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海外ドラマや映画の感想いろいろ書いてます。

The Great Game Audio Commentary その13

2019-03-19 20:30:34 | Sherlock S1E1 Commentary


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MG:クライマックスのプールのシーンだ。
僕が昔住んでいたブリストルにある。子どもころよく泳いだ。
将来ここでホームズ作品を撮ることになると聞いたら幼い僕はさぞ驚いたろう。

BC:(子どもの声で)「そんなのうそだ」
MG:そもそも泳いでいる最中は聞こえない。
BC:ドクター・フーに言われたら?
MG:「やった!番組が続いてる!」
プラネタリウムのシーン同様、特にこういう山場においては
道具立てが重要だと感じる。ヒッチコックの映画みたいにね。
何の変哲もないプールでありながら不気味なムードが醸し出されている。
カーテンや水面に不気味さが漂う。背筋がゾクゾクするよ。

BC:効果的だね。実に美しい舞台設定だ。
BC:僕にとっては手を焼いたシーンでもある。
動きの多いシーンなのにスペンサー・ハートのスーツのポケットは銃でパンパンだった。
歩きにくかったよ。
MG:企業名は伏せて。
BC:おっと。
MG:やり直しだ。

BC:OK。僕の美しいスーツは・・・
本当に気が散ったよ。プールに落ちるかと思った。
アンドリュー・スコットの登場だ。
モリアーティが正体を現す。

MG:ただのゲイじゃなく大悪党だった。
BC:その通りだね。
MG:アンドリューがオーディションに来た時、その独自の役の解釈に誰もがほれ込んだ。
シャーロックやジョンと同様新たなモリアーティ像だ。
頭の禿げた60歳の教授ではなくありふれた様子で周囲に溶け込んでいる。
どの候補者も良かったがアンドリューの演技には茶目っ気と強烈な磁力があった。
大げさで気取ったセリフ回しもこの対決シーンに不可欠なものだ。
所々にゾッとする瞬間が。彼の顔がふと爬虫類か仮面のように見え、
その下に強大な「悪」を感じる。彼は最高だよ。

BC:結婚したら?
MG:ぜひしたいね。するとも。約束だ。
BC:マーティンの代理で言った。
マークのアンドリュー評には僕の全面的に賛成だ。
彼の身体表現には所々で本当にゾクゾクさせられる。
冷たい爬虫類のように見えてくるんだ。
MG:モリアーティはアイルランド姓だがアイルランド人で演じたのは彼が初めてだ。
BC:アクセントも完璧。
MG:それからもうひとつ・・・

BC:(モリアーティが近づいてくる場面)いい演技だ。
MG:原作でも描写されているが、彼の頭は爬虫類のように常に左右に揺れている。
アンドリューは僕の説明ですぐにその動きをモノにした。
僕の目の前で練習したんだ。この先さらに回数が増える。
ケヴィン・スペイシーの動きにも似てるね。

(モリアーティ「人は死ぬものなんだ!」の演技)
MG:今の表情も最高だ。鳥肌が立つよ。
このシーンはスティーヴンとの話し合いから生まれた。
当初、脚本に対決シーンはなかった。
次シーズンのいわば予告としてモリアーティの正体を明かすだけだった。
シャーロックは宿敵を逃してしまう。

MG:彼は「病院のジム」に再会。ジムは電話番号を残して歩み去る。
ハッと気づいて追うも時すでに遅し。彼は消えていた。
なかなか面白いエンディングだった。
だが90分×3本のクライマックスとあって、
やはり対決を描こうということに。
原作「最後の事件」に出てくる対決シーンを参考にした。

MG:スーツはV・ウェストウッド。
BC:ちょっと、君は言っていいのか?
MG:テレビじゃなければ大丈夫さ。
然るべき人の許可を得ればね。何も問題はない。

MG:ここでシャーロックははっきり悟ったはずだ。
選択を誤れば自分がモリアーティになっていたと。
彼らは常人よりはるかに頭がいい。だがシャーロックには心がある。
僕たちと同じように。
BC:モリアーティは悪党なのに魅力的だ。
かといってホームズも一歩もひけをとっていない。
彼らは互いに最高のライバルだ。
MG:結婚したら?
BC:すべきだね。

MG:この件もかなり話し合った。
宿敵の登場が早すぎるのではないかとね。
だがこのエピソードは3部作の締めくくりだ。
それにふさわしいものにしたかった。
楽しみを先延ばしにする必要はない。
様々な意見や議論があったが、結局第1話の最後からモリアーティの名を出した。
彼はシャーロックの人生にじわじわと忍び込む。
BC:この描き方で正解だよ。
MG:これは偶然だがアンドリューの足元に「危険」という看板が。
まさにシーンにぴったりだ。
ふたりは窮地にある。
最後にはモリアーティは立ち去りひとまず一件落着のはずだった。
だが僕たちは次シーズンへの期待を煽りたくて・・・

MG:まさかの再来だ。狙撃手も大勢いる。
映画「魔の家」のセリフの引用だ。
「ジンは私の唯一の弱点だ。」
正念場だ。

MG:ふたりは目と目で合意する。
自分たちが助かるより彼を殺すことが先決だと。
この1発でダイナマイトが爆発し彼らも吹っ飛ぶ。
彼の頭の動き・・・さあ、運命の時だ。

MG:次シーズンに続く。

(エンドロール)
BC:やれやれ、ようやく完成版が見れた。ありがとう。
また1年後ぐらいに会えることを願うよ。
MG:DVDスタジオでね。


終わりです。


言葉はいらないですね。
また観ようかな、グレートゲーム。

A Study in Pink Audio Commentary その9

2018-05-28 20:56:07 | Sherlock S1E1 Commentary
ラストです。

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モ:原作のホームズが鹿撃ち帽をかぶってたのか議論になっているが挿絵によるとかぶっていたと言える。
挿絵は最初からあるものだからね。
ゲ:似たような話題は多くある。新聞記事をうめるための手段だ。
「基本だよワトソン君」も原作には実在しないセリフだ。
モ:いかにも言いそうだ。



ゲ:彼の言っていないセリフはたくさん存在する。
それと同じで鹿撃ち帽もはっきりした記述はない。
モ:彼は「エレメンタリー(基本)」さえ一度も言っていないそうだ。よく聞くのに。
いいセリフなのは確かだけど。
モ:「エレメンタリー」と出すか悩んだが今どきの男が使う単語じゃないと思った。
ゲ:何か考えよう。「お世辞はいい」が好きだ。
モ:イメージが壊れる。狙って言ってる感じだ。
ゲ:「ホームズ、約束したろ」



モ:「基本」と言われる場面が・・・
スー:これはCGよ。炎がね。
ゲ:リコリスで作った銃だ。
モ:本物の銃だよ。
ゲ:フィルに誘拐されて薬か銃を選ぶとしたら?リスクを冒して銃を選ぶ?
スー:偽の銃と知らずに?
ゲ:当たり前だ。



モ:ほかのケースでジェフは積極的に銃を使ったはず。
ゲ:もっと怖い?
モ:本物の銃だとしてもベネディクトは勝てると思う。
モ:ここで僕ならさっさと立ち去るね。
モ:パイロット版の設定より直接的なやり方になってる。無謀な行為だ。彼の中毒症が出てきた。



ゲ:ジェフがどう見分けてるかは決めてあったの?
モ:どのポケットに何が入ってるかわかってた。印があるのではなくただ記憶しているだけ。
ゲ:混乱して忘れたらどうなる?「どっちだっけ?」「やめた」ってなる。
スー:自分にもリスクがあるのね。
モ:だが彼は洗脳するみたいに相手を操作するんだ。



ゲ:注目だ。
モ:そう、2枚の窓を通したシーンだ。ひとつ目の窓を通り抜けたらまた同じ窓にズームインする。
うまく撮れてる。



モ:デヴィッド・アーノルドとマイケル・プライスが刺激的な音楽を作ってくれた。
スー:特別な人たちよ。
ゲ:タイトな締め切りにお対応する驚異的な職人たちだ。



モ:ヒーロー的な音楽じゃないのがいい。
シャーロックの常軌を逸した音楽だ。興奮を誘うのが耳障りだ。
ゲ:ストリングが調和していない。




ゲ:マーティンがジェームズボンドに選ばれたら理由はこのショットだ。
ゲ:このシーンはとても満足している。
死にかけている男に「僕は合っていたか?」と聞く。
そして残酷に男の傷口を踏みつけるんだ。最も冷酷なシャーロックの姿だ。



モ:彼の言い訳はジョンと同様「悪党だった」から。
恐ろしいセリフだね。「死ぬ寸前でも拷問はできる。」
ゲ:モリアーティつなげるための道筋だ。90分ドラマになると分かってすぐに決めていた。
ゲ:楽しみを先に延ばさず最初のうちから何か秘められたものを匂わせようとね。
モ:原作でモリアーティは「最後の事件」に初めて登場する。最後の登場でもある。


↑ここで「モリアーティ」と唇だけ動くのがすごく好きなんです。

モ:ふたりの対決がもっと書かれてたら面白いだろうとファンは期待した。
ゲ:だがラスボーン版の描き方は間違っていた。モリアーティが繰り返し再登場するんだ。
大好きなシリーズだけどモリアーティは頂けない。5人の違う俳優が演じてるけどね。それは面白い。



モ:毎回違う俳優が演じて毎回殺される。生き返った説明もなし。
ゲ:「再生」だ。
モ:それしか考えられない。



↑ちょっとあざとかったでしょうか・・・(笑)

モ:この瞬間も好きだ。マーティンの視線が「そう僕だよ」と語っている。
ゲ:僕が好きなのは彼の軍人風の物腰だ。その表現を読んでもピンとこなかったけどこれだと思った。



スー:歩き方も軍人風ね。
モ:すべてのシーンで自分が軍医であることを忘れていない。文句のつけようのない男だ。
ゲ:レストレードが「優秀な刑事」であることと同じでワトソンはパッとしない「バカ」のほうがいい。
窮地に陥っていてくれたほうが都合がいい。
モ:ワトソンはどの物語でも決して天才とは言えない。
だがホームズはワトソンを誰よりも信頼している。マーティンは信頼できる男を体現していると思う。



スー:マーティンは歩き方にバリエーションがある。第2話でデートした時の歩き方は・・・
ゲ:軽快
スー:そう、期待感ね。
ゲ:軽やかだった。
スー:進展を期待して。



ゲ:シリーズが続くならワトソンを女たらしにしたいと思っている。その一端をもう見せている。今後が楽しみだ。
モ:うまう導入できてると思う。ただしモリーのことは口説かない。
ゲ:なぜ?



モ:彼女はシャーロックにほれてるし忘れられたから少し頭にきてる。
ワトソンは肉食動物みたいに常に警戒態勢にある。
ゲ:美女に対してね。



ゲ:「あのイケメンは誰?」とここでワトソンが言うんだ。
モ:ボツにした。俳優が現れないし・・・・
ゲ:僕は現場にいたよ。
モ:「マーク、スーツに着替えて」と。
モ:裏切られた気分だ。不吉なシーンだったのに原因は兄弟の確執だったなんて。
ゲ:「ママ」がいいよね。
ゲ:マイクロフトは過食とダイエットを繰り返すタイプだと決めた。
スー:楽できた?
ゲ:撮影中は自由な食生活ができてよかったよ。
彼のデスクにはダイエットピルが置かれている。なぜかシャーロックは悩み知らずだ。
モ:原作でマイクロフトは太っているから・・・




ゲ:原作と少し変えるのも面白いと思う。
ワイルダーの作品ではその設定は考慮されずクリストファー・リーが演じていた。それもまた斬新だと思うし・・・
モ:すごく面白いマイクロフトだ。権力的でシニカルで・・・・
ゲ:恐ろしい。
モ:唯一シャーロックに匹敵する優秀な男だ。



モ:大好きなシーンだ。ジョンがアンシアに話しかける



(みんな爆笑)
ゲ:2度目だ。
モ:やる気満々だね。かわいそうなジョン。
ゲ:シャーロックお得意の推理だ。「店の質はノブでわかる。」
モ:ジーンズでも。
ゲ:面白くて気に入っている。
モ:緊迫した瞬間が遮られる。
スー:ポールに質問された。
モ:詳しい推理の事?



ゲ:「デザイナーはネクタイでわかる」
モ:「パイロットは左の親指でわかる。」
「配管工事人」だったのを君がパイロットに変えた。
使えると思った。みんなを驚かせる見事な推理だ。
スー:誰かがネットで「緑のはしご」について調べていた。
ゲ:緑のはしごね。
モ:僕らのヒーローだ。
「シャーロック・ホームズとDr.ワトソン」
最後の君のセリフは格別だ。
ゲ:最初はルパートのセリフだったが「脚本家の語りみたいだ」と。
モ:マークが適役だ。
ゲ:僕にまわってきた。
モ:いいせりふだったよ。脚本家って感じだった。
ゲ:みんなに感謝している。



以上です。
もう言葉は要らない・・・・って感じです。

「ピンクの研究」は見れば見るほど何から何までパーフェクトなエピソードですよね。
出会いも完璧、三大陸の面も見せつつも銃でシャーロックを助けるワトソン先生もかっこいいし
そんなジョンに少しずつ心を開いていくシャーロックの変化もほどよく表現されているし
何より推理も犯人との頭脳戦が最高でした。

ここまでおつきあいありがとうございます。
次は「死を呼ぶ暗号」をやりたいと思います。

A Study in Pink Audio Commentary その8

2018-05-25 22:28:57 | Sherlock S1E1 Commentary
コメンタリー続きです。

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モ:スーがそっくりな建物が並ぶ場所を長い間探したけど結局見つからず特殊効果を使った。
ゲ:よくできていて感謝している。フィルの配役について話そう。
モ:彼はパイロット版にも出演した。オーディションに来てくれて光栄だった。
ゲ:多くの優秀な俳優が来てくれたね。
パイロット版にはもうひとりタクシー運転手が出るからこの役は「タクシー運転手2」だった。
フィルはがっかりしたが次の瞬間びっくりしていた。9ページものシーンがあるからね。
皆熱心に様々な演技を見せてくれたがフィルは誰とも違って冷酷さを持っていた。



ゲ:「タクシー運転手が?」の部分がそうだ。彼の目がきらりと鋭い輝きを持っているのがわかる。
ほかの人々について「愚かなことだ」と言う部分は観る側の心をかき乱すすばらしい演技だ。
モ:彼は具体的な説明はしない。ほんの触りを話すだけであとは胸の内に秘めている。



スー:いい編集だ。
モ:ドアが開くところ?最高だ。チャーリー・フィリップスの編集だ。
ゲ:フィルの演技で気に入っている部分がある。
シャーロックがプレーする番になり彼の子どもについて見事に言い当てる。
フィルが「優秀だな。」と言う時、隠していた弱さが表れる。印象的だ。



スー:スポンサーの話をするフィルがいいわ。
ベネディクトの鼻が見ものよ。不愉快そうに彼の鼻にしわが寄るの。
ゲ:これはどこ?大学だったかな。
スー:カーディフ大学ね。
モ:ステキな部屋だ。使えなくなるところだった。
モ:同じ建物が隣になかったからね。
スー:結局あきらめた。
モ:映像ではでっちあげることができる。



ゲ:パイロット版ではここがベイカーストリートだった。
別の場所のほうが単一な印象を与えずストーリーに合うと思った。
ゲ:ベイカーストリートのシーンは多いし生活の拠点でもある。
もっとロンドンを探索する方が面白い。すべてがひとつの場所で起きるよりね。
モ:バランスが難しい。一話目だからもっとベイカーストリートも見せたい。
だが薬物を捜索するシーンもあるから難しい。
もうひとつの大きな変更点は最後まで意見が分かれた。運転手を撃ったのがジョンだとわからない。
途中でジョンの姿が見えなくなりシャーロックと同じ瞬間にジョンが撃ったということに僕たちは気づく。
だが印象を弱めると思った。このふたりのシーンだけでは単調になる。
それにジョンのストーリーが語られないと最後に違和感が残る。



ゲ:ふたつの場面をうまくまとめられた。別の場面に切り替わっても緊張感が続いている。
「救世主は来るのか」とハラハラさせられるんだ。
モ:お決まりの展開だ。「間に合うのか否か。」銃を持っていることも忘れているからね。
ワトソンがホームズの命を救うというエピソードは原作には出てこない。
何度も助けているイメージがあるが実際はそんなことはしていない。



ゲ:現代版を作るうえでやや現実的でない設定も取り入れる必要があった。
ふたりは金が無いのによくタクシーに乗る。
バスには載せられないからいつもタクシーのの後ろだ。
もうひとつ面白いのはジョンがセンチで使ったリボルバーだ。
ロンドンで銃を持ち歩いたら違法だが大事な設定だ。
従軍時の銃を持つのが彼に合っているだけではなくかつて特定郵便局で強盗事件が多発したことも関係がある。
自分の身は自分で守らなければならなくなった。



モ:銃については何の説明もない。ただ彼は銃を持っている。
軍人にとって不適切なことだけどなぜか持っている。
ゲ:アメリカなら別だ。このシーンが派手な銃撃戦になるよ。
シャーロックは10丁持っている。コートの下にはマシンガンだ。
モ:ただ男ふたりが話すシーンだからいつも心配になる。
だが実に秀逸なツーショットだと思う。ベネディクトとフィルの演技は文句なしだ。
見事なふたりの演技が続く。



スー:見入ってたわ。
ゲ:次に話すのはシャーロックの服装だ。
「きちんとした服装」という原作の記述を基にした。
ゲ:派手でない上質なスーツで保守的なスタイル。
さらに必要になったのがコートだ。それからマフラーも。
ふたり
ゲ:撮影時期が冬だったから必要だったけど見覚えがあるかもしれない。
アメリカの画家フレデリック・ド・スティールの挿絵だ。
大きな下襟のあるコートにシルエットがよく似ている。彼がスーツを着た姿はめったに見ない。
夏は何を着るんだろう。
モ:そのうち決めないとね。ヒーローには定番のスタイルが必要だ。
刑事のような格好ではなく彼独特のスタイルにしないと。



モ:いいコートだ。ラスボーンとブルースを偶然にも踏襲しているようだ。
彼らもステキなコートを着てた。
ゲ:現代を舞台にしているからマントではなくコートだ。
モ:映画ではラスボーンが鹿撃ち帽に手を伸ばすとブルースが「ダメだ。約束したろ。」と。
ゲ:何の約束か気になる。
モ:時代設定を変えた事を認めてる。「1895年じゃないんだぞ。」
ゲ:君もやった。
「シャーロック・ホームズの冒険」の映画にもすばらしいジョークがあるんだ。
「君のせいで変てこな格好をさせられてる。」自分をネタにしていて面白い。



モ:このシリーズが続くならいずれは鹿撃ち帽を出すかもね。
ゲ:ふざけてかぶってたらパパラッチに撮られるとか。
モ:ヒーロー的なことをしたあと鹿撃ち帽姿で写真を撮られそのイメージを植え付ける。
ゲ:ベネディクトの最初の衣装合わせを覚えてる。
鹿撃ち帽でパイプをくわえた彼の写真を3枚、衣装係がメールをしてきた。
一瞬、何だ?と思ったけど、イタズラだったよ。「キマってるでしょ」と言ってた。

続きます。


やはり比べるとパイロット版は本編よりもこじんまりしてますよね。
時間の長さもあるだろうけど行動を広げる事でストーリーにも厚みが出た感じ。
パイロット版も好きですけどね。

この辺りはシャーロックと犯人の頭脳戦にハラハラし、
ジョンは間に合うのか?にもドキドキしてました。

名演技、名場面です。
ピンクは全ての場面が名場面ですよね。

A Study in Pink Audio Commentary その7

2018-05-19 11:02:32 | Sherlock S1E1 Commentary
コメンタリ―続きです。

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モ:気に入っているシーン。
意地悪なシャーロックの温かさが垣間見える。支配的だが優しい笑顔を見せる。



ゲ:パイロット版の頃、メールで議論した。
問題はシャーロックという男が人好きのするタイプなのかということだ。
僕らの描くシャーロックは原作より人間味があると思う。



ゲ:彼のような人物に僕らが興味を持つのは普通とは違う部分があるからだ。
彼に「友達のジョンだ」と言わせてみたいし「豆を買っとく」と言わせたりした。
そのくらいなら問題ないと思う。だがそれを超えると彼の魅力がなくなってしまう。



モ:キャラクターを壊さないようセリフひとつひとつを検討しないと。
スー:第2話でカードを貸す場面があった。ふたりはカードを共有している。



モ:アンダーソン役のジョナサン・アリス。髭が無い。
本人もこれを聞くだろうから髭を剃らせた理由を言う。
パイロット版を見た人が付け髭をしてるから彼を悪者だと思ったんだ。
ジョナサン、ごめん。
ゲ:もう生やすな。



モ:このシーンから彼が過去にドラッグを使っていたと分かる。
ゲ:レストレードは知っている。
スー:様々な要素が・・・・ここにあるのよね?
ゲ:思い出した。「Waiting for Guffman」という映画がある。
クリストファー・ゲスト演じる監督のコーキーが言うんだ。
「ワトソンが言ったように要素は・・・続いてくるのだ。」



モ:大事なのはこのシーンにモリー以外の全員が揃っていることだ。
レストレードはずる賢い方法で威厳を保とうとしている。
シャーロックにとってはありがたいことじゃない。
レストレードはシャーロックが事件を解くと分かっている。だから頼んだ。



ゲ:だがシャーロックが主導権を握っていても警察は捜査を続ける。
裁判所に行くとか面倒な仕事があるから。
ゲ:出来上がった3つの脚本の中からたくさんの見事で印象的な名シーンが生まれた。
ラボのシーンもこのシーンも演技が最高だ。めったに見られる芝居じゃない。
型にはまらない柔軟性を持って声の高さやペースを変えれば演技に入り込めるものだ。



モ:ある夜、このシーンのことを考えていた。
登場人物たちが出てきて何かを話しシーンから消える。
「ドクター・フー」ではできなかった事だ。ひとりの話が5~6分の長さだからね。
スー:細かいけど素晴らしいと思ったのはコートが1階に置いてあるという設定よ。
シャーロックは2階でコートを着なくて済む。
モ:こっそり出かけるからね。



モ:「mephone」は僕が考えた。
ゲ:おかしな話だけどこうするしかない。
特定の有名なウェブブラウザや映画などを参考にして,
他人が考えたステキなデザインを訴えられない程度にマネて作り替える。
ゲ:ユニオンジャックのクッションは僕も持ってる。
ポールはクッションを見て聖アンデレ十字に替えたがった。
スー:スコットランド人だから。



モ:がっかりさせる事実だがこの運転手はフィル( フィル・デイヴィス)じゃない。
ゲ:ベネディクト?
モ:まさか。
ゲ:君は脚本でこの場面を怪談みたいに不気味に書いた。
それが映像にうまく再現されている。帽子と眼鏡だけがうかび幽霊が立っているみたいで恐ろしい。
スー:フィルは別のドラマを。
ゲ:「ホワイトチャペル」だ。
帽子がタクシー運転手すぎるとパイロット版で言っていたが君はフィルがいないなら帽子は残そうと。
スー:ある日曜日、またロンドンで撮影していたら隣で「ホワイトチャペル」を撮影していた。
制作者と話したら「すべて順調」だと言うの。嫉妬したわ。
ゲ:こっちはフィルがいなくて困った。



ゲ:「緋色の研究」と明らかに異なっているのは辻馬車の御者がふたつの丸薬を使う点だ。
モ:原作の目的は復讐だ。アメリカで妻を殺したひとたちに犯人は復讐をしている。
だから殺す相手は悪い奴らだ。だが彼は信心深いからチャンスを与える。
どっちが生き残るべきか神に決めてもらう。
ゲ:神が味方する。



モ:だが動機に関する回想が長すぎるのが原作の欠点だ。
だから彼にもっと単純な動機を与えた。動脈瘤を持っている設定は同じだけど。
原作ではジェファーソン・ホープ、僕らの犯人はジェフだ。
ホープ(希望)に殺されされるなんて最悪だ。
僕らの話と逆で原作では犯人がベイカー街に呼ばれる。
ゲ:種明かしのためだ。
モ:かばんを取りに来た彼にホームズは手錠をかける。
僕らは話したよね。コナン・ドイルのミスはホームズに薬を選ばせなかったことだ。
ふたつの薬からひとつを相手に選ばせてひとつは自分が飲むと言う発想は画期的だよ。



モ:コナン・ドイルはその見事さに気づいていなかった。
ゲ:君はラストに加えた。
スー:これがシャーロックの「中毒症」ね。
ゲ:危険だ。
モ:彼はこの高揚感を味わうため若いころはドラッグをやっていた。
ここで事件を終わらせることができるのに好奇心に勝てずに誘いに乗る。
シャーロックの荒っぽさについて一度こう書いたけどぎこちないからカットした。
「ルールがあり複雑だから正義の味方をする」



ゲ:ハードルを上げる
モ:だが荒っぽいシャーロックは話が進むにつれ「死んでもモリアーティを阻止する」と言う。
彼は単なる正義の味方ではなくもはや正義になった。
ゲ:正義そのもの。
モ:やんちゃなタイプかもしれないけど。でも大きな前進だ。すてきな話だよ。
タクシーの中
ゲ:だからワトソンを通して語られている。
原作にはホームズが語っているストーリーが2作品ありそれらも新鮮で魅力がある。
だけど第三者を通したほうがワクワク感が高まって面白い。
嫌な男である彼が愛すべき男になる瞬間を僕らは拾っている。人間味を持つ彼を見たいから。



モ:人間らしさは必要だ。
彼をずっと冷徹なイカれ野郎にはしておけない。
ゲ:ドラマの冒頭からシャーロックが危険を好む人間だと言うのは明らかだ。
サリーは「退屈に耐えられずそのうち人を殺す」と。だが突然ジョンが現れ2人は意気投合する。
ゲ:つまり感情がないわけじゃ・・・・
実際のシーンはないけど落ち込むと4日間口を利かずソファに寝そべってる男だ。
スー:このセリフは何かの引用?「善良な男」
モ:いや「善良な男」は僕が考えた。
ゲ:「壁紙のない」映画から「善良で偉大な男」って作品さ。


続きます。


「善良な男」のセリフの原文です。
「Sherlock Holmes is a great man.
And I think one day, if we’re very, very lucky, he might even be a good one.」

冒頭の場面は誰もが認める名場面、好きな場面の上位に入る今更説明不要な場面です。
S3のStag Nightのふたりも仲良しで可愛かったけど、でもやっぱりこっちの方が好きだなあ。
「Not good?」の場面にも萌え死にました。
「喋るなアンダーソン、IQが下がる」(でしたっけ?)も名セリフだと思うし。

以前も書いたことなのですが、シャーロックが推理を披露するところはひとり舞台のようでした。
でも観客はみんなシャーロックについていけずただ遠巻きに見ているだけなので
「なんでわからないんだ。」と言うシャーロックが滑稽で、そして孤独でちょっと切なくなります。

A Study in Pink Audio Commentary その6

2018-05-16 21:50:38 | Sherlock S1E1 Commentary
コメンタリー続きです。


私の大好きな場面のひとつ。
ベネディクト横顔フェチにはたまりません。

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モ:もうひとつ悩んだのがどう名前を呼び合うかだ。
ゲ:すぐに苗字では呼ばないだろうと思った。”モファット”も賛成したよ。
モ:不自然だろ。
ゲ:だが同時に疑問がわいた。「シャーロックとジョン」?
面白い事に何度プレスリリースを出しても「シャーロックとワトソン」と呼ばれる。ジョンは平凡な名前だから。



スー:シャーロックは変わっている。
ゲ:でも一度聞けば慣れてもらえると思う。名字で呼び合っていたら不自然だ。
モ:「ホームズ」「ワトソン」なんて寄宿学校の男子生徒みたいだ。
堅苦しいしあか抜けないし古臭いけど本当にできるのか何日か検討した。



ゲ:ふたりをファーストネームで紹介するのは初めてのことだから。
名前で呼ぶ許可を得る前は「ホームズさん」第一話の最初のうちは「ワトソン先生。」
自然になじませている。




スー:夜7時から朝6時までこの店にいた。外の様子が刻々と変わった。
暑い夜だから外でお酒を飲む人が多くいて誰もいなくなり男が来た。
ゲ:チャップリン以外はクソだと言っていた。
モ:いつ?
スー:真夜中だった。その後、静かになり気づいたらコーヒーを手に会社へ向かう人々がいた。
モ:もう朝になってる。
ゲ:長い撮影だった。



モ:おそらく議論になる問題はシャーロックのセクシュアリティだ。
あいまいとか謎だと言われるが原作を見ると明らかだ。
まったく興味がないんだ。彼は脳以外の部位には興味がない。
ゲ:「重要じゃない」
モ:パイロット版にあったセリフだ。
女性に興味がないからゲイだと言う人がいるけど男にも興味がない。恋愛は彼の領域ではない

(このあたりの会話をあらためて聞いてみると、
「さっき会った人誰?」とか彼女いる?」とかは知り合って間もない人同士の普通の会話ですよね。
でもなぜだか見ているこっちが少々照れてしまうのは、
このふたりの表情が何というかあまりにも・・・(語彙不足)だからなんですよね。
と、思うのは私だけかもしれないけど。何しろ根が腐っているので。

以前も書きましたが「君が何でも僕は構わないんだ。」は名訳だと思います。
原文は「I’m just saying, it’s all fine.」です。



スー:ジョンは結婚を?
モ:原作ではそうだ。
ゲ:ドラッグのことを同じで120年で200通りくらい様々な解釈がされてきた。
ほんの小さなことを必要以上に大げさに取り上げて解釈したものばかりだ。
例えば彼を打ち負かした女もそのひとつだ。
彼が愛している女性というわけじゃない、出し抜かれた唯一の女性だから関心を持っている。
ロマンスを予測する説が出るのも当然だが面白いのは本来の意味とは異なる解釈ができるって事。




モ:「ボヘミアの醜聞」の書き方は絶妙だね。
外に出る
モ:ホームズは彼女への恋心を認めたくないとも考えられる。
コナン・ドイルは巧妙な作家だ。数多くの映画でホームズと魔性の女の対決が描かれている。
彼が恋するのは悪女だけだ。
ゲ:「蜘蛛女」も。



(以前、ベネディクトがシャーロックとアイリーンの一夜について言及したことがありました。
演じている本人がそれを言わないでほしいと思いましたが、
一方でそれを言わなければならないほど周囲がヒートしていたのかもしれません。
だけどもしS3からの崩壊がファンの暴走だったとして、
このドラマが放送された頃からずっとシャーロックとジョンをカップルに、
つまりファンフィクで盛り上がっていたと思いますが、なぜ今更なんでしょうね。
いずれにしてもシャーロックがファンによって壊されてしまったというのならそれはとても悲しいです。)



スー:ソーホーで走り回り大変だったチェイスシーン。スチールカメラをたくさん使った。
キャノンのカメラだった。
モ:シーズン1の最期の撮影だ。終了後朝6時に乾杯した。
スー・撮影助手が改造した三輪車を使った。



ゲ:ロンドンで撮影するのは不可能だとみんなが言う。僕らはソーホーの中心から5番通りにいた。
近くの道路は人であふれていてグリーク通りは大騒然。だがディーン通りは静かですごく不思議だった。
モ:僕らが食事に行っている間、ポール・マクギガンは残って小さなカメラで標識の写真を撮っていた。
スー:彼は昔写真家として活躍していた。




ゲ:カーディフに戻った。
モ:全3話のエピソードからものすごくロンドンの空気が伝わっていると思う。
だけどロンドンで撮影したのは?
ゲ:5~6日?
モ:1話につきたった1週間だ。
ゲ:「オースティン・パワーズ」風になるべくぼかして表現した。
例えばみんなが知っているピカデリー・サーカスはバスがあふれる独自のピカデリーにした。



ゲ:現代的なロンドンがわかる。
第2話では現代のロンドンを体現した「金融の宮殿」であるガラス張りの高層ビルを出した。
カーディフは寒かったよ。寒さはきついがうまくロンドンのかわりになった。



続きます。

さんざん振り回して怒り出すかと思ったら笑い出すジョンを見て不可解な表情のシャーロック。
一緒に夢中になって楽しんでくれそうな人が見つかって良かったね、って言ってあげたい場面でした。

このエピソードはもちろんシャーロックというドラマのイントロダクションなんですけど
同時にジョン・ワトソンのPVも兼ねている事にやっと気づいたこの頃です。