ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「ケッヘル」〈上・下〉  中山可穂読了!

2016年10月05日 15時01分58秒 | 作家 な行
ケッヘル〈上・下〉 (文春文庫)  2016.10.4読了。
中山 可穂 (著)

その音楽は神のものか、悪魔のものか―カレーの海辺でひとりの熱狂的なモーツァルティアンと出会った伽椰は、情事の果ての長い逃亡生活に終止符を打ち、日本へと舞い戻った。そこで待っていたのは、ケッヘル番号を会員番号とする会員制旅行代理店の奇妙なツアーであり、依頼人の失踪に始まる恐るべき復讐劇の幕開きだった。
ウィーンからプラハ、マンハイム、ベルリンへと、モーツァルトゆかりの土地へアマデウス旅行社のツアーは続き、復讐は重ねられる。モーツァルトしか弾かない美貌のピアニストとの恋が伽椰を更なる悲劇のうねりに巻きこんでいくのだが―過去と現在、複雑に入り乱れた愛と憎しみが生み出した絶望に差しこんだ一筋の光とは。




大作ですが、連載されていたためか、後半に来て矛盾点やご都合的な解釈がでてくる。詰め込みすぎた感じや、無駄な説明など長文の小説にありがちな欠点もみられ、あれもこれもと話が薄まってゆく。ラストは「いいのか?それで」っていう結末ですし。サスペンスだからとか恋愛ものだからとかではなく、この作家さんならではの濃密な小説を読みたい。…6点。

「小説を書く猫」 中山可穂読了!

2016年09月29日 18時34分19秒 | 作家 な行
小説を書く猫  祥伝社(単)  2016.9.29読了。
中山可穂 (著)

ファン待望、幻の作家、初のエッセイ集! 恋愛、執筆、旅について…… 『猫背の王子』から近況まで、18年の作家生活を網羅 孤高の作家は日々、爪を研ぎ、肉球をみがく。 しめきり?……にゃんだ、それ? わたしはいまだに、この年になっても、ということはおそらく死ぬまで、自分のことを人間よりは猫に近い生き物だと思っているのです。 猫を見るととても他人とは思えない。 人間とは結局最後まで馴染めない。 猫には人間の言葉がわかるけれど、人間は猫語を理解できません。そこに猫の孤独があり、哀しみがある。 (「あとがき」より)

身を削る思いで、狂おしい恋愛をいくつも紡いできた孤高の作家、中山可穂。 寡作であることもあり、ファンは辛抱強く、彼女の新作を待ちわびている。 放浪癖はもとより、彼女自身の生き様が放浪であるといえよう。 昨年より京都に移住、新たな境地を目指す近況報告エッセイ二編も収録



小説で綺麗な文章を書く作家さんは、エッセイも面白く綺麗だったりして。…7点。

「熱帯感傷紀行―アジア・センチメンタル・ロード」 中山可穂読了!

2016年09月13日 17時46分50秒 | 作家 な行
熱帯感傷紀行―アジア・センチメンタル・ロード (角川文庫) 2016.9.13読了。
中山 可穂 (著), 平尾 香 (イラスト)

緑がしたたる、抒情がしみる――
タイからマレーシア、インドネシア、シンガポールへ――。山本周五郎賞作家がつづる、楽しくせつない、たったひとりの失恋貧乏旅行記。
失恋、スランプ、貧乏と三重苦のわたしを待ち受けていたアジアの熱気と混沌。タイ人(男性)にしつこくナンパされ、かき氷の誘惑に耐え切れずお腹を壊し、スマトラの暴走バスに命からがら…。それでも貧乏旅行はやめられない!山本周五郎賞作家が綴る楽しくてちょっとほろ苦い失恋旅行記。



これは、紀行文だけれど、しみじみおかしく、哀しい。…6点。

「深爪」 中山可穂読了!

2016年09月12日 14時51分12秒 | 作家 な行
深爪 単行本(朝日新聞社) 2016.9.12読了。
中山 可穂 (著)

あなたを壊さないように、あなたの家族を壊さないように、そっとあなたを愛します…。これも不倫というのだろうか? 夫・妻・妻の愛人(女)の三角関係がつむぎだす運命の螺旋。連作小説集。



短編ではなく、連作長編。よくできてんだけど、なんかもう普通。…6点。

「悲歌」中山可穂読了!

2016年09月10日 14時16分05秒 | 作家 な行
悲歌 (角川文庫) 2016.9.10読了。
中山 可穂 (著)

音楽家の忘れ形見と愛弟子の報われぬ恋「蝉丸」。隅田川心中した少女とその父の後日譚「隅田川」。変死した作家の凄絶な愛「定家」。能に材を採り、狂おしく痛切な愛のかたちを浮かび上がらせる中山可穂版現代能楽集
先生、あなたはなんという呪いをかけられたのですか?あなたの大切な者すべてを三角形の綴じ糸でほどけぬように縫い付けて、それぞれの愛を禁じるおそろしい呪いをかけたのは、一体何のためですか?―音楽家の忘れ形見と愛弟子の報われぬ恋「蝉丸」。隅田川心中した少女とその父の後日譚「隅田川」。変死した作家の凄絶な愛の姿「定家」。能に材を採り、狂おしく痛切な愛のかたちを浮かび上がらせる、中山可穂版・現代能楽集。



なんだろな。中山さんの小説を読んで、初めてこなかった。男と男の愛がメインだからという理由だけではないと思う。確かに苦手ではあるが、そんな性別なんか超越したところに中山さんの小説は存在しているのだから。ストーリーがどうのとかプロットがどうかなんかより、心にこなかったことが問題だ。自分の問題かも知れないが。…5点。

「サイゴン・タンゴ・カフェ」 中山可穂読了!

2016年09月07日 17時41分53秒 | 作家 な行
サイゴン・タンゴ・カフェ (角川文庫) 2016.9.7読了。
中山 可穂 (著)

インドシナ半島の片隅の吹きだまりのような廃墟のような一画にそのカフェはあった。主人はタンゴに取り憑かれた国籍も年齢も不詳の老嬢。しかし彼女の正体は、もう20年も前に失踪して行方知れずとなった伝説の作家・津田穂波だった。南国のスコールの下、彼女の重い口から、長い長い恋の話が語られる…。東京、ブエノスアイレス、サイゴン。ラテンの光と哀愁に満ちた、神秘と狂熱の恋愛小説集。




短編集となってはいるが、表題作「サイゴン・タンゴ・カフェ」など135ページもある。
その「サイゴン・タンゴ・カフェ」読後、しばらく、現実世界に帰ってこれなくなって困った。まれにそういう小説にあたる。幸せな事だ。…「サイゴン・タンゴ・カフェ」だけ9点。他の4編はどうしよう。

「愛の国」 中山可穂読了!

2016年09月05日 16時57分05秒 | 作家 な行
愛の国 (単行本角川書店) 2016.9.5読了。
中山 可穂 (著)

満開の桜の下の墓地で行き倒れたひとりの天使――。昏い時代の波に抗い鮮烈な愛の記憶を胸に、王寺ミチルは聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す。愛と憎しみを孕む魂の長い旅路を描く恋愛小説の金字塔!

弾圧の暗い影、獄中のタンゴ、刻み込まれた愛の刻印。愛する人も記憶も失い、自分が何者なのかを問いながら彼女は巡礼路を歩き続ける。十字架を背負い、苛酷な運命に翻弄され、四国遍路からスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ。衝撃のデビュー作『猫背の王子』から20年―底なしに愛し、どこまでも闘う主人公ミチルに待ち受ける愛と死、罪と罰、天国と地獄を渾身の筆で描ききった恋愛小説の金字塔!王寺ミチル三部作完結篇。




シリーズ最高傑作だったよやっぱり。読み終わりたくなかった。文庫でも読んじゃおーかな。…9点。

「天使の骨」 中山可穂読了!

2016年09月01日 17時36分10秒 | 作家 な行
天使の骨 単行本朝日新聞社 (1995/09) 2016.8.31読了。
中山 可穂 (著)

劇作家・王寺ミチルはすべてを捨て旅に出た。イスタンブールからリスボン、そしてパリへ。再生の希望を賭けて……。第6回朝日新人文学賞受賞作。山本周五郎賞作家の原点。冬の旅をしなければならない。燃えさかる真夏の極みに…。『地球の歩き方』文学篇。ぼろぼろの天使を葬る再生への旅。イスタンブールからパリまで。灼熱の恋のおまけつき。



「猫背の王子」につづくシリーズ2作目。1作目より、2作目。
3作目はどんなすごいことになっているんだろう(ゴクリ)。
プロットは好きじゃないのに、なんでこんなに気持ちを持っていかれるんだろう? 
完結編の「愛の国」は(もったいなくてしょうがないので)もうすこし後に読むはずだったけど、待ってなんかいられない。…7.5点。

「猫背の王子」 中山可穂読了!

2016年08月30日 20時21分30秒 | 作家 な行
猫背の王子 (集英社文庫) 2016.8.30読了。
中山 可穂 (著)

自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた―。女から女へと渡り歩く淫蕩なレズビアンにして、芝居に全生命を賭ける演出家・王寺ミチル。彼女が主宰する小劇団は熱狂的なファンに支えられていた。だが、信頼していた仲間の裏切りがミチルからすべてを奪っていく。そして、最後の公演の幕が上がった…。スキャンダラスで切ない青春恋愛小説の傑作。俊英の幻のデビュー作、ついに文庫化。



ついに、ここまで来た(この3部作に手がかかる)。
文章が今と比べれば稚拙な感じがする。
しかし迫力、勢いがある。人物造詣はやっぱり断トツ。
でもこの頃の文章ではちょっと心に刺さらないか?…6.5点。

「ジゴロ」 中山可穂読了!

2016年08月29日 13時14分21秒 | 作家 な行
ジゴロ (集英社文庫) 2016.8.26読了。
中山 可穂 (著)

新宿二丁目でギターを奏でるストリート・ミュージシャンのカイ。彼女の美しく切ない歌声に魅せられて、多くの女たちが立ち止まる。そうした女たちの中から、カイは夜な夜な新しい恋人を求め続ける。まるでジゴロのように―。人妻との禁断の逢瀬、年若い少女への恋の手ほどき、命をかけた悦び…。カイをめぐる、女を愛する女たちの激しく狂おしい官能と恋を鮮烈に描く連作短編集。


だから、胸が張り裂けそうなのが読みたい。…6.5点。