備として、地域暖房、ヒートポンプ、太陽光発電や太陽熱が取り上げられており、この分野でのビジネスチャンスがさらに増えると期待されています。イギリス政府は、10年4月から固定価格買取り制度を導入する予定で、太陽光発電などによる電気が買い取りの対象となります。また、同様の仕組みで、再生可能エネルギーによる熱供給に対してインセンティブを付与する「再生可能熱インセンティブ)」を11年4月から導入する政策案を10年2月に発表し、意見を公募中です。これはヒートポンプや太陽熱を対象とし、今回の家庭戦略と合わせて小規模な再生可能エネルギー技術の普及を加速させることをねらいとしています。
 イギリス政府は、今回の家庭戦略の実施には、13年から20年にかけて186億ポンド(1ポンド=約135円)相当のコストがかかると見積もっており、このコストの3分の2を、エネルギー供給会社に対して20年までに400万トンのCO2を削減する取組みを義務化するとともに、断熱材の設置や小規模な再生可能エネルギー設備の普及を進めることで賄います。残りの3分の1は前述の「pay as you save」型スキームで、スキームの詳細は今後詰めていくことにしています。

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