エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;石油企業は生き残る道を見つけられるか)

2010-10-27 00:02:23 | Weblog
「スマートグリッド革命」のインパクトに対して、ガス会社以上に危機感を持っているのが石油会社です。石油会社は、08年9月のリーマンショック後の世界不況、人口減少などによる需要低迷の打撃を強く受けて苦渋しています。09年3月に資源エネルギー庁が策定した13年度までの5年間の石油製品需要見通しでは、年平均で3.5%減、5年間全体で16.4%減と予測していましたが、消費者の「車離れ」、「石油離れ」のマインドは根強く、09年秋の時点ですでに5年後の需要レベルに落ち込む状況になっています。
石油企業にとって収益基盤の柱であるガソリン販売も上向かない中、過剰設備対策、収益性の高い石油化学部門の強化などの経営努力とともに、10年4月の新日本石油と新日鉱業ホールディングスの経営統合を始めとした合従連衡、業界再編をさらに加速化させなければいけない状況になっています。
問題はもっと深刻です。「ピークオイル」の到来や地球温暖化問題は石油企業の足元そのものを揺るがしており、さらに前述した電気自動車時代の到来は、自動車業界のみならずガソリンを供給する石油企業に対してもビジネスモデルそのものの変革を迫っています。
今や石油企業の収益基盤の屋台骨がぐらついているのが実情で、再生可能エネルギーの導入を加速することで、石油に代わる新たな収益源の確保・ビジネスモデルを早急に構築することが生き残りの前提となっています。既に石油元売り会社では、昭和シェル石油や新日本石油(10年4月に持ち株会社であるJXホールディングスが発足しており、その下に7月よりJX日石日鉱エネルギーが発足することになっています)などが太陽電池事業の展開、急速充電池の開発・実証、バイオ燃料への取組みなどに向けて動き出しており、たとえば新日本石油は、ガソリンスタンドを活用して電気自動車用のインフラを整備する実証事業を行っています。電気自動車に急速充電をする設備を設置し、複数の人で車を共同利用するカーシェアリングの実験も実施しています。新日本石油は、将来の水素社会をにらんだ燃料電池や大型照明やディスプレイ用の有機ELの開発も積極化させています。
またコスモ石油は、10年3月に風力発電国内4位のエコ・パワー(東北、北海道などの25拠点で計117基、約12万キロワットの風力発電設備を運営。加えて、愛媛県で12基が運転を開始)を買収し、風力発電事業に進出することを決定し、エコ・パワーの親会社、荏原から保有する全株式を1円で取得しました。エコ・パワーの売上高15億円程度ですが、08年度は15億円程度の最終赤字です。09年度は黒字転換する見込みですが、累積負債約100億円を抱えています。今回のコスモ石油の決定は、1円で買収する代わりに負債をすべて引き受けるもので、縮小する石油関連事業に対するコスモ石油の危機感を象徴しています。
 しかし問題は、こうしたビジネスモデルの転換が間に合うかということです。需要が5年間で16.4%減少するということは、国内第3位の昭和シェル石油の取扱量がそっくりそのまま消える規模です。さらに、「ピークオイル」の到来が12年ごろ、遅くとも20年までと言われる状況下で、変革のスピードが問われています。石油企業が生き残るかは、戦略展開の俊敏性いかんにかかっていると言えます。

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