総タイトル:【私の鉄工所・町工場での経験と照らし合わせて......・・・「THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書 」を読んで】
世の中の鉄製品全般を担い、社会の根幹を支えて貢献する「鉄工所」、「町工場」。
汗やチリ・油にまみれて、作業着を汚しながら仕事をする正しさ。
「清貧」、「謙遜」を表している、町工場の小さな古い鉄工所。
「THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書 」(著者:相澤弘機氏、出版日:2010/6/15、出版社:文芸社)
上記の本を読みました。
著者は、大学の文学部英米語学科を卒業すると同時に父の興した大阪の町工場に入社し、その後代表に就任して機械屋として機械加工を日々行っています。早寝早起きが習慣らしく、学生時代からの大変な読書家で、学生時代には自分で小説も書かれていたとの事です。
私は、町工場の鉄工所に育てられました。私は普通科の高校を中退後暫くしてから町工場の鉄工所に見習から入り、最初は図面も読み取る事が出来ず、溶接もそれまではした事が無く、学校で習ったはずの三角関数もすっかり忘れてしまっていました。その後、見習の立場、先手(職人に付いて職人の手の様になって職人に使われながら働く事)の立場、或いはそこから少し毛の生えた様な状態の間に、同じ製缶を行なっている町工場の鉄工所に数ヶ所移り代わりました。その後、一人で仕事を任せられる様になってからも、仕事が少し薄くなった時に、他所の飯を食って見識を広げ、勉強して自分のレベルを上げる事を理由に、製缶工として同じ製缶の町工場の鉄工所の会社に移転しました。同じ職種を続ける為に、会社は代わっても、転職ではありません。
製缶と言う仕事は、幅が広くて奥も深い。製缶と言う名前からしてタンク等の缶かんばかりを作っている様に思うかもしれませんが、そうでは無く、鉄やステンレス等の非鉄金属を材料として、世の中のそれらで出来た物全てが商品としての対象となります。故に、同じ製缶をしていると言っても、会社によって取り扱う商品が異なって様々であり、小さい物から大きな物まで、建築関係、機械関係、輸送関係、食品関係、各種構造物、プラント関係設備等々、町工場の取引先の種類と数、顧客としている親会社の種類によって様々な内容となっています。
よって、同じ会社に居座っていると、そこの会社の事しか解らず、他所での仕事の事が解らなくなってしまいます。そこでの仕事が全てであると思い込んでしまったり、そこでのやり方が正しいと思い込んでしまったり、先輩やベテランの職人の言う事が正しいと思い込んでしまう事にもなりかねません。先輩やベテランの職人は俗にいう「カン」に頼っている部分が有り、それらは得てして職人の思い込みである事も多いです。現場での長年の経験から得た「カン」は価値が有りますが、一方で根拠の無い思い込みは間違っている事も多いです。私は見習時分からその様な疑う姿勢が有りましたので、見習の立場でありながらも余り言う事を素直に聞きませんでした。
以前は若かったので移転もまだ比較的容易かったですが、最近の町工場の不況もあって、同じ様にはいかなくなっています。昔の高度経済成長期の様に物の無い時代では無く、バブルの様な事も今後は起こる事は無いと思います。新規で物を作らずとも、日本国内は一般的に大方設備等は揃っていています。一方で、橋梁の老朽化等、現存設備のメンテナンス・保守点検・修理等は今後は忙しいものと思います。
市場至上原理主義、金融経済、グローバル化の下に、製造業が金融に支配されている為に、マネーゲームによって、特に下請けである町工場は煽りをまともに受けてしまいます。米国を初めとする各国の金融緩和政策によって、紙切れのお金が市中にばら撒かれ、物に比較して天文学的に余剰となっているお金を投資に用いている為に、モノづくりの実体経済は常に揺さぶられて不安定となって、直ぐに状況が変わってしまう事も有って、先行きは不透明で全く予想・予断が出来ません。
お金が大分余っているにも関わらず、下請けの町工場まではお金が回って来ません。政府の金融緩和による市中のお金の量を増やしても、銀行が自身の営利目的の為に日本よりも金利の高い海外に投資したり、元請けの大企業・メーカーはリーマンショックのイメージも色濃く記憶に残っていたり先行き不透明である事から内部留保をして、下請けにお金を回しません。そして、今後、或る時急にハイパーインフレが起こって、その不況の煽りを食らう恐れが有ります。
下請けの町工場は、親会社の都合でいい様に使われてしまいがちです。自分の所で仕事をしようとしていた品物が忙しくて手が回らなくて、納期がいよいよ迫ってきて出来ないからといって、その納期のままで下請けに出す為に、下請けの町工場は超特急で、遅くまで残業をしたり、外注として他の同業の町工場に仕事を分割して振り分ける等をして、その納期に間に合わさなければならない羽目になります。
不況で世間一般的に仕事の無い時には、元請けは多くの下請けに見積を出して、その中で最も値段の低い所に仕事を出します。しかし、値段を低く見積もる会社は赤字覚悟で見積を出している事も多く、仕事が無いよりはまし、従業員を遊ばせないよりはましと言う事で仕事を取る会社も多いです。
元請けの直接の1次下請けならまだしも、2次の孫請け、3次、4次、5次……と下のほうの下請けとなると、会社を通す度にピンハネ(中抜き)されて利益が出るどころか赤字覚悟の仕事、合わない仕事となります。
その様に、仕事をしても儲からず、却って仕事をする事によって赤字が膨らんでしまいかねないので、自分の所に工場の無い、事務所だけの鉄工所も最近は多いです。要するに、自分の所では工場の現場で物を作る仕事をせず、営業や見積、材料の発注等をするだけで、実際のモノづくりの仕事は通すだけで下請けに安い値段で押し付け、ピンハネする事で利益を得ています。また、派遣業者の様にして、大手の工場に従業員を入れているだけの所も有ります。
例え元請けの直接の1次下請けであっても、そことの取引量の割合が高い場合には、親会社の都合に左右されやすくなります。もしもそれが1社だけであると、そこに切られた場合には即倒産となります。逆に、2次や3次の下請けでも、仕事をもらう先の多くの顧客を持っていると、潰れにくいです。
ところで、大きな会社は従業員も多い為に、分業制によって一人ひとりの作業範囲は狭くなっています。逆に大手の「単能工」と違って、10人前後等の零細町工場は人数が少ない為に、「多能工」として何でも熟しています。多能工の場合は他所の同じ職種の会社に代わっても、融通が利き易く、柔軟性が有ります。よって、何処へ行っても通用しやすくなります。昔の「渡り職人」は、いろんな所を転々として多くの見識を持ち、融通の利く腕を持っていました。
鉄工所の事が、余り世間には理解されていないと思います。また、誤解も多いと思います。社会に影響を与えるマスコミの中でも特にテレビの場合には、スーツ姿のホワイトカラーの職場が舞台のドラマが多いです。トレンディだのおしゃれだのとマスコミは囃し立てます。逆にグレーの作業着姿等のブルーカラーの職場を扱おうものなら、ダサいだの汚いだの3kだのと、特に若い女性にはウケない様に思います。マスコミはスポンサー企業のマーケティング・意向に添った番組作りを余儀なくされる為に、そのマーケティングが若い女性をターゲットにしている為にその様になっています。
例え同じ鉄工所でも、元請けのメーカーの社員等には解らない、下請けの中小零細町工場の苦労が本書には在ります。特に経営者としての著者の経験・苦労からの言葉が在ります。しかし著者は機械加工の仕事が好きで、自身と同じ下請けの鉄工所の町工場に共感し、応援する意味も込めて世間に理解を深めてもらう事を理由に本書を出されたのではないかと思います。
鉄工所・町工場の昭和50年代から現在に至る過程、現在の取り巻く環境、抱える問題等が本書に在ります。
世の中の鉄製品全般を担い、社会の根幹を支えて貢献する「鉄工所」、「町工場」。
汗やチリ・油にまみれて、作業着を汚しながら仕事をする正しさ。
「清貧」、「謙遜」を表している、町工場の小さな古い鉄工所。
「THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書 」(著者:相澤弘機氏、出版日:2010/6/15、出版社:文芸社)
上記の本を読みました。
著者は、大学の文学部英米語学科を卒業すると同時に父の興した大阪の町工場に入社し、その後代表に就任して機械屋として機械加工を日々行っています。早寝早起きが習慣らしく、学生時代からの大変な読書家で、学生時代には自分で小説も書かれていたとの事です。
私は、町工場の鉄工所に育てられました。私は普通科の高校を中退後暫くしてから町工場の鉄工所に見習から入り、最初は図面も読み取る事が出来ず、溶接もそれまではした事が無く、学校で習ったはずの三角関数もすっかり忘れてしまっていました。その後、見習の立場、先手(職人に付いて職人の手の様になって職人に使われながら働く事)の立場、或いはそこから少し毛の生えた様な状態の間に、同じ製缶を行なっている町工場の鉄工所に数ヶ所移り代わりました。その後、一人で仕事を任せられる様になってからも、仕事が少し薄くなった時に、他所の飯を食って見識を広げ、勉強して自分のレベルを上げる事を理由に、製缶工として同じ製缶の町工場の鉄工所の会社に移転しました。同じ職種を続ける為に、会社は代わっても、転職ではありません。
製缶と言う仕事は、幅が広くて奥も深い。製缶と言う名前からしてタンク等の缶かんばかりを作っている様に思うかもしれませんが、そうでは無く、鉄やステンレス等の非鉄金属を材料として、世の中のそれらで出来た物全てが商品としての対象となります。故に、同じ製缶をしていると言っても、会社によって取り扱う商品が異なって様々であり、小さい物から大きな物まで、建築関係、機械関係、輸送関係、食品関係、各種構造物、プラント関係設備等々、町工場の取引先の種類と数、顧客としている親会社の種類によって様々な内容となっています。
よって、同じ会社に居座っていると、そこの会社の事しか解らず、他所での仕事の事が解らなくなってしまいます。そこでの仕事が全てであると思い込んでしまったり、そこでのやり方が正しいと思い込んでしまったり、先輩やベテランの職人の言う事が正しいと思い込んでしまう事にもなりかねません。先輩やベテランの職人は俗にいう「カン」に頼っている部分が有り、それらは得てして職人の思い込みである事も多いです。現場での長年の経験から得た「カン」は価値が有りますが、一方で根拠の無い思い込みは間違っている事も多いです。私は見習時分からその様な疑う姿勢が有りましたので、見習の立場でありながらも余り言う事を素直に聞きませんでした。
以前は若かったので移転もまだ比較的容易かったですが、最近の町工場の不況もあって、同じ様にはいかなくなっています。昔の高度経済成長期の様に物の無い時代では無く、バブルの様な事も今後は起こる事は無いと思います。新規で物を作らずとも、日本国内は一般的に大方設備等は揃っていています。一方で、橋梁の老朽化等、現存設備のメンテナンス・保守点検・修理等は今後は忙しいものと思います。
市場至上原理主義、金融経済、グローバル化の下に、製造業が金融に支配されている為に、マネーゲームによって、特に下請けである町工場は煽りをまともに受けてしまいます。米国を初めとする各国の金融緩和政策によって、紙切れのお金が市中にばら撒かれ、物に比較して天文学的に余剰となっているお金を投資に用いている為に、モノづくりの実体経済は常に揺さぶられて不安定となって、直ぐに状況が変わってしまう事も有って、先行きは不透明で全く予想・予断が出来ません。
お金が大分余っているにも関わらず、下請けの町工場まではお金が回って来ません。政府の金融緩和による市中のお金の量を増やしても、銀行が自身の営利目的の為に日本よりも金利の高い海外に投資したり、元請けの大企業・メーカーはリーマンショックのイメージも色濃く記憶に残っていたり先行き不透明である事から内部留保をして、下請けにお金を回しません。そして、今後、或る時急にハイパーインフレが起こって、その不況の煽りを食らう恐れが有ります。
下請けの町工場は、親会社の都合でいい様に使われてしまいがちです。自分の所で仕事をしようとしていた品物が忙しくて手が回らなくて、納期がいよいよ迫ってきて出来ないからといって、その納期のままで下請けに出す為に、下請けの町工場は超特急で、遅くまで残業をしたり、外注として他の同業の町工場に仕事を分割して振り分ける等をして、その納期に間に合わさなければならない羽目になります。
不況で世間一般的に仕事の無い時には、元請けは多くの下請けに見積を出して、その中で最も値段の低い所に仕事を出します。しかし、値段を低く見積もる会社は赤字覚悟で見積を出している事も多く、仕事が無いよりはまし、従業員を遊ばせないよりはましと言う事で仕事を取る会社も多いです。
元請けの直接の1次下請けならまだしも、2次の孫請け、3次、4次、5次……と下のほうの下請けとなると、会社を通す度にピンハネ(中抜き)されて利益が出るどころか赤字覚悟の仕事、合わない仕事となります。
その様に、仕事をしても儲からず、却って仕事をする事によって赤字が膨らんでしまいかねないので、自分の所に工場の無い、事務所だけの鉄工所も最近は多いです。要するに、自分の所では工場の現場で物を作る仕事をせず、営業や見積、材料の発注等をするだけで、実際のモノづくりの仕事は通すだけで下請けに安い値段で押し付け、ピンハネする事で利益を得ています。また、派遣業者の様にして、大手の工場に従業員を入れているだけの所も有ります。
例え元請けの直接の1次下請けであっても、そことの取引量の割合が高い場合には、親会社の都合に左右されやすくなります。もしもそれが1社だけであると、そこに切られた場合には即倒産となります。逆に、2次や3次の下請けでも、仕事をもらう先の多くの顧客を持っていると、潰れにくいです。
ところで、大きな会社は従業員も多い為に、分業制によって一人ひとりの作業範囲は狭くなっています。逆に大手の「単能工」と違って、10人前後等の零細町工場は人数が少ない為に、「多能工」として何でも熟しています。多能工の場合は他所の同じ職種の会社に代わっても、融通が利き易く、柔軟性が有ります。よって、何処へ行っても通用しやすくなります。昔の「渡り職人」は、いろんな所を転々として多くの見識を持ち、融通の利く腕を持っていました。
鉄工所の事が、余り世間には理解されていないと思います。また、誤解も多いと思います。社会に影響を与えるマスコミの中でも特にテレビの場合には、スーツ姿のホワイトカラーの職場が舞台のドラマが多いです。トレンディだのおしゃれだのとマスコミは囃し立てます。逆にグレーの作業着姿等のブルーカラーの職場を扱おうものなら、ダサいだの汚いだの3kだのと、特に若い女性にはウケない様に思います。マスコミはスポンサー企業のマーケティング・意向に添った番組作りを余儀なくされる為に、そのマーケティングが若い女性をターゲットにしている為にその様になっています。
例え同じ鉄工所でも、元請けのメーカーの社員等には解らない、下請けの中小零細町工場の苦労が本書には在ります。特に経営者としての著者の経験・苦労からの言葉が在ります。しかし著者は機械加工の仕事が好きで、自身と同じ下請けの鉄工所の町工場に共感し、応援する意味も込めて世間に理解を深めてもらう事を理由に本書を出されたのではないかと思います。
鉄工所・町工場の昭和50年代から現在に至る過程、現在の取り巻く環境、抱える問題等が本書に在ります。
THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書価格:¥ 1,365(税込)発売日:2010-06-01 |
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