エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

政府の新成長戦略・イノベーション政策の盲点(今ある技術ボトムアップ・アプローチ&エコポイントが必要)

2010-10-31 08:26:41 | Weblog
政府の成長戦略の盲点として、グリーンイノベーションを「革命」と言える現象に発展させるために必要なアプローチが十分ではないこともあげられます。グリーンイノベーションは、IT(情報通信技術)とET(エネルギー技術・環境技術)が融合したST(スマートテクノロジー)による変革です。では、この変革を「革命」にまで発展させるために最も必要なことは何でしょうか?技術開発やそのための実証事業が必要なことは論をまたないのですが、いまの政府の対応がその点だけに集中していることに問題があります。
私は、「革命」を起こすためには、①ユーザ指向のボトムアップのイノベーションの創生、②テクニカルエンジニアリングよりも重要なソーシャルエンジニアリングの実行、③プロシューマ(生産消費者)を主体とする自律分散協調系の構築の3つがいまの政府の対応に加えて必要であると考えます。IT革命が「革命」と言える現象になったのは、この3条件が初期段階で整備され、膨大な数のユーザがネットワークに容易に参加できる状況が生まれたことにより、「ムーアの法則」(半導体の性能対価格比が18カ月ごとに半減するという現象が長期にわたって継続するという経験則)と「メトカ―フの法則」(ネットワークの価値は参加するユーザの数の2乗に比例して相乗効果で高まっていくという経験則)が作用したからです。

たとえて言えば、インターネットのネットワーク環境として光ファイバーや無線ブロドバンドが整備されたから「IT革命」が起こったわけではありません。ダイアルアップの下でもメール送受信、ホームページ閲覧、電子商取引、テレコミューティング、遠隔教育などができることを実証して膨大な数のユーザに使用させ、それにより膨大な需要を創出して需要と供給との好循環のサイクルを作り上げ、その上で速度が遅いので何とか早くしてほしいとのユーザの切実なウォンツに基づいて、ADSL、光ファイバーや無線ブロドバンドへとネットワーク環境をグレードアップしてきたから、ITという変革が「革命」になったのです。「ダイアルアップ→ADSL→光ファイバーや無線ブロドバンド」という発展パターンであって、その逆ではありません。いまの政府のグリーンイノベーションへの対応は、いきなり光ファイバーや無線ブロドバンドの段階に行こうとして技術開発やそのための実証事業を偏重しているところに問題があります。
そのIT革命勃興時においては、シリコンバレーにおいて誕生した「スマートバレー公社」(ジョン・ヤング会長(元ヒューレット・パッカードCEO)、ビル・ミラー副会長(スタンフォード大学教授)、ハリー・サール社長(起業家))がインターネットの民生利用のパイロット&ファシリテーターとして機能し、この3条件を整えました。「スマートバレー公社」は非営利の民間会社として認められた簡素で柔軟な組織体であり、数名の事務局で構成されていました。実際の活動は、「コマースネット」(インターネットを活用した商取引)、「スマートスクール」(インターネットを活用した教育)、「テレコミューティング」(インターネットによるテレコミューティングの促進)などのプロジェクトをコンソーシアム方式で推進することで遂行されました。
では、グリーンイノベーションにおいて、IT革命のダイアルアップやそれを前提とした「革命」の演出に相当するものとは具体的にどのようなことなのでしょうか?
私は、HEMS、BEMS+V2Gにおける通信方式の標準化(このことは政府も進めていますが、そのために、家電エコポイント制度や住宅エコポイント制度の要件として一定の標準対応の機器であることを入れて、家電エコポイント制度や住宅エコポイント制度をそのために活用することを推進すべきです)、多種の通信方式の下でもネットワークにつながったさまざまな機器のインターオペラビリティを確保するための共通モジュールの普及などがその典型であると考えています。
いま時代は、IT革命からそれを包摂する「ST革命」への移行という大変革期にあります。私が代表を務める一般社団法人スマートプロジェクトは、スマートグリッドの進化モデルに基づき、「ST革命」のパイロット&ファシリテーターとして「スマート国民総発電所構想」を実現するためのフラッグシップ・プロジェクト等を推進し、政府や官民の推進組織である「スマートコミュニティ・アライアンス」による取り組みを補完して、IT革命時の「スマートバレー公社」に相当する機能を果たすことを使命としています。

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