団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

インディペンデントに暮らす---未来バンク事業組合 理事長  田中 優

2013-06-10 07:12:57 | 日記

<オフグリッド>
電気の話を調べると、電気の自給は困難と書いてある。「将来の
課題だ」とか、「今はまだ開発されていない」とか。しかし現実
にあるのだ。私の家では80日間、中国電力の電気を一切買わずに
過ごし、先日万が一のための発電機を買ったので、ついに中国電
力の送電線を切断した。電力会社からは「建て替え、引っ越しで
すか?」と聞かれたが、「いえ、電気は自給したので不要になり
ました」と答えた。しかし電力会社は聞いてくる。
「電気は売電されているのですか」
「いいえ、自給です」
「太陽光発電のインバーターは電力会社からの電気がないと動か
ないはずですが」
「いいえ、すでに配電線は切断しています」
「本当にそんなことができるのですか? 確認のため、そのメー
カーに問い合わせをさせてください」
「どうぞ。神戸の『慧通信技術工業』の作った『パーソナルエナ
ジー』という装置です」
「確認してから送電を切らせていただきます」
 そして慧通信技術工業に電話がいった。事務員が電話に出て答
える。
「本当に送電線を切っても大丈夫なのでしょうか」
「大丈夫です」
ついに5月20日、中国電力のメーターが撤去された。これで我が
家は晴れて原子力も化石燃料を使った発電所ともおさらばした。
我が家の太陽光発電とバッテリー、電気をコントロールするパー
ソナルエナジーだけで電気をまかなう状態になった。

<なぜ売電しないのか>
売電した方が儲かる。太陽光発電の電気は今年4月までは42円/
kwhで、4月からは38円/kwhで売ることができる。買うときが25円
程度だから破格の高さだ。太陽光発電の設置やバッテリーの導入
にも補助金が出ることもある。ただし電力会社の送電線につないだ
ときだけだ。自給するための設置に補助金は出ない。その結果、
売電した方が利益になる。
しかし我が家は売電しない。その理由は電力会社の懐柔策に取り
込まれたくなかったからだ。太陽光発電で作った電気は確かに売れ
る。しかしその電気が使われているとは限らない。電力会社の送電
線は、上から下に電気を配るように作られているものの、下から上
に流れるようには作られていないからだ。家に届く100V(実際は107V
程度)の配電線は、近隣の4-5軒をまとめたトランスから届けら
れる。その4-5軒の範囲で電気が消費されなければ、電気はその
ままロスされる。機械的にはトランスの先の6600Vの配電線に流れる
はずなのだが、そうなったときには太陽光発電の側に設置されたコ
ンバーターが電気を止める設計になっている。なぜなら太陽光の電
気が逆流して上意下達の電気が届かなくなっていた場合、急に日が
陰って太陽光発電の電気が減少すると、周波数が伸びてしまって機
械に悪影響を及ぼす危険があるためだ。
それでも太陽光発電につけた売電メーターは回るから利益にはなる。
しかし使えてはいないのだ。その極端な例が北海道で起きている。
アラブの大富豪がそこに投資して巨大なメガソーラーと呼ばれる太
陽光発電を設置する。本来なら巨大だから北海道電力は接続を拒否
することができる。しかしアラブの投資家は、そのメガソーラーを
分譲する。電力会社が拒否できない50kw未満のパネルごとに投資家
に販売するのだ。それを日本人が買い、アラブの投資家はそのまま
売り抜けて利益を得る。そして買い取った日本の投資家は少しずつ
毎年の利益を得る。
 ところが北海道は広大だ。そのメガソーラーから電線が引かれて
いく。約30メートルに一本の電柱が立ち、メガソーラーの電気が送
られていく。ところが電信柱ごとに電圧がわずかに落ちるので少し
上げてやる必要がある。約1%だけそこでロスする。300メートル
で10本、3000メートルで100本、1%×100=100%になる。使えない
発電なのに投資家は利益を得て、電気はロスして消える。この費用
は「再生可能エネルギー促進賦課金」として他の客の電気料金に上
乗せされ、電力会社自身の腹は痛まない。
 このどこが環境に良い発電なのか。むしろ発電機を作った分だけ
社会的損失を作っているだけだ。今や自然エネルギーは「投資の道
具だ」と理解した方がいい。FIT(Feed in tarif=固定買取制
度)は制度の欠陥のために、ただ投資家に利益を与える役立たない
ものになっているのだ。だからぼく自身は売電せずに、費用的には
損になると知りながら、あえてオフグリッド(送電線から離れるこ
と)を選び、自給することにしたのだ。

<自給する心地よさ>
 晴れの日は電気があり余る。おかげで我が家には逆に電化製品
が増えてきた。電気草刈り機、電動ノコギリ、なんでも電気を使
ってする。それでも晴れの日の電気は使いきれない。その電気を
使って庭にあった井戸を復活させた。続いて水道管もオフグリッ
ドした。もはや水道は使っていない。そこには殺菌のために銀を
使った浄水器を設置している。おかげで我が家の風呂は、ほとん
ど天然温泉のようだ。塩素が全く入っていない。
次いで下水道料金も最低額になった。
今度は電気自動車を入れたい。今の軽自動車も21km/リットルも
走るからそれでも十分だが、晴れた日の電気を使えばガソリン自
体を使う必要がなくなる。ペレットストーブだから近くの木材カ
スを使うだけで石油は使わない。さらに太陽温水器を入れれば、
我が家の二酸化炭素排出量はほとんどなくなる。今現実に、我が
家の二酸化炭素排出量は、一般家庭の64%マイナスだ。温暖化に
も原発にも、石油戦争にも関係しない暮らしまで、あと少しだ。
 ただし雨が三日続くと電気が足りなくなる。そこで梅雨に備え
て導入したのがプロパンガスの発電機だ。プロパンの発電機は開
発されたばかりで値段が高いが、もしガソリンの発電機を購入す
るならほんの3-5万円で購入できる。なんと安いのだろうか。
高性能パソコンを買うつもりなら数台購入することができる。
そして万が一の場合にも対策したので電力会社の送電線から離れ
たのだ。

<生産の道具を>

 今、経済はスタグフレーションに向かっている。経済成長が
ないのに消費を増やしてインフレを招きながら、収入は増えな
いからだ。そういう時期には消費をせずに生産するのがいい。
田舎に移り住んで違いに気づいた。東京では広告が周囲一面に
あって、絶えず消費意欲が刺激される。田舎にはそんな広告は
なく、消費材もあまり売っていない。田舎で人気がある店舗は
圧倒的にホームセンターなのだ。DIY(Do it Yourself)の
店にはトマトは売っていない。しかしトマトの苗なら売ってい
る。消費材ではなく、生産材が売られているのだ。
 そして長年不思議だった疑問が解決した。これほど労働生産
性が向上して、数十人で数十時間かけて作っていたものが、数
人で数分で作れるようになったのに、私たちの労働時間も強度
も緩和されていかない。いったいその分はどこに消えたのかと
いう疑問だ。
 生産の道具を買うようになって気づいた。その分は生産材の
価格低下につながっていたのだ。だから自給に向けた生産材を
買い、さまざまなインフラから離れて暮らすことで、生活は楽
になり得る。収入を増やそうとするより、支出を減らす方に向
かっていく方がずっと簡単だったのだ。

<パーソナルエナジー>
 電気の自給を実現させてくれたのが「パーソナルエナジー」
という装置だった。これは発電プラントそのものだ。直流・交
流の電気を自在にロスなく蓄え、とんでもない長寿命を実現し
ている。充電はバケツで流し込んだようにバッテリーに入り、
使うときに急な電力消費の伸びにも素直に対応する。どこの本
にも「将来の課題」と書かれているこの装置を現実に制作した
のが慧通信の粟田さんだ。
 その粟田さんを未来バンクの総会に招くことを予定している。
これはぼくではなく、木村理事からの希望だ。6月初めにはほ
ぼ30世帯分の電気を太陽光発電だけで自立してまかない、愛知
県豊田市で「橋の下音楽祭」を実行する。完全オフグリッド、
太陽光発電の電気だけで、ノイズのない電気を、電気出力の急
上昇に対応できる装置でまかなう世界初のイベントに挑む。そ
の粟田さんに来てもらって、新たな未来を構想しよう。
 未来バンクはその名に恥じぬ活動を支えていきたい。会場の
都合で入りきれないかもしれないが、興味のある人はぜひご参
加を。必ず総会用返信ハガキを使って、事前に出欠を知らせて
ください。総会でみなさんにお会いするのを楽しみにしていま
す。


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1 コメント

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★感謝★ (あおしず)
2013-06-14 09:45:49
未来バンクの出資者です。
二万円だけだけど...

今回送られてきたニュースペーパを文字起こししようとしていたので、感謝です。

リンクを貼らせていただきますので、紹介させていただいてよろしいでしょうか
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