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キリシタン用語(8)「エケレシア、エキレンジャ、イグレジャ」

2017-09-11 14:52:32 | キリシタン用語
 現在、キリスト教徒が宗教行事のために集まるところは教会である。実は、「教会」という言葉はキリスト教だけでなく、どの宗教に対しても用いることができるのである。とはいっても、仏教は「お寺」で、神道は「神社(お宮)」が一般的であろう。イスラム教は「モスク」という言葉がだいぶ広まっていると思う。「教会」というと、天理教などもあるが、やはりキリスト教のイメージが強いと思う。
 さて、キリスト教伝来(1549年)からキリスト教禁止令(1612年、1613年)までの間に教会のようなものは建てられている。
 
 【リスボン美術館蔵 作者不詳 南蛮屏風(部分)。ウィキペディア「南蛮寺」より】
 ウィキペディア「南蛮寺」によると、それらは当時の日本人によって「南蛮寺」「南蛮堂」、また(デウスから)「だいうす寺」「だいうす堂」などと呼ばれた、とのことである。
 このころはまだ西洋風の教会はなかったようで、現存する最古のキリスト教建築物は大浦天主堂である。
 中国には「清真寺」と呼ばれるイスラム寺院がある。いわゆるモスク風の寺院ではなく、中国風の建物である。
 
 【「清真寺」の画像より】
 これにならって、日本でも京都あたりにかつての南蛮寺風のカトリック教会ができないものかと期待する。いい観光名所になると思うのだが。
 ところで、「教会」という言葉がいつごろから存在していたのかは、わからない。キリシタン用語には「教会」を表す「エケレシア」という言葉がある。「エキレンジャ」、「イグレジャ」という語形もある。キリシタンたちは「南蛮寺」などではなく、これらの言葉を使っていたのだろう。
 「エケレシア」はギリシャ語「エクレシア(εκκλησία)」に由来するそうで、ラテン語では ecclesia と書かれる。これがスペイン語では iglesia になり、ポルトガル語では igreja となった。
 キリシタン用語の「エケレシア」はラテン語に、「イグレジャ」はポルトガル語に由来するようだ。「エキレンジャ」はポルトガル語由来のようだが、たぶん、これは「イグレジャ」がなまったものではないだろうか。
 英語では全然、形が違う church であるが、「聖職者」を意味する ecclesiastic という語に ecclesia が入り込んでいる。ecclesiastic とは、いかにも小難しそうな言葉ではあるが、スペイン語の iglesia を知っていれば、全然難しくない。
 筆者の知っているラテンアメリカ諸国(特に、コスタリカ)では街の中心に「教会」(iglesia)と「公園」(parque)があり、iglesia は信者でなくても、道案内には必須の言葉である。
 映画『沈黙 -Silence -』に戻る。この時代(17世紀初頭)には、キリスト教が禁止されていて、禁教以前に建てられたキリスト教会は破壊されている。キリシタンたちはどこかに隠れて集まって祈りを捧げたり、「オラショ」を唱えたりしていたはずである。そのどこかをキリシタンたちは「エケレシア(エキレンジャ、イグレジャ)」と呼んでいたのであろうか。
 ところで、スペイン語 iglesia の複数形 iglesias は姓としても使われている。この姓を持つ有名人の筆頭格は、歌手の Julio Iglesias (フリオ・イグレシアス)だろう。息子の Enrique Iglesias もだんだん父親に似てきたようだ。
   

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