エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

政府の新成長戦略・グリーンイノベーション政策の盲点(エコポイントの活用を)

2010-10-26 00:00:59 | Weblog
自然利子率を高めるためには、「真のイノベーション」を起こすべく、「アニマルスピリット」を高めてリスク・テイクを増やす環境を整えるとともに、マネーによる購買力の退蔵を回避して消費を喚起する手段を登場させることが必要です。前者で重要になるのは、期待収益率を高めるための政府による明確なコミットメントや技術開発促進策とスマートレギュレーション(賢明な規制)ですが、後者に関しては、現在の家電エコポイント&住宅エコポイントを発展させて新エコポイントを流通させることが処方箋となります。エコポイントは、巷間考えられているようなイメージとは異なり、「真のグリーンイノベーション」を実現する手段です。
エコポイントには、利子がつかないすなわち名目利子率ゼロであり、ポイントの有効期限が設定されているというマネーとは異なる性質があります。「流動性の罠」の下ではマネーは家計等に退蔵されてしまい消費が喚起されません。現に、前麻生政権下で実施された2兆円の定額給付金によって増えた消費支出はわずか6300億円で、名目GDPに占める割合は0.13%にすぎません。これに対してエコポイントは、利子を生まないので長期保有のメリットがなく、逆に有効期限が来ると価値を喪失しまうので、次に使われることを想定した価値媒体であると言えます。したがって、「流動性の罠」の下でも貨幣の流通速度を上昇させることにより(現在の日本経済における貨幣の流通速度は0・7程度ですが、90年出し後半に登場した地域通貨に関する実証分析では、7倍以上高まることが明らかにされています)、消費財に関する消費貯蓄選択を刺激して消費需要を増大させることができます。そうなれば、経済において消費と投資は同時決定なので、投資需要も喚起されます。

具体的には、太陽光発電、電気自動車、エコキュート、エネファームなどの個人の省エネ・創エネを促進するために交付されている補助金の一部をマネーではなくエコポイントで交付することが考えられます。先例としては、08年度より開始されている「京都エコポイント」において、京都府の太陽光発電導入補助金(国の補助金の上乗せ補助)が「京都CO2削減バンク」を通じてエコポイントとして交付され、エコポイントは京都商店街(合同会社KICSの加入メンバーである1200店舗)でのお買い物、各種私鉄を利用する際の運賃をして活用できるようにしているケースがあります。これは、私が手掛けた05年愛・地球博において成功をおさめたEXPOエコマネーを京都に移植した「電車deエコ」のスキームを発展させたものです。
また、私は「家庭・オフィスCDMとエコポイント」というスキームを提唱しています。この「家庭・オフィスCDMとエコポイント」は、HEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building Energy Management System)を基礎としたスマートグリッドの構築と合わせて、国内クレジット制度を活用します。家庭やオフィスにおけるCO2削減分(省エネ・創エネ分)について、

① スマートプロジェクトに設置される「エコポイント・バンク」(民間機関とも連携)が仲介して、大企業が排出クレジットとして取得し(大企業のクレジット購入費は税法上損金参入可能とし、温暖化対策防止法上の報告制度上のインセンティブも付与する)

② 大企業から「エコポイント・バンク」に渡ったマネーは「エコポイント・バンク」においてエコポイントに変換なされてCO2削減主体にわたる

③ CO2削減主体は、受け取ったエコポイントを電子マネー、商品券等に交換して公共交通機関の利用、地域商店街でのお買い物等に消費することにより景気浮揚効果、経済活性化効果も期待できるように制度を工夫します。

 このスキームの下では、エコポイントの原資は国ではなく排出クレジットを取得する大企業となるので国に財政負担が生ずることはありません。また、大企業が国内クレジット制度を活用して排出クレジットを取得することは、京都CDMの活用スキームの発展形と言えますが、これにより、海外への資金流出を抑制することもできます。
さらに、再生可能エネルギーの全量固定価格買取り制度を活用した「エコポイント・マネー」が考えられます。太陽光発電などの売電対価や各種ポイントを現金化したお金が専用の「エコポイント・バンク」に開設される口座に入金され、エコ商品・サービスの購入や電気自動車に充電する場合の支払い手段としてエコポイント・マネーが利用されます。また、口座を利用して決済する場合にエコ消費用のポイントが付与されます。

 エコポイントは入り口(エコマネー獲得時)だけがエコですが、エコポイント・マネーは入り口のみならず出口(エコポイント・マネーの使用時)もエコという性格を有します。エコポイント・マネーの名目利子率もマネーのそれとは異なってゼロなので、エコポイントと同様貨幣の退蔵は起こりません。しかも、エコポイントと異なって取引金額全体をカバーするので、消費の活性化、それによる経済の成長を促進する効果ははるかに大きくなります。

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