「もう別れてもいいですか」 垣谷美雨 中央公論新社 2022.1.20
夫は暴力も振るわないし、今のところは浮気も新たなキャッシングも発覚していない。
そんな状態で離婚したいと思うなんて、世間の常識から外れているのではないかと思い、ずっと苛まれてきたのだが、今まさにその迷いが吹っ切れた思いだった。
だって、一緒にいるだけで息がちゃんと吸えなくなる
「女には序列があるじゃろ。一番上が結婚して子供のおる女、離婚した女はそれより下で、独身のままの女はいっちゃん下だわ」
男も女も若いときは寂しがり屋だが、女は結婚して子供ができたら、さらに孤独に陥る。誰にも甘えられない生活、家事も育児も初めての経験なのに夫にも頼れない日々を孤軍奮闘で乗り切らなければならない。
夫がいても、意思の疎通がなければ一人暮らしの何倍も孤独で悲しい。そんな救いようのない寂しさを引きずったまま年齢を重ねていき、いつの間にか孤独に飼い馴らされて、そのうち平気になっていく。そして、気づいたときには、寂しがり屋でないどころか、一人でいるときが最も気持ちが安らぐようになっている。その境地に達した女は、もう二度と夫に期待しない。
「女はいったん嫌いになると虫酸が走るほど嫌いになるから、修復は不可能だよ」
「でも現実は、生理的嫌悪感を抱えたまま死ぬまで添い遂げる女もたくさんいるんだよ。なんせ食べていけないとなれば、離婚を諦めるしかないんだから」
同意するところが多々ある……
中高年以上の男性にこそ、読んでほしいものだ。