「ツバキ文具店」 小川糸 幻冬舎 2016.4.20
鎌倉宮の近くにツバキ文具店はある。
この1月に訪れた鎌倉を思い出した。
行く前にこの本を読んでいたら、
鳩子が歩いたあたりを散歩したかもしれない。
代筆屋でもある鳩子に様々な依頼がくる。
手書きで仕上げた手紙が、随所にあった。
それぞれの文面の趣が異なること以上に、
文字も違っていることに見入った。
手紙 : 萱谷恵子
とあるから、全部、この方が書いたのだろう。
内容と文字のマッチングが素敵だ。
お悔やみの墨の色を薄くするのは、
悲しみのあまり硯に涙が落ちて薄まったため、
という意味合い。
汚文字(おもじ)、
という言葉には初めてお目にかかった。
食べ物についてーー。
春苦み、夏は酢の物、秋辛み、冬は油と
心して食え
P223
よく考えると、自分で自分の姿は見えないのだ。(略)いつだって、自分よりも周りの人の方がたくさん私を見ている。だから、自分はこうだと思っていても、もしかしたら他人は、もっと別の私を見出だしているのかもしれない。
モリシゲさんは言う。
「後悔しないなんて、ありえないんです。ああしてあげればよかった、あの時あんなことを言わなければよかった、ってね。(略)
でもある日気づいたんですよ。
失くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいいんだって」
「誰かにおんぶしてもらったなら、今度は誰かをおんぶしてあげればいい
それだけで十分ですよ」
読み終えて、はんなりふんわり気分。