「風とにわか雨と花」 小路幸也 キノブックス 2017.5.26
僕・天水(あまみ)が9歳、風花が12歳になった四月に
お父さんとお母さんはリコンした。
どうしてかって訊いたら
「今は説明してもわからないと思うので、言わない」ってお母さんは言ったーー
専業作家を目指す父、仕事に復帰した母、小学生の姉と弟。
夏休み、子どもたちは海辺の町で暮らす父と過ごすことにした。
父は娘に言う。
自分の我が儘でリコンしたのだと。そして続ける。
「我儘を貫き通すってことは、その我儘の結果でおこったことに対して、何もかも自分で責任を取るってことなんだ」
「なにに責任を取ったの?」
「お金だ。お前たちが大人になるまでの間にかかるお金(略)」
「気持ちは?」
「気持ちには、責任はとれないんだ」
「気持ちは、心だ。そして心には形がない。形のないものは直せない。心に思うことには、形のないものには誰も責任を取ることはできない。(略)それが、我儘っていうものだからだ。だから、その代わりに、我儘以外の心を全部お母さんや風花や天水にあげることにしている」
「それは、なに?」
「真心だ」
それぞれのスタンス、言葉で4人の思いが語られる。
寂しいけど、嬉しい。
悲しいけど、楽しい。
そんな風に思う母・恵里佳。
専門的&好きな仕事に復帰したことで、気持ちにもゆとりが感じられる。
お話としては心地好かったけど、
現実だと、こんなリコンはレア物だろうな……
「紙コップのオリオン」 市川朔久子 講談社 2013.8.19
中学2年生の橘論里は、実母と継父、妹の有里と暮らしている。
ある日、学校から帰ると、母親が書き置きを残していなくなっていた。
一方、学校では、創立20周年記念行事の実行委員をやることに。
記念行事は、論里が思い付いたキャンドルナイト。
実行委員になったのも、何か提案することになったのも、
たまたま落とした消しゴムを拾おうとして、何気に手が上がってしまったから、
というのが、いかにもありそうで面白かった。
母は、一見お気楽そうに旅を続け、旅先で働いたりしている。
母や父や妹、ともに実行委員となったクラスメートや先輩たち……
論里は人と人との「つながり」を考えはじめる。
父の姉、みのりさんが言う。
「迷惑かけずに存在できるものなんか、どこにもないのよ」
「素直に『助けて』って言える人間のほうが、ほんとは強いの」