ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「花散る里の病棟」

2024-08-31 08:07:15 | 

 

「花散る里の病棟」 帚木蓬生 新潮社 2022.4.25

 

九州で四代百年続く「医者の家」を描く。

大正の寄生虫、昭和の戦場、平成の高齢化、令和のコロナ禍……

 

2015年、二年間アメリカに留学中、デイブが言った。

「隣の国のキューバは貧乏だとみんな軽蔑しているけど、医療費は全国民が無料だよ。そしてあの国の最大の輸出産業は医療だ。(略)国民はひとり残らず、医療の恩恵を受けられる。貧乏だけどそんな国と、この国を比べて、どちらが本来の国だと思う?」

「(この国では)金持ちの患者しか、手術は受けられない」

ーー医療を諦めた夫妻を見ながらーー

「歩く死者(デッド・マン・ウォーキング)と、その妻だ」

 

太平洋戦争のルソン島でーー

歩行困難な患者は、適当に処置せよという命令が下った。

適当な処置とは、いわば安楽死である。

 

2020年、大阪府知事が大阪万博でカジノを誘致しようとした。

その二年ほど前の、ある精神科医の推測によると、首相がカジノ解禁を思いついたのは、トランプ大統領の要求に応じたから。

大統領の財政的な後ろ楯は、かつて米国東海岸で同様にカジノホテルを経営していた盟友のシェルドン・アデルソン氏であり、いまやラスベガスやマカオ、シンガポールでカジノを経営するカジノ王。この盟友が熱望していたのが、日本への進出で、特に大阪を狙っていた。

アデルソン氏が東海岸でのカジノホテルが不人気になり、破産寸前だったとき、資金提供をしたのがソフトバンクの孫会長だという。

 

1990年までは、日本はワクチン先進国で、水痘や日本脳炎、百日咳などの予防ワクチンを米国や中国に技術供与していた。しかしその後、ワクチンの副反応を巡って各地で集団訴訟が起きる。1992年、東京高裁が、予防接種による事故の発生を予防しなかったとして、国と厚生省の過失責任を認める。これによって、国も企業も、ワクチン開発には消極的になった。ワクチン製造には、基礎研究から臨床試験まで数年、長ければ十年かかる。日本は完全にワクチン後進国になりさがっていた。

 

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「幾世の鈴」

2024-08-28 08:52:47 | 

 

「幾世の鈴」 髙田郁 角川春樹事務所 2024.3.8

 

あきない世傳 金と銀 特別巻下。

 

明和九年(1772年)、「行人坂の大火」の後の五鈴屋ゆかりの人々の物語。

八代目店主周助の暖簾を巡る迷いと決断を描く「暖簾」。

江戸に留まり、小間物商「菊栄」店主として新たな流行りを生み出すべく精進を重ねる菊栄の「菊日和」。

姉への嫉妬や憎しみに囚われ続ける結が、苦悩の果てに漸く辿り着く「行合の空」。

還暦を迎えた幸が、九代目店主で夫の賢輔とともに、五鈴屋の暖簾をどう守り、その商道を後世にどう残すのかを熟考し、決意する「幾世の」。

初代徳兵衛の創業から百年を越え、次の百年へーー。

 

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「リラの花咲くけものみち」

2024-08-24 12:27:10 | 

 

「リラの花咲くけものみち」 藤岡陽子 光文社 2023.7.30

 

幼い頃に母を亡くし、父が再婚した継母とうまくいかず不登校になった岸本聡里。

愛犬だけが心の支えだった聡里は、祖母に引き取られペットたちと暮らすうち、獣医師を志すように。

北海道の大学獣医学部に入学すると慣れない寮生活が始まった。 面倒見のよい先輩、気難しいクラスメート、志をともにする同級生らに囲まれ、学業や動物病院でのアルバイトに奮闘する。

伴侶動物の専門医を目指していたが、馬や牛など経済動物の医師のあり方を目の当たりにし、「生きる」について考えさせられるーー

 

専門用語がバンバンでてきた~

 

 絶対にしなくてはいけないことなんて、この世には一つもない。できないならできないと素直に告げて、自分のできることをすればいい。

 

 逃げるのは悪いことじゃない。(略)逃げた先で踏ん張ればいいんだ。いま辛いこたから逃げたとしても、時間を経て変わることはでしる。

 

 

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「白鳥とコウモリ」

2024-08-16 09:58:43 | 

 

「白鳥とコウモリ」 東野圭吾 幻冬舎 2021.4.5

 

「加害者側と被害者側、立場上は的同士だか、目的は同じ。ならば手を組もうと思っても不思議じゃない」

「光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ」

 

さすが東野圭吾さん、

二転三転のストーリー展開に引き込まれて、522ページを一気読み。

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「わたしたちに翼はいらない」

2024-08-01 21:51:11 | 

 

「わたしたちに翼はいらない」 寺地はるな 新潮社 2023.8.20

 

昨年9月にリクエストした本。

 

同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている3人。

 

4歳の娘を育てるシングルマザー、朱音。

朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦、莉子。

マンション管理会社勤務の独身、園田。

 

いじめ、ママ友マウント、モラハラ夫、母親の支配……

 

 考えるな・なにも・考えるな。

 下を向いて考えごとしてたって、友だちなんかできないんだから。

 

 だいじなのは、自分の頭で考えない、ということ。だって考えると、女は重たくなる。重たい女は誰からも好かれない。

 

 知っていることでも知らないふりをするのは処世術であると教わってきた。

 

 

歪んだ人間関係……

それでも、なんとかなる、かなぁ……

途中までじれったかったが、軽いラストに救われた。

 

  (読んだのは5月17日)

 

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