ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「ディア・ライフ」

2014-03-10 23:25:49 | 
「ディア・ライフ」  アリス・マンロー  新潮社 2013.12.10
   訳:小竹由美子

 2013年ノーベル文学賞受賞者の最新・最後の短編集。
 マンローは1931年、オンタリオ州生まれ。ブッカー賞も受賞しており、引退を表明しているとか。

 初めて彼女の作品を読んだが、一つ一つ味わい深く、余韻があり、
 1日に1作品ずつ・・・
 平凡な人々を描いているのだが、人生の深淵を覗いているような・・・

 キスしようかと迷ったけれどしなかった、と言い、家まで送ってくれたジャーナリストに心を奪われ、
 幼子を連れてトロントをめざす女性詩人。(日本に届く)
 片田舎の病院に新米教師として赴任した女の、ベテラン医師との婚約の顛末。(アムンゼン)
 父親が雇った既婚の建築家と深い仲になった娘と、その後の長い歳月。(コリー)
 第二次大戦から帰還した若い兵士が、列車から飛び降りて始めた新しい暮らし。(列車)
 など、10篇。
 そして作家自身が〈フィナーレ〉と銘打ち、実人生を語る作品と位置づける
 「目」「夜」「声」「ディア・ライフ」の四篇。

 ガーディアン紙が評するように、

  登場人物には物語の始まるまえから実人生があり、物語が終わったあとも生きつづけると思わされ、
  ひとつひとつの物語を心に落ち着かせる必要がある。
 
 ワシントン・ポストの評も、わが意を得たりという感じ。

  ほんのちょっとしたそぶりや語調の変化のなかに、これほど巧みに愛の愚かしさ、
  人生の混乱や挫折、隠れた残酷さや裏切りを描き出せる作家はほかにいない。 

 「夜」より

  人間というもは抱かないほうがいい考えを抱く。生きていくうえでじはそういうことが起こるものなのだ。
  今日、親としてじゅうぶん長く生きていれば、あまりによくわかっている間違いとともに、
  あえてわかろうとしなかった過ちを犯していることにも気づくだろう。

 「Dear Life」のラスト

  何かについて、とても許せることではないとか、けっして自分を許せないとか、わたしたちは言う。
  でもわたしたちは許すのだ--いつだって許すのだ。

 ノーベル賞受賞理由は「短編の名手であること」
 パーキンソン病に苦しむ母の代わりに12歳のときから家事を似ない、若くして結婚して
 22歳で母となり、4人の子を産み育て(一人は生後すぐに亡くしている)、子どもたちを昼寝させて
 いるあいだにタイプライターに向かい、掃除選択をしながら物語の構想を練り、さまざまな世代の
 さまざまな女たちの人生を主な素材として、ひたすら短篇という形式を磨き上げてきたと
 あとがきにあった。

充実した読後感♪
コメント
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