「定年オヤジ改造計画」 垣谷美雨 祥伝社 H.30.2.20
夫源病かぁ……!
黙る妻、呆れる娘、耐える嫁 VS 鈍感すぎる男たち!
女は生まれつき母性を持っている?
家事育児は女の仕事?
都合のいい常識に毒された男たちこそ、読むべし!
大手企業を定年退職した庄司常雄。
夢にまで見た定年生活のはずが、良妻賢母だった妻は「夫源病」を患い、
娘からは「アンタ」呼ばわり。
気が付けば、暇と孤独だけが友達に。
そんなある日、息子夫婦から孫二人の保育園のお迎えを頼まれて……。
崖っぷち定年オヤジ、人世初の子守を通じて離婚回避&家族再生はできるのか。
p54、娘との会話ーー
「女は男の気持ちを理解しようと努めるけど、男は女の気持ちを考えようともしないんだよ」
「(略)男に女の気持ちなんてわかるわけないだろ」
「だよねえ。女を別の生き物だと思ってるんだもんねえ。男も女も同じ人間だってことをわかってるのは女だけなんだよねえ」
P82、友人の荒木が言う。
「妻は夫といっしょにいることがストレスなんだ。だが男は独りでいることがストレスになる」
P162、兄が言う。
「たぶん、大正時代からじゃねえか」
「子育ての全責任を母親になすりつけるようになったのは」
「ちょうど日本に資本主義が導入された頃。それまでは、日本人の八割が農業やってたけど、男が勤め人になって女が家事育児に専念するようになったのさ。そういうのが会社側には好都合だったんだ」
姉たちが続ける。
「国の政策にまんまと引っかかったんだべ。年寄りと赤ん坊の世話を女にさせてりゃあ、福祉に回す金を削れるから」
「そったらことを母性愛だとか家族愛って言葉で国は庶民さ騙そうとしてたのさ」
P205、妻と上手くいかなくなった荒木が言う。
「話の途中で女が急に黙ったとしたら、それは納得したからじゃなくて諦めたんだってさ」
「これ以上、亭主と話し合っても何の進展もないと見限るのさ」
(略)
荒木「男たるもの、そんなに信念を曲げられないよ」
常雄「だよな、だから女は諦めるのかな」
荒木「何を諦めるんだ?」
常雄「男をだよ、夫をだよ。だから何もはなさなくなるんだ。何を言っても変わらないし、そもそも聞く耳を持ってない人間なんかに訴えても時間と労力の無駄だからな。腹が立つだけで嫌になる」
孫の世話をせざるを得なくなって、ママたちの実情も知ったり、
常雄は少しずつ、考えを改めるようになる。
ーー自分は、今では一介のジジイなのだった。東北大出の大会社の部長だった庄司常雄ではなくて、葵と漣のジイジにすぎないのだ。
バアバと呼ばれるようになった女は、どこから見たって、とっくに女でないと思っていたが、ジイジもそうだとは知らなかった。女はババアになるが、男はいつまでも男だと思っていたらしい。どうしめ何でもかんでも自分の都合のいいように考えてしまうんだろう。ーー
考えを改める前の常雄は極論だと思いたいが、
根底で似たような考えを持っている男性が多数派だろう。
社会に培われた、若しくは社会が容認するような
ヘンテコな信念やプライドを持つ男性も多いと思う。
年配者に限らず、若い人々にも……。