エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

地球環境税に関する根本的疑問

2010-08-04 06:49:41 | Weblog
CO2の排出削減を行うツールを設計する際には、「量」に着目した国内排出量取引制度によるアプローチと「価格」に着目した地球環境税によるアプローチの2つがありますが、市場において需要が一定とすればいずれかの対応で十分なはずで、この2つのアプローチをミックスすることはかえって混乱を伴います。
日本においては、この点に関して、単に省庁間の対立の問題以上の本当に冷静な分析、国益の最大化という観点から議論がなされているかどうか疑問ですので、ここで「混乱している議論」に一石を投じ、関係者の覚醒を促したいと思います。
地球環境税に対しては、①民間の将来に対する市場(先物市場)や排出権取引で対応することが可能、②日本など限られた国だけが導入してもその効果は疑わしい。日本の環境税に中国、米国、途上国がただ乗りして、彼らが環境対策をなおざりにすると、世界全体としての効果は小さくなってしまう、③価格弾力性が低いので、環境税よりも規制の方が直接的に目標を達成しやすい、④環境対策を実施する財源を環境負荷に対する課税に求める必要はなく、環境対策に必要な税収を別に集めてもかまわない、⑤環境税を導入するのであれば、環境汚染への正しい負荷価格を設定するものでなければならないが、どれだけ負荷を上乗るのが適当かわからないし、日本だけで実施しても効果は不確定である、という疑問があります。総じて、環境税を導入するメリットが大きい根拠は、まだ十分には示されてはいないと結論できます。
これに対して、国内排出量取引制度に関しては、05年からEUがEU-ETSを導入しており、07年までの第1期の効果に関しては、制度がなかった場合に比べて2~5%の削減効果があったという実証研究もあります。EU-ETSについては、厳格な排出枠の設定、オークション制度の導入など制度の精緻化が図られています。アメリカでは、連邦議会で同様の制度を創設すること等を内容とする法案が審議されているところですが、すでに北東部10州が参加する「地域温室効果ガスイニシアティブ」(RGGI)が実施されています。加えて、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、中国、韓国でも導入が決定されたり、予定されたりしています。
日本でも08年10月より国内排出量取引制度の試行制度が始まっており、11年度から正式なキャップ・アンド・トレード方式の排出量取引制度がスタートする予定です。「量」に着目した国内排出量取引制度によるアプローチを基本として、国内排出量取引制度によるアプローチによるディメリットとされる点は、排出枠の配分ルールの明確化、透明性の確保などにより対処すべきであると考えられます。
地球温暖化対策基本法案では、国内排出量取引制度と同時に地球環境税の導入が検討されることになっていますが、フランス政府が導入を目指している炭素税をめぐる憲法院の「違憲」判定、その後のフランス政府の対応は、いかに地球環境税の導入が日本でも多大なる困難を伴うものであるかを示しています。
フランス政府は、10年予算法に炭素税を組み込みましたが、これに対して、フランス憲法院は09年12月、エネルギー消費型産業だけに免税措置を与えるのは「税負担の公平性に反する」として違憲と判断しました。フランス政府は、これを受けて法案の内容を見直し国民議会での審議を受けることにするとともに、競争上の公平性の観点からEU域外からの輸入品に対する関税の導入をEUに求めていく方針も明らかにしています。
ただ、この点がWTOルールで認められるかは、明らかになっていません。日本で地球環境税を導入した場合、中国などから(CO2を大量に排出して生産した)輸入品が輸入され、地球全体としてCO2削減につながらないという事態は容易に想定されます。

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