ある記憶

遥か遠くにいってしまった記憶たち

あるおちびちゃんの思い出パート2

2008-01-27 00:54:10 | 
このブログをしたためて3ヶ月になろうとしている。こんな日記でも、読者はだいぶ増え、貴重なご意見やアドバイスも戴いております。
皆さん。どうも有難うございます。
お気づきのことなどあればご自由にお書きくださって結構です。

「あるおちびちゃんの思い出」のH子のことを、もう少し書こうかと想います。

H子が泣いたのを一度だけ見たことがある。子供のようにわんわん泣いた。

冬休みで大学は休みであったが、寄宿舎は、半分くらいが帰省もせず越年するのが常態であった。
例に漏れず、H子も帰ることなく、寄宿舎にたむろすることが多かった。

そんなある日のことである。僕は、駐車場の管理人のバイトが終わり寄宿舎へと帰った。もう夜の11時を過ていたと思う。
二人部屋の構造だが僕はその頃、一人でその部屋を使っていた。
だから、僕がいなければ電気も消えて誰もいるはずのない部屋だ。

部屋に入ると電気がついている。バイクのメットを棚に置きよくよく見ると、僕の万年床のその布団が盛り上がっている。
「ん・・!?」誰か寝ている・・。同級の誰かが酔っ払って寝てるのか??
そう思ったが、靴を見ると明らかに女ものだ。
そっと布団をあけてのぞいて見ると、そこには、幼げな顔をして眠りに付くH子がいた。
あれ?今日はミィーティングの予定あったっけ・・。僕は、あわてて手帳を確認したが、そんな予定など無い。
どうしたものかとしばし困惑していると、H子が静かに目を覚ました。

「●●先輩、お帰りなさい」「眠っちゃったみたい・・・」

眠っちゃったもなにも、しっかり布団に入っているわけで、確信犯と思えた。

「どうした。何かあったのか?」ぶっきらぼうに聞くしかない。

「何にもないの・・・」とH子。

「とにかく、上着を着な。コーヒーでも入れよう」

「先輩、お酒買ってきたから」

ベットの横を見ると確かに、買い物袋があり、中に「角瓶」とツマミが入っていた。
いろいろとあるのはわかっていたが、どうすることも出来ない。
僕は、キャップでもあり、彼女を指導する立場でもあったので、分をわきまえつつ、H子の酒に付き合うことにした。
今日から明日にかけて、特別何か予定が入っているわけでもなかったし。

H子の淋しい気持ちはわかっていた。僕に対する切ない気持ちもなんとなく感じていた。
H子の事を、僕は嫌いであろうはずがない。鼻っ柱は強いが、根は優しくいい女だと思っていた。今で言えば「加藤あい」に似ていたし、おちびさんのくせに妙にグラマーであったし。
けれども、僕はどうしてもH子を選べないのである。そんな理由がいくつかあった。

「じゃあ氷と水もってくるから少し待ってな」

僕は、グラスを2つ取り出し氷をいれH子がもってきたウイスキーを注いだ。

「あたしはロックでいいですから」
上着を羽織ったH子は、何か潤んだ目で僕を見つめながらそう言う。

とにかく僕はウイスキーを飲み、当たり障りのない話をした。活動のこと、サークルやクラスの学生たちのこと、来年のことなど、次々と。
だいぶ飲み進んだ頃、H子は話し始めた。

「先輩はこれからどうするつもりなんですか」
「いまのままでいいんですか」

そして、

「先輩はあたしのことどう思ってるんですか・・・」

「  ・・・・  」

沈黙が続いた。強く抱きしめてあげたかった。
H子の冷え切った心と体を温めてあげたかった。
H子は、そういう覚悟で来ていたのだと思った。

しかし、組織の「戒律」を、僕は優先してしまった。

H子は、泣いた。堰を切ったようにわんわん泣きじゃくった。

H子が泣き止み、再び眠りにつくまで、僕は一晩中つきあってやった。
H子が寝付いた頃、僕は、別の空き部屋に行って眠ることにした。もう朝方で、雪がチラチラ降り始めている。
どうしたものか・・・そう考える一方、あの場でH子を抱いていたらどうなっていただろうなどと考えた。
そうしている内、強い睡魔に襲われいつの間にか僕も眠りについた。

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