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The Many Resurrections of Sherlock Holmes 後半

2015-12-28 09:46:47 | Sherlock Topics 2015

続きです。
元記事はこちら。
The Many Resurrections of Sherlock Holmes


Reason 3: Because We Grok Spock
スポックに共感するから

セクシーなオタクがクールになる前からシャーロック・ホームズはセクシーなオタクでした。
近代SFはホームズが文学界に登場する70年近く前から存在しています。
(メアリー・シェリーのフランケンシュタインまで遡れます)
驚く事ではありません。コナン・ドイルは正典を書く前や最中にもSFを書いていました。
いくつかのホームズのストーリーは(例えば悪魔の足や這う男)正しくSFの物語です。

私たち(Dr.ワトソンも)がホームズと初めて出会った緋色の研究で雰囲気を作り出していました。
バーツの研究室でホームズはブンゼンバーナーに囲まれていました。
「『I've found it! I've found it,』 he shouted to my companion,
running towards us with a test-tube in his hand.
(『見つけた!見つけたぞ!』と彼は試験管を手に走り寄り、私の同伴者に叫んだ。)とワトソンが語っています。

「I have found a re-agent which is precipitated by hoemoglobin (これは原語のスペルです),
and by nothing else. (ヘモグロビンにのみに反応して沈殿する試薬を見つけたんだ。) 」
「Had he discovered a gold mine, greater delight could not have shone upon his features.
(彼が金鉱を発見したとしてもこれ以上に喜んだ顔はできなかったかもしれない。)」

科学者としてのホームズの熱情がここで表れています。
彼は最初にして最高の知性に訴えるヒーローのひとりで、
惑星の征服や悪者退治や女性のモノにすることが彼のゴールではなく単に知りたいのです。

「Sherlock Holmes and the Science Fiction of Deduction」(Clarkesworld Magazineの2010年11月号)で
ライアン・ブリットはこのように説明しています。
「SF作家の様にドイルはまず最初にwhat if?(もしこうだったらどうなる?)から取り掛かる。
直感や度胸で答えにたどり着く探偵ではなく、
科学的な解決法を見出す探偵だとしたら?彼の冒険はどんなふうになるだろう?とドイルは言った。」

ホームズは多くの冒険をしています。
サイエンスフィクションはますます主流になり定着したのもひとつの理由です。

そのジャンルの啓発者たちは実はホームズに関連したサイエンスフィクションの寄稿をしています。
例えば、時空を超えたシャーロック・ホームズ
(アイザック・アシモフやマーティン・グリーンバーグ、チャールズ・ウォー著。)や、
パロディ集(マイク・レズニックとマーティン・グリーンバーグ編)、
そして「The Improbable Adventures of Sherlock Holmes」(ジョン・ジョゼフ・アダムズ著)です。

さらに、コズミック・フィクション作家が80年にわたり連載終了のままだと彼の人気がなくなってしまうからと、
H・P・ラブクラフトが作り上げた宇宙的な世界にシャーロック・ホームズを登場させまました。
(dico注※これは多分、オーガスト・ダーレスのソーラー・ポンズシリーズなんじゃないかと思います)
ホームズとラヴクラフトをアッシュアップしたアンソロジーです。

その中で最も洗練された作品のひとつはサイエンスフィクションの最高賞、
ヒューゴ賞とローカス賞に輝いたニール・ゲイマンの「A Study in Emerald(翠色の習作)」で、
「緋色の研究」がラヴクラフトの「旧支配者」によって支配された
「アルビオン」になっていたかもしれないと思わせる作品です。

サイエンスフィクションのホームズへの称賛は文章だけでは終わりません。
22世紀にいるシャーロック・ホームズのアニメシリーズには、
若返りの細胞で蘇ったシャーロック・ホームズとcompudroid(dico注※コンピューターのドロイド?)
のワトソン、そしてクローンのモリアーティがいます。
エピソードはある程度コナン・ドイルのオリジナルに沿って脚色しています。
もちろん、空飛ぶ車が出てきますが。

さらに、サイエンスフィクションメディア史上、最も長寿かつ成功した2作品にも登場します。
彼の知名度や関連性を高め、信憑性を利用したにも関わらずクールな要因となっており、
奥深く、生真面目さがあります。

Dr.フーはいくつかの状況でホームズを用いています。
4代目のドクターは彼自身の調査や追跡はホームズを思い起こさせますし、ディアストーカー帽さえ被ります。

ホームズとワトソンは共に公式公認の小説で一度ならず登場し7代目ドクターと関わっています。
そして2011年からフーは爬虫類のサイルリアン、マダム・ヴァストラに率いられる
パターノスターギャングでユニークに応じます。
ホームズの種族や性別が変化したのかもしれませんがヴァストラと、
彼女のワトソンである人間のパートナー、ジェニー・フリントは
古典的なシャーロキアンスタイルでミステリーを解決し冒険するために
馴染みのあるヴィクトリア朝のロンドンに移りました。

新スタートレックの最も象徴的なエピソードのひとつはアンドロイド、データ少佐のです。
データは大尉とともにホームズに扮することで人間である事の証を得ようとします。
ジョーディ・ラ=フォージもワトソンとして参加し、ホロデッキでコナンドイルの原作を彼自身にプログラムしました。

しかし、ホームズと現代の大作との重要な関連があるのは映画になった「スター・トレックVI 未知の世界」です。
映画はニコラス・メイヤーが監督と脚本ですが彼は以前、シャーロック・ホームズの有名なパスティーシュ、
「The Seven-Per-Cent Solution (シャーロック・ホームズの素敵な挑戦)」(同名で映画化されました)
「West End Horror(ウエスト・エンドの恐怖)」、「The Canary Trainer」を書いています。

理論的思考のMr.スポックは理性とイマジネーションの象徴でとても人気があり、
スタートレック3での(カーク船長の)セリフ、
「the needs of the one outweigh the needs of the many」
(多数の必要よりひとりの必要が勝った)でその立場が証明されています。
「未知の世界」では「緑柱石の宝冠」からホームズのセリフが引用されるなど
不可解なミステリー(クリンゴンに光子魚雷を発射したのは誰?)の影響を受けています。

エンタープライズのブリッジに立ち、スポックが言います。
「Once you have eliminated the impossible, whatever remains,
however improbable, must be the truth. 」
(私の先祖がかつてこう言ってた。
『不可能を排除すれば残ったものが何であれ、それがあり得ない事でも、真実に違いない。』と。)
シャーロック・ホームズはMr.スポックの人間の祖先のひとりです。

「シャーロック・ホームズのメッセージはシンプルだ。」とクラークスマガジンでメイヤーが指摘しています。
「人生を理解できる。」もちろん、スポックや彼のファンも同意するでしょう。
メイヤーにとってそれらの点を結び付けるのは朝飯前でした。
「スポックとホームズにある繋がりは誰の目にも明らか。私はそれを公式にしただけ。」

ノーアム・コーエンは2014年9月13日のニューヨークタイムズで「我々は全員オタクだ。」と公言しています。
オタク文化が主流というのが真実ならサイエンスフィクションが主流ということになります。
一部のキャラクターはシャーロック・ホームズの血統を持つサイエンスフィクション伝統的なスタイルですが、
当然、最新のスタイルはそれをオマージュしています。

Reason 4: Because Holmes Is Now
ホームズは今も存在しているから

これはすべてアーサー・コナン・ドイルの責任です。
生涯、彼はシャーロキアンの砂場を開き、みんなを遊ばせました。
アメリカの俳優、ウィリアム・ジレットがシャーロック・ホームズを脚色する上でのパラメーターは何なのか、
と尋ねた時、コナン・ドイルは「彼を結婚させるも殺しをさせるも何でも好きにすればいいよ」と返事をしています。
以来、私たちはずっと自分たちの好きにしてきました。(中には触手があるものもあります)
本当にベイカーストリートは世界で共有されています。
(dico余談※触手?触手って?tentaclesって触手の他に何か意味があるのでしょうか。怖いー)

ホームズの人気の最後のカギを特定するには、
コナン・ドイルの正典に示されているように彼の当初の意図に立ち戻る必要があります。

アメリカの作家、ヴィンセント・スターレットの詩「221B」が私たちに教えてくれます。
「Here, though the world explode, these two survive, And it is always eighteen ninety-five. 」
(ここでは、たとえ世界が爆発しようとも2人は生き残る。それは常に1895年なのだ。)

dico余談※
「1895」はジョンのブログのカウンターにもなっていますよね。
以前に御大がインタビューでも話していたヴィンセント・スターレットの詩を
今回初めて読みましたが、いやー、何でしょうね、これ。
こちらです。
http://allpoetry.com/poem/8599039-221b-by-Vincent-Starrett
直訳の意訳というか私の解釈になっちゃっているんでしょうね。これ。
そう思うと何だかすごく恥ずかしいです。詩って難しいですね。

有名なふたりの男がずっと住んでいる
男たちは生きていない、それ故に死ぬことも無い
とても近くにいるように見えてなんて遠いのか
世界の破滅が目の前にきている
それでも彼らは耳を澄まして獲物狙っている(ゲームを始めている)
遠くの獲物を捕らえるために順応する
私たちが恐れるゆえイングランドは変わらない
心が信じるものはただ真実のみ
窓ガラスのそばで黄霧がうずまく
夜この伝説の街を不意に訪れる
1台の馬車が雨の中しぶきをあげる
ぼんやりとした20フィートのガス灯が消えていく
たとえ世界が爆発しようとも2人は生き残る
それは常に1895年なのだ

余談終※

もうすぐ放送されるBBC シャーロックスペシャルのティーザーでは
いつもファッショナブルなスーツを着たニコチンパッチ依存のカンバーバッチが
ビクトリア朝の衣装を着てパイプをふかし馬車から221Bの前に降り立ちます。

しかし、コナン・ドイルは琥珀に閉じ込められているハエとして、
永遠に変わることなくリビングルームに閉じ込められたホームズとワトソンを書いているわけではありません。
彼らは読者のその時間で生きています。
そして彼らの観客として見た目は変われど同じ街を歩き、同じ建物を訪れます。
様々な物語で展開されたシーンの場所を訪ね歩きます。
ホームズはその時代の隣人として存在し、
読者はまるで彼が親しい友人だったかのように手紙を出し彼の死を悼みました。

ホームズはロンドンに戻ったりニューヨークに移らせたり、
或いは医者としてハウスと名乗りワトソンのためにウィルソンも完備したり-
彼はアップデートされるたびにコナン・ドイルの意図するものに復元され、
今は私たちのところにいます。

同じカオスに向き合い、同じ官僚制度に立ち向かい、同じ犯罪を目撃します。
迷信やヒステリー、疑似科学的ないんちき療法を追い払います。
彼の正確な手法を用いて私たちも同じように挑戦をします。
イマジネーションと推察力で幻滅と戦います。
私たちに安心感を与え、元気づけ、自由をもたらします。
私たちがたとえアンドロイドだったしても人間であることを思い出させます。

以上です。
お粗末さまでございました。