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GPSを持参すればホワイトアウトの時に有効、という概念が一般的にあるようですが、現実はそんな生やさしくないない状況が多いし、GPS操作に慣れて置かなければ現場では使い物にはなりません。
ホワイトアウトといっても色んなレベルがあって、自分の足元も見えないような濃い状況から雪とガスの境目が判らない視界数メートルといった場合がありますが、一般的には目標となるものが見えないという視界十数メートル以上まで含めて言う事が多いようです。
自分の足元も見えないような濃い状況なら、例えGPSによって進行方向が判っても、足元の雪の状況が判らないし、段差も解らないのですから極端に言えば、簡単に雪庇を踏み抜いたり、クレバスに落ちてしまったり、スキーでなら例えゲレンデでも小さなコブに引っかかって転倒してしまいします。こんな状況では無風・無降雪という状況は珍しいでしょうから行動不能となってしまうので、他の対応を考えるべきなのでしょう。
行動可能な状態でも、吹雪の中ゴーグル・ミトンを着けた上にGPSを操作して小さな画面から進行方向を判断するのはかなり困難なものです。まあ、現実は甘くない事が多いのですが、しかしそれでもGPSを使いこなす為には操作に慣れて置かなければなりません。
GPSは軌跡が取れるので、実際に使った事の無い人は概念として元に戻れるのは簡単で問題無いと思っている人が多いようです。しかし、実際の体験から言えば気象状況を除いても、GPS特有の特徴から、色々克服しなければなりませんでした。具体的な問題として、次のような点があります。
- 地図画面が小さく一覧性が無い
- 軌跡は線であってどちらの方向に進んだかの軌跡として方向は表示はされない(単に線である)
- 画面表示方法に、地図の上を北に表示(ノースアップ)するのか、進行方向を上(トラックアップ)にするのか、2通りの方法がある
- 天気や時刻の状況によって画像が暗くて見にくい場合がある
海外登山をする人にとって、現地の紙地図を事前にGPSに挿入できる余裕のある場合はかなり楽になります(これができる人ならかなり判っている人なので必要はないでしょう)が、現地地図を事前にGPSに挿入できなかった場合を想定して、事前にトレーニングしておくべき例題として、1つシミュレーションしてみましょう。
(実際、マナスルで起きた事象の模擬です。GPSMap60CSxでの場合です)
海外の山に居てGPSに詳しい地図が入っていない場合は、縮尺をスケールOUTして広い範囲を表示しても、目印になるポイントは現れません。そんな状況で、(C3から)元来たルートをたどって(BCに向かって下って)戻ろうとしている時、降雪のためトレースが消え、風で地図を広げるのは困難な中、ホワイトアウトに近くなってきたので、現在位置や、進行方向が判らなくなって来ました。
勘で少し進みましたが、どうも不安です。標高は5,500mです。元に戻るべきなのですが風雪の中、むやみにラッセルして登り返すのは厳しく躊躇します。そんな中でGPSで確認するためにGPSを見た画面が下図とします。 それまで記録してきた昨日の軌跡が残っている筈です。
【止まってGPSを見ると、画面がフラフラしたり回転したりしています】
この画面から、この時の設定は「スケール(縮尺)80m」で「北矢印アイコン」が出ているのと「北矢印アイコン」や地図が回転するので「トラックアップ」という事が判ります。画面を見るため止まると、画面がフラフラしたり回転したりしていますが、元のルートは現れていません。
(周辺の尾根などのために衛星が陰になって捕捉数が少なく、受信レベルが少しでも変動する場合、スケール80mではズームアップが大きいので、位置がずれてフラついたり、進行が止まったために進行方向が安定しないため画面が回転したりするのです。)
【(参考):止まっていても、衛星捕捉数が少なく、
受信レベルが少しでも変動すると位置がずれてフラつき、
あちこちに歩き回っているような軌跡になります】
いずれにしてもこの瞬間、北東に進んでいることが判ります。おおまかな方向としては良いのですが地形が複雑なので少しでもルートを外すと危険箇所が多いので、元のルートに戻りたいと思います。最近通った昨日の軌跡が近くにある筈ですが、画面には現れていません。どうすれば良いのでしょうか。
ここですべき事は、
- スケールアウトして表示範囲を広げる
- 画面がフラフラしないよう、ノースアップに切り替える
の2つです。スケールアウトは「アウト」ボタンを押すだけで簡単ですが、止まって画面を確認する時に画像がフラフラしないようにノースアップに切り替えるのには次の6ステップが必要です。
- メインメニュー画面を出す
- 「設定」アイコンを実行
- 「地図」設定アイコンを実行
- カーソルで左端の「一般設定」タブを選択
- 「地図方向」で「ノースアップ」を選択
- 「戻る」キーで地図画面に戻る
・(状況によっては「バックライト」操作)
→
→
→
【メインメニューを出す】→【「設定」アイコンを選択】→【「地図」設定アイコンを選択】→→→
→→
「一般設定」選択】→【「トラックアップ」を「ノースアップ」に変更】→【地図画面に戻る】
状況が困難な中で、これらの操作はかなり厳しいものです。
(なお、私のGPS単体だけなのかも知れませんが、マニュアルにある「衛星状態」ページで「メニューボタン」を押して、「オプションメニュー」で「トラックアップ/ノースアップ」の切り替えができるとされていますが、オプションメニュー上での表示は切り替わっても、バグなのか地図画面では実際には切り替わりません。なので少しステップが増えるのです)
スケールアウトして表示範囲を広げます。(こちらを先にしても良いですが)
【昨日の軌跡の分岐点が現れました。今までの行動の
記憶から左折するべき所を直進したようです。】
【更にズームアウトすると目印が現れました。
「BC」とインプットしていた文字が見え始めたのです】
吹雪や夕闇の中での操作で画面が見辛い場合であれば、「バックライト」操作も必要になる事もあります。
【電源ボタンをチョン押しして「バックライト」操作を始めます】
次に、地図の拡大・縮小を繰り返しながら軌跡を辿るか、状況によっては近道を取ってトラバースするかして元のルートを辿れます。
【軌跡をたどっている時、「トラックアップ」であれば、
止まると画像が回転する場合があり、軌跡は線であって
どちらの方向に進むべき方向かの表示はされませんので、
勘違いしないように注意する必要があります。】
BCのように、目印になるポイントをインプットしておくのは大切な事です。
また、軌跡がGPS本体で残るのは、内蔵メモリの場合は10000ポイントが限界ですのでこれを超えるポイントになる(「軌跡ログの容量」が99%になる)と、「上書きモード」に設定されていると、古いポイントの上に順次新しいポイントが上書きされて、消えていきます。この特性から、どの間隔で軌跡を採取するか決めておかなければなりませんし、色んな設定もしっかりしておかなければなりません。
【「軌跡ログの容量」が99%になると古いポイントは消える】
「時間」間隔に設定すれば、じっとしている事が多い場合には余計なポイントを消費するのでロスが多くなります。この画面の「設定」から、「自動」か「距離」にするのが良いと思われます。自動での採取間隔のアルゴリズムは判らないですが、「最高・高・標準・低・最低」から選びます。いずれにしても、「軌跡ログの容量」が99%になる前にこの画面の「保存」から、内蔵メモリの「軌跡ログ」を保存しておく必要があります。現地では直接関係ありませんが「データカードに軌跡保存」も設定しておくべきです。
もし欲しい地点の軌跡が現れて来なかったら、保存ログを呼び出す必要があります。残っている軌跡あるいは、保存された軌跡を使って元の・日・時・分のポイントへの「軌跡ナビ」ができますが、軌跡と現在地が離れていると方向だけの直線になるので、使いにくいので余り使っていません。→
→
【軌跡ナビ開始】 【戻りたいポイントの選択】 【軌跡ナビ】
このくらいの操作が、理解できているだけでなく、厳しい状況の中で操作できるように事前設定・トレーニングしておきたいものです。
普通、道具は先ず「触りまくる」。判らなかったら「取説を探す」。を繰り返し、ある程度したら「取説を1からひと通り、しっかり読んで、自分流の設定を行う」の「手順を踏む・繰り返す」のが良いと思うのですがネ~。
「宝の持ち腐れ」の人は、「判らへん」ばかり言って、人に質問ばかりして、取説をしっかり読まない人でした。
パソコン習得も同じような気がします。パソコンはそこらに解説書が溢れているのでもっと楽ですが・・・。