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プルートで朝食を

2014年10月14日 02時59分02秒 | 洋画2005年

 ☆プルートで朝食を(2005年 イギリス 127分)

 原題 Breakfast On Pluto

 staff 原作/パトリック・マッケーブ『Breakfast On Pluto』

    監督/ニール・ジョーダン 脚本/ニール・ジョーダン、パトリック・マッケーブ

    製作/アラン・モロニー、ニール・ジョーダン、スティーヴン・ウーリー

    撮影/デクラン・クイン 美術/トム・コンロイ

    衣装デザイナー/エミア・ニ・ヴォールドニー ヘアドレッサー/ロレイン・グリン

    メイクアップ/リン・ジョンストン オリジナル・ピアノ曲/アンナ・ジョーダン

 cast キリアン・マーフィー リーアム・ニーソン スティーヴン・レイ エヴァ・バーシッスル

 

 ☆1960年代後半、アイルランド南部タイリーリン

 プルートは、ローマ神話に出てくる冥府の王のことだけど、

 ここでいうプルートは冥王星のことでもあるんだよね、たぶん。

 ま、冥府にしろ、冥王星にしろ、

 そこで朝食をとるってのは、つまり、凍りついてしまったところで暮らすってことで、

 凍りついてしまったところっていうのは、寒々しい心の暮らしの中でってことだ。

 凍りついた寒い心というのは、キリアン・マーフィー演じるキトゥンの出自による。

 そもそも神父のリーアム・ニーソンが家政婦を孕ませて産ませただけでなく、

 さらに教会の前に捨てられていたのをニーソン直々に里親に出されたんだから、

 性格がぎこちなくなるのはなんとなく納得もいこうってものだ。

 要するに母親から捨てられ、さらに父親からも捨てられたんだから。

 結局、性同一性障害が高じて女装趣味に走っていき、

 どういうわけか北アイルランド闘争にまで巻き込まれていったりしながら、

 母親探しの旅を続けていくわけなんだけど、

 かれらを見下ろす小鳥の会話で始まりそして終わるという、

 ある種の寓話に近い感じになってる。

 その寓話の舞台が、冥王星あるいは冥府という寒々しい心にあるんだね。

 ところで、冥王星っていうのは、もともとぼくたちは惑星として習った。

 水金地火木土天海冥ってのは、日本人ならたいがい知ってる。

 ところが、2006年夏、

 冥王星は太陽系第9惑星の地位から準惑星に格下げされちゃった。

 さらに、

 冥王星の最大の衛星カロンがあまりにもでかすぎて、

 二重惑星ともいわれるようになっちゃった。

 もう踏んだり蹴ったりの冥王星で、

 これって、

 男と女で成り立ってる世界から弾き出されそうになってるキトゥンそのものじゃないか。

 映画ができてから正式に格下げされたんだけど、

 もともと太陽系惑星にしては小さく、はたして惑星かっていう論争はあった。

 それが、

 2003年に冥王星よりも大きな2003 UB313っていう太陽系外縁天体が発見されたことで、

 ほぼ決定的に惑星ではないっていう終止符を打たれたも同然になっちゃった。

 なんだかね、そういう時代につけられた題名なんだよね。

 プルートってかわいそうだわ。

 でも、そんな星の下に生まれながらも、

 キリアン・マーフィー演じるキトゥンは、

 リーアム・ニーソンのことも許しちゃったりするし、したたかに強く生きていく。

 いや、設定されてた心は寒いけど、観客の心は温まる作品だったかなと。


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