今後の生命の危険性から、原発全廃と、瓦礫のばらまきを阻止して被災地に瓦礫を留めておく事の必要性を思いながら、本書を読みました。
「内部被曝の真実 」(著者:児玉龍彦氏、出版社:幻冬舎新書、出版日:2011/9/8)
本書が出版された福島原発事故の半年後の時点で、広島・長崎の20倍の放射線量の放出と言われていますが、セシウム換算では800倍、チェルノブイリ原発事故の何倍とも言われています。種々の放射性物質の摂取によって影響の出る身体の組織・器官の部位に違いが有り、「ヨウ素131」は甲状腺に対し影響力が有り半減期8日、「セシウム137」は水溶性で尿管上皮・膀胱で強力なγ線・β線を放出し半減期30年、「ストロンチウム90」は骨髄でβ線を放出して半減期29年、肝臓の造影剤「トロトラスト」に使われていた「トリウム232」は肝臓や肺臓、膵臓でα線を放出して半減期140億年等と、身体の体内に長期間残留して蓄積し内部被爆を起こします。放射線の中で最も人体に対する作用が大きいのはα線です。人体に対する作用の大きさにおいてx線を1とした場合に、γ線が0.6~1、β線が1、陽子線が1~10、中性子線が2~10、α線が15~20です(放射線荷重係数)。
比較的半減期の短いヨウ素131も、チェルノブイリ原発事故の際にはガンと原発事故との関連性が認定されるまでに20年を要しました。その際には前例が無くデータが不足してエビデンスが得られなかった事もあって、癌や慢性疾患、急性疾患等の原発事故が原因であるという判断がし難かったと言う事も有りました。しかし、福島原発事故の場合にはチェルノブイリのデータが有り、ある程度のエビデンスが存在しているはずです。原発事故由来の疾患の認定には、政治や企業の利権も関係します。又、20km内の警戒区域、30km内の緊急時避難準備区域、その範囲外の計画的避難区域が政府によって指定され、その地域の方の避難に対しては補償金が降りますが、その指定から漏れた地域の方が遠方の地域に避難した場合には国からの補償金が出されません。内部被爆は瓦礫のばらまきや飲食品・大気の摂取など様々な形で人間の体内に摂取されますが、政府の指定している範囲内だけでは無く、より広範囲に影響が出ます。茶葉においては、静岡の辺りにまで基準値を超える影響が出ています。又、ガン等の発症には20年~30年かかり、原発事故との関連性が認められるまでにも時間を要し、其々のエビデンスが得られるのも時間の経過と共に被災者を始めとした周辺地域、及び物流等によって広がった放射性物質を摂取した可能性の有る人々を監視して調べていく事による為に、事故が起きてからすぐに必要な補償金・賠償金が出してもらえず、最悪の場合、亡くなってからの補償・賠償となってしまいます。
富山県神通川下流域におけるイタイイタイ病発生原因のカドミウムの除染に対する国費が、3000ha(1万'u)の半分実施の時点で8000億円かかっており、福島原発の除染は1000倍の範囲に必要だとされ、単純計算だけでも800兆円がかかるとされています。又、空間の放射線測定値はその場所の平均値であり、雨樋の下やすべり台の下等の部分的に放射線量が多く溜まっている「ミニ・ホットスポット」が在り、一概に、平均的に対処する事が出来ません。先述の放射線物質の種類によって身体の中の蓄積する部分が違ってくる事があり、携帯型の簡易放射線量計測器で身体の表面の放射線を計っただけでは詳細な部位等までが解らない事も併せて、其々における個々に応じた対応・処置・治療等が必要です。一つの根拠、一つのパターンに当てはめて診る事は出来ません。それらの現段階で根拠とされているものに当てはまるものだけが原発事故と関係が有る訳ではありません。その根拠には、政治・官僚・財界・外国権力等の利権が関係しています。因みに原発の利権問題や批判から、管理職の女性が暗殺された東電OL殺人事件やその他冤罪事件等の不可解な事件が数多く起こされて来ました。
放射性物質の摂取により遺伝子が損傷を受けます。細胞の中の核には多数の染色体が存在し、染色体の中に多くの遺伝子が存在します。その遺伝子を構成するのが二重らせん構造をとるDNAであり、細胞分裂の時に二重らせん構造がほどけて不安定となった時に放射線によって切れやすくなります。普通は「p53遺伝子」によって、各細胞内でDNAの修復や細胞増殖の抑制、アポトーシス(細胞死)を起こして癌細胞の増殖を抑制しているのですが、放射線によってこの癌抑制遺伝子が損傷を受けてしまって、生体の恒常性を失ってしまい癌を引き起こしてしまいます。セシウム137の場合、腫瘍マーカーとしてNF-κBとp38マップキナーゼの活性化や、p50、p65遺伝子の増殖が有ります。
施設によって放射線核種の取扱に制限が有り、著者は法律違反を犯して事故後の緊急時から除染作業を行っております。緊急時に行政に頼るだけでは間に合わず、法律の改正を求めております。
元々地球上にはセシウム137は無く、ストロンチウム90も殆ど存在しませんでした。第二次大戦前の1940年から原爆実験が始められ、広島・長崎原爆の1000倍の放射線を放出する水爆実験を第二次大戦後に行って来ましたが、猿橋勝子博士の働きかけで1963年に米・英・ソによって部分的核実験禁止条約が締結されて、其の後にそれらの放射性物質の月間降下量が減少化しました。しかしその後も、核保有国の地位を認められている以上3ヶ国以外のフランスや中国と、認められていないイスラエル、北朝鮮、インド、パキスタンが水爆実験を繰り返して地球上に放出されました。因みに1963年はレイチェル・カーソンの働きかけで米国での有機塩素系殺虫剤であるDDTの全面禁止や、1961年から1975年までの米軍によるベトナム戦争でのダイオキシンを含んだ枯葉剤の散布を行なっていた背景があります。当時の米国大統領はケネディで、その1963年に亡くなっています。レイチェル・カーソンも翌年に亡くなっております。
著者は、内部被曝の原因となる食品検査に、医療で用いられるPETやSPECTで使われる検出器を応用する事を提案しています。それらは陽電子や光子を用いたCTで、身体の内部からの放射線を外部で検出して画像として表す物で、非常に感度が良く試作品も短期間で比較的安価で作る事が出来ます。
科学を今後は経済・産業の限りある成長に用いるのでは無く、人間が地球上に出してしまった放射性物質の処理や除染、廃棄物の処理、再生可能代替エネルギー等の自然環境の回復と保護に用いるべきで、発展途上国等の不足する地域への広い限りない発展が必要です。自然環境の回復と保護が、その生態系の一部である人間の回復と保護にも繋がります。
著者は言います、「・・・みんなが専門家に聞きたいのは、何も政治家みたいに折り合いをつけることじゃない。危険を危険だとはっきり言うのが専門家なのです。今までの原子力学会や原子力政策のすべての失敗は、専門家が専門家の矜持を捨てたことにあります。国民に本当のことを言う前に政治家になってしまった。経済人になってしまった。これの反省なくしては、・・・日本の科学者の再生もありえないと思っています。」。マスコミも含めて、権力者に迎合したり媚びへつらったりせず、真実を述べられる事が望まれます。
「内部被曝の真実 」(著者:児玉龍彦氏、出版社:幻冬舎新書、出版日:2011/9/8)
本書が出版された福島原発事故の半年後の時点で、広島・長崎の20倍の放射線量の放出と言われていますが、セシウム換算では800倍、チェルノブイリ原発事故の何倍とも言われています。種々の放射性物質の摂取によって影響の出る身体の組織・器官の部位に違いが有り、「ヨウ素131」は甲状腺に対し影響力が有り半減期8日、「セシウム137」は水溶性で尿管上皮・膀胱で強力なγ線・β線を放出し半減期30年、「ストロンチウム90」は骨髄でβ線を放出して半減期29年、肝臓の造影剤「トロトラスト」に使われていた「トリウム232」は肝臓や肺臓、膵臓でα線を放出して半減期140億年等と、身体の体内に長期間残留して蓄積し内部被爆を起こします。放射線の中で最も人体に対する作用が大きいのはα線です。人体に対する作用の大きさにおいてx線を1とした場合に、γ線が0.6~1、β線が1、陽子線が1~10、中性子線が2~10、α線が15~20です(放射線荷重係数)。
比較的半減期の短いヨウ素131も、チェルノブイリ原発事故の際にはガンと原発事故との関連性が認定されるまでに20年を要しました。その際には前例が無くデータが不足してエビデンスが得られなかった事もあって、癌や慢性疾患、急性疾患等の原発事故が原因であるという判断がし難かったと言う事も有りました。しかし、福島原発事故の場合にはチェルノブイリのデータが有り、ある程度のエビデンスが存在しているはずです。原発事故由来の疾患の認定には、政治や企業の利権も関係します。又、20km内の警戒区域、30km内の緊急時避難準備区域、その範囲外の計画的避難区域が政府によって指定され、その地域の方の避難に対しては補償金が降りますが、その指定から漏れた地域の方が遠方の地域に避難した場合には国からの補償金が出されません。内部被爆は瓦礫のばらまきや飲食品・大気の摂取など様々な形で人間の体内に摂取されますが、政府の指定している範囲内だけでは無く、より広範囲に影響が出ます。茶葉においては、静岡の辺りにまで基準値を超える影響が出ています。又、ガン等の発症には20年~30年かかり、原発事故との関連性が認められるまでにも時間を要し、其々のエビデンスが得られるのも時間の経過と共に被災者を始めとした周辺地域、及び物流等によって広がった放射性物質を摂取した可能性の有る人々を監視して調べていく事による為に、事故が起きてからすぐに必要な補償金・賠償金が出してもらえず、最悪の場合、亡くなってからの補償・賠償となってしまいます。
富山県神通川下流域におけるイタイイタイ病発生原因のカドミウムの除染に対する国費が、3000ha(1万'u)の半分実施の時点で8000億円かかっており、福島原発の除染は1000倍の範囲に必要だとされ、単純計算だけでも800兆円がかかるとされています。又、空間の放射線測定値はその場所の平均値であり、雨樋の下やすべり台の下等の部分的に放射線量が多く溜まっている「ミニ・ホットスポット」が在り、一概に、平均的に対処する事が出来ません。先述の放射線物質の種類によって身体の中の蓄積する部分が違ってくる事があり、携帯型の簡易放射線量計測器で身体の表面の放射線を計っただけでは詳細な部位等までが解らない事も併せて、其々における個々に応じた対応・処置・治療等が必要です。一つの根拠、一つのパターンに当てはめて診る事は出来ません。それらの現段階で根拠とされているものに当てはまるものだけが原発事故と関係が有る訳ではありません。その根拠には、政治・官僚・財界・外国権力等の利権が関係しています。因みに原発の利権問題や批判から、管理職の女性が暗殺された東電OL殺人事件やその他冤罪事件等の不可解な事件が数多く起こされて来ました。
放射性物質の摂取により遺伝子が損傷を受けます。細胞の中の核には多数の染色体が存在し、染色体の中に多くの遺伝子が存在します。その遺伝子を構成するのが二重らせん構造をとるDNAであり、細胞分裂の時に二重らせん構造がほどけて不安定となった時に放射線によって切れやすくなります。普通は「p53遺伝子」によって、各細胞内でDNAの修復や細胞増殖の抑制、アポトーシス(細胞死)を起こして癌細胞の増殖を抑制しているのですが、放射線によってこの癌抑制遺伝子が損傷を受けてしまって、生体の恒常性を失ってしまい癌を引き起こしてしまいます。セシウム137の場合、腫瘍マーカーとしてNF-κBとp38マップキナーゼの活性化や、p50、p65遺伝子の増殖が有ります。
施設によって放射線核種の取扱に制限が有り、著者は法律違反を犯して事故後の緊急時から除染作業を行っております。緊急時に行政に頼るだけでは間に合わず、法律の改正を求めております。
元々地球上にはセシウム137は無く、ストロンチウム90も殆ど存在しませんでした。第二次大戦前の1940年から原爆実験が始められ、広島・長崎原爆の1000倍の放射線を放出する水爆実験を第二次大戦後に行って来ましたが、猿橋勝子博士の働きかけで1963年に米・英・ソによって部分的核実験禁止条約が締結されて、其の後にそれらの放射性物質の月間降下量が減少化しました。しかしその後も、核保有国の地位を認められている以上3ヶ国以外のフランスや中国と、認められていないイスラエル、北朝鮮、インド、パキスタンが水爆実験を繰り返して地球上に放出されました。因みに1963年はレイチェル・カーソンの働きかけで米国での有機塩素系殺虫剤であるDDTの全面禁止や、1961年から1975年までの米軍によるベトナム戦争でのダイオキシンを含んだ枯葉剤の散布を行なっていた背景があります。当時の米国大統領はケネディで、その1963年に亡くなっています。レイチェル・カーソンも翌年に亡くなっております。
著者は、内部被曝の原因となる食品検査に、医療で用いられるPETやSPECTで使われる検出器を応用する事を提案しています。それらは陽電子や光子を用いたCTで、身体の内部からの放射線を外部で検出して画像として表す物で、非常に感度が良く試作品も短期間で比較的安価で作る事が出来ます。
科学を今後は経済・産業の限りある成長に用いるのでは無く、人間が地球上に出してしまった放射性物質の処理や除染、廃棄物の処理、再生可能代替エネルギー等の自然環境の回復と保護に用いるべきで、発展途上国等の不足する地域への広い限りない発展が必要です。自然環境の回復と保護が、その生態系の一部である人間の回復と保護にも繋がります。
著者は言います、「・・・みんなが専門家に聞きたいのは、何も政治家みたいに折り合いをつけることじゃない。危険を危険だとはっきり言うのが専門家なのです。今までの原子力学会や原子力政策のすべての失敗は、専門家が専門家の矜持を捨てたことにあります。国民に本当のことを言う前に政治家になってしまった。経済人になってしまった。これの反省なくしては、・・・日本の科学者の再生もありえないと思っています。」。マスコミも含めて、権力者に迎合したり媚びへつらったりせず、真実を述べられる事が望まれます。
内部被曝の真実 (幻冬舎新書)価格:¥ 756(税込)発売日:2011-09-08 |
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