エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

EUの新たな経済戦略とグリーン経済成長

2010-04-11 19:01:24 | Weblog
 欧州委員会は3月3日、今後10年間のEU経済の道筋を示す新たな経済戦略「欧州2020(Europe 2020)」<こちらをご覧ください>を提案しました。
 低炭素で省資源的な経済への移行により、原油や天然ガスの輸入を20年までに600億ユーロ削減することを目標として掲げています。このため産業政策としては、グリーン経済成長のための産業政策を前面に打ち出し、金融危機後の世界でのEU産業基盤の競争力強化を支援すること、および起業精神を奨励するとともに、新しい技能を開発し、数百万人の新たな雇用を創出するとしていることが特徴です。
 「欧州2020」は、10年までの経済戦略である「リスボン戦略」の後継として、20年までの欧州の市場経済のビジョンを示したものです。相互に依存し強化し合う以下の3つの原動力(優先分野)、5つの数値目標、7つの最重要事項(旗艦イニシアチブ)で構成されています <http://ec.europa.eu/eu2020/pdf/annex1.pdf> 。
 3つの原動力(優先分野)は、次の通りです。
・賢い成長(知識、イノベーション、教育、デジタル社会の促進)
・持続可能な成長(低炭素、省資源で競争力のある経済の促進)
・包摂的成長(社会的・地域的結束を導く高雇用経済の促進)

 これらを推進するために、EUレベルで5つの具体的な数値目標が進捗の尺度として用いられ、加盟国はこれらの目標を反映した国内目標の設定が求められます。
・20歳から64歳までの人口の75%が雇用される(現行は69%)。
・EUのGDPの3%を研究開発(R&D)に投資する。
・気候変動、エネルギーに関するいわゆる「3つの20%」の目標を達成する。
・学業放棄の割合を10%以下に引き下げ、少なくとも40%の若者が学位を取得する。
・貧困の危険に直面する人の数を2,000万人削減する。

 欧州委はさらに、これら目標を実現するために、7つの最重要事項を提示しています。これらの実施は共通の優先課題で、EU機関、加盟各国、地方自治体といったあらゆるレベルで行動が取られなければなりません。
・イノベーションの統合(Innovation Union):R&Dやイノベーション政策に照準を合わせ、製品開発のために、科学と市場間に存在する隔たりを狭める。例えば、欧州共同体特許によって、企業は毎年2億8,900万ユーロ(1ユーロ=約124円)の節約が可能となる。
・若者の移動促進(Youth on the move):欧州の高等教育システムの質や国際的魅力を強化する。具体的行動として、加盟国の求人に欧州中でもっとアクセスしやすくし、専門資格や経験が適切に承認されるようにすることが挙げられる。
・欧州のデジタル課題(A digital agenda for Europe):超高速インターネットをベースとする単一デジタル市場から、持続可能な経済的、社会的恩恵を引き出す。すべてのEU市民が13年までに高速インターネットにアクセスできるようにする。
・欧州での資源の効率的な利用(Resource efficient Europe):低炭素で省資源的な経済への移行を支援する。欧州は、エネルギーの生産、消費、エネルギー効率に関する20年の目標を達成しなくてはならない。目標達成により、原油や天然ガスの輸入を20年までに600億ユーロ削減する。
・グローバル時代に見合った産業政策(An industrial policy for the globalization era):グリーン経済成長のための産業政策として、金融危機後の世界でのEU産業基盤の競争力強化を支援する。起業精神を奨励するとともに、新しい技能を開発し、数百万人の新たな雇用を創出する。
・新たな技術・職業に向けた課題(An agenda for new skills and jobs):ベビーブーム世代が退職する時期に当たって、雇用率を改善し、欧州の社会モデルの持続可能性を実現する観点で、雇用市場の現代化に適した環境を作り出す。
・欧州での貧困対策プラットフォーム(European platform against poverty):貧困や社会的疎外という状況にある人々を支援するとともに、これらの人々が積極的に社会参加できるようにすることで、経済的、社会的、地域的結束を確保する。

 「リスボン戦略」の目標を達成することができなかった反省から、欧州委は新しい戦略では報告、モニタリング制度を設けることを提案しています。
 加盟各国は、EUレベルでのガイドラインに基づき、構造改革を目指す経済政策を策定。安定・成長協定(SGP)に基づく財政状況の報告とともに、毎年進捗状況を報告します。報告を受け、欧州委が進捗を検討・評価します。別の枠組みを維持しつつ、財政措置を報告するSGPと同時に報告を求めるのは、構造改革と財政政策とが密接に関連しているとの考えからです。

 「欧州2020」については今後3月25、26日の欧州理事会(EU首脳会議)で目標と大枠のアプローチについて議論します。その上で、欧州議会との議論も経て、6月のEU首脳会議で新戦略を承認する予定です。その後、10月以降に各国別の構造改革計画を提示することになっています。

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