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コスタリカ再訪(109)牛車は「去勢された牡牛」(buey) が引く

2016-09-09 18:31:15 | コスタリカ
  グアピレスへの引越しは牛車で行われたが、決して牧歌的なものではなかったようだ。
 写真でわかるように、牛車を引くのは牡牛である。
   
 牝牛は乳を出すので、一般的には労役には使われないものと思う。しかし、牡牛はさかりがつくと、コントロールが難しくなるので、去勢して、労役に使用するようだ。
 ということで、義母の牛車を引いたのも去勢された牡牛である。
 日本語では「牛」という言葉は、牛全般を指す言葉だが、英語では「牡牛」は ox、「牝牛」は cow と別の言葉になる。スペイン語では、「牡牛」、「牝牛」、「去勢された牡牛」は、すべて別の言葉になる。それぞれ、次のとおりである。
 牡牛 toro:トロ、英語の Taurus「おうし座」 と同源。
 牝牛 vaca:バカ、「牛肉」は carne de vaca という。生前、オスであっても carne de toro とは言わない。carne de res (四足獣)でも「牛肉」を表す。
 去勢された牡牛 buey:去勢された(castrado)牡牛(toro)ということだが、toro castrado とは言わない。

 castrado は動詞 castrar (英 castrate)の過去分詞であるが、イタリア語では castrato となる。『カストラート』(伊Farinelli Il Castrato)という映画が1994年に作られている。castrato についてはウィキペディアの記事をご覧いただきたい。
 
 ところで、スペイン語の動詞 castrar の直説法現在1人称単数の活用形は castro で、キューバの指導者 Fidel Castro の姓と同じである。普通名詞としての castro は「城砦」の意味で、手元の辞書にも「城砦の近くに住む人」が原義と記してある。Castro さんは日本では「城(じょう)」さんに当たろう。ちなみに、castro の関連語に castillo (カスティージョ、城)がある。英語の castle に相当する。
 ところで、Fidel Castro に反対するものが“Te castro, Castro”(お前を去勢してやるぞ、カストロ)なんていえば、即座に収容所送りになりそうである。もっとも、高齢となった今では、去勢されようが、されまいが、どうでもいいことかもしれない。また、“Té, Castro"(お茶だ、カストロ)と言ったつもりでも、収容所送りになるかもしれない。

 castrón という言葉もある。これは「去勢したヤギ」という意味で、キューバでは「去勢した大豚」という意味にもなるそうで、キューバに行かれる方は、くれぐれも発音には注意されたい。

 それはともかく、動物の去勢は獣医師が行うのが一般的であろうが、獣医師の名前が Aquiles Castro だったりしたら、みんな笑い転げそうである。
 Aquiles (アキレス 英 Achilles)はギリシャ神話の豪傑(英雄?)の名前であるが、スペイン語では男子名としても使用される。
 これだけでは、笑い転げる理由にはならないが、Aquiles は“aquí(ここで)+ les(彼らを)”に分解できる。このあとに「(私は)去勢する」の意味にもなる castro をつなぐと、「(私は)ここで彼ら(動物)を去勢する」ということになるのである。  
  

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