「風神 風の章」 柳広司 講談社 2017.8.29
扇屋「俵屋」の養子となった伊年は、醍醐の花見や、出雲阿国の舞台、また南蛮貿易で輸入された数々の品から意匠を貪っていた。
俵屋の扇は日に日に評判を上げ、伊年は「平家納経」の修理を任される。
万能の文化人・本阿弥光悦が版下文字を書く「嵯峨本」「鶴下柄三十六歌仙和歌巻」下絵で天才との共同作業を経て、伊年の筆はますます冴える。
絵の才能は素晴らしいが、
経営者としては、"ぼんくら" だったという描き方。
取り込もうとする家康の思惑を逃れるために
洛外に移転することにした光悦の
共に移らないかという誘いを断ったところで、
この巻は終わる。
このあと、伊年=宗達は、どう羽ばたくのか…
後編が楽しみだ。
「風神雷神 雷の章」 柳広司 2017.8.29
妻を娶り、二人の子をなした宗達は、
名門公卿の烏丸光広に依頼され、
養源院の唐獅子図・白象図、相国寺の細道図屏風を製作する。
法橋(ほっきょう)の位を与えられ禁中の名品を模写し、古今東西のあらゆる技法を学んだ宗達。
盟友が次々に逝くなか、国宝・関屋澪標図屏風、
重要文化財・舞楽図屏風などを描く。
亡くなったとき、誰の依頼でもないらしい
風神雷神図屏風があったーー
何をもってオリジナリティとするか?
このやっかいな問題を、烏丸光広は、
ーーどーでもよろしおす。
の一言で切って捨てた。
ーー絵には、ええ絵とつまらん絵があるだけどす。
"絵に付随する権威をみるのではなく、絵そのものを見る"
ストーリー展開からちょっと逸れてるけど
成る程と頷けた部分をちょっと引用する。
紫衣事件が"事件"と呼ばれるのは、幕府法度が天皇勅許に優越する事実を白日のもとに晒け出したからだ。その意味では、第二次大戦後、日米安保が日本国憲法に優越する現実を暴露した砂川事件に似ている。
後水尾天皇は徳川和子との間に生まれた興子内親王に譲位したのだが……
これに対して幕府がいやな顔をしたのはなぜか。
興子内親王が女性であったからーーとしか考えられない。
ひとえに、江戸幕府の都合である。あるいは「武家社会」の都合というべきか。
武家社会は男系であることを重要視すり。そもそも領地を拡大し、天下を統一、多くの人々を支配したいという欲望が男性的なものだ。
江戸幕府が女性天皇の誕生を嫌がったのは、
「武断政治」
といういさましい旗を掲げて天下統一をはたしたかれらが、武家社会の価値基準を世の中に徹底させようとしたからだ。
と作者が書いている流れは、今に至るも根強い。
宗達の絵の何点かは、実物を見たことがある。
特に好みではないけど、
何となく素晴らしさがわかるていどだった (^^;
改めてググって、本文に添って眺めてみた。
今度は違う視点で見られるかなぁ……