感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

乾癬性関節炎の治療について –その2–

2015-12-10 | 免疫

前回に続きまして、乾癬性関節炎の治療についてです。今回は関節リウマチでもその効果が示されています生物学的製剤に関してです。現状では治療の推奨はステップアップ法ではありますが、やはり治療の主役はTNFα阻害剤のようです。RAのときのように使用中の効果減弱がありうる、MTXとの併用はどんな意味があるのか。

 

 

生物学的療法

 

・生物学的薬物治療、すなわち前炎症性免疫細胞やサイトカインを阻害または調節する治療用タンパク質、は 効果的に乾癬性関節炎(PsA)を治療する

・乾癬および乾癬性関節炎の研究と評価グループ(GRAPPA)および欧州リウマチ学会(EULAR)のような国際的グループによって開発されたPsA治療の推奨では、中等度から重症の患者に対する治療としての生物学的製剤をお勧めしている。

 

・腫瘍壊死因子α(TNFα)阻害剤(TNFi)は、 関節炎、腱付着部炎、指炎、脊椎炎、皮膚や爪の疾患、ならびに関連する炎症性腸疾患およびブドウ膜炎を含めて、効果的にPsAの臨床症状の全てを治療する能力

・このサイトカインを標的としその活性低下させる薬は、関節炎、腱付着部炎、指炎、脊椎炎、皮膚や爪の疾患を間引きで重要な利点を示す。進行性構造的損傷を阻害する。

・持続的な寛解または低疾患活動性の状態は、現在、これらの薬剤を用いて達成可能である。

・直接お互いを比較した試験は全く実施されていないが、間接比較したメタアナリシスではTNFiの有効性に有意な差を示さなかった。 [Biologics. 2012;6:417-27. ]

 

・TNFiは、すべての患者で薬効を示すわけではない可能性があり、部分的には免疫原性、経時的に有効性を失う可能性がある。

・TNFiの失敗は、一次無効(初期応答の欠如)または二次無効(すなわち時間の経過とともに効果の損失)のいずれかに分類することができる。

・経時的に有効性が減少すれば TNFi間のサイクリング または異なる作用機序を薬に切り替えが必要となる。

・TNFi無効時の別のTNFiの切り替えはRA治療にては確立された概念。 PsAの少ない効果的な治療法の選択肢にもかかわらず、より限定的ではあるがいくつかの根拠が別のTNFiへの切り替えをサポートしている。

・デンマークの生物学的療法試験(DANBIO)の全国レジストリからのデータも、TNFi切り替えが臨床的改善をもたらすことができることが明らかになった:2年後TNFIを切り替えた患者の47%がACR20応答を達成した。 [Arthritis Rheum. 2013 May;65(5):1213-23.]

・TNFiはその使用によりそれに対する抗体が形成され治療効果を中和しまたは減弱させる潜在的な効果を有す。MTXはこの抗体による臨床応答失活の可能性を軽減し免疫原性を減少させうる。

・抗薬剤抗体の開発は最も一般的にインフリキシマブ使用で観察されている。インフリキシマブ、アダリムマブ、およびエタネルセプトの3剤で検討から、エタネルセプトで最低であるされている。

・有効性の低減は、部分的に免疫原性に起因することができ、MTXまたはレフルノミドの併用を必要とする。

 

・TNFiと異なる作用機序を持つ薬剤、インターロイキン(IL)-12/23阻害剤ustekinumab, IL-17 阻害剤の secukinumab, ixekizumab,brodalumab, そしてabatacept やIL-23 阻害剤などはPsAの臨床で効果を示している。

※ブログ管理人 注:ウステキヌマブustekinumabは商品名ステラーラで、セクキヌマブsecukinumabは商品名コセンティクス皮下注で販売されている。セクキヌマブは乾癬性関節炎患者を対象とした試験で1年間有効性を維持したとする報告あり。

 

併用治療

 

・RAにおいては、伝統的DMARDとTNFiの併用は効力を向上させることが明らかであるが、PsA患者においてTNFiとMTXを併用することが利益をもたらすかどうかは議論の余地がある。

・RESPOND試験(MTX-Naïveの乾癬性関節炎患者におけるIFX調査)での早期治療未経験のPsA患者におけるMTXプラスIFX対MTXのオープンラベル試験では有意に高いACRとPASI応答は併用群で認められました。 [Ann Rheum Dis. 2012 Apr;71(4):541-8. ]  この試験からは早期PsA治療における単独療法に対する併用治療の潜在的価値を示すかもしれない。

・デンマークDANBIOレジストリでは、薬物の継続率はインフリキシマブIFX治療患者のサブグループを除いては、 MTX併用とMTXなしの差はなかった。逆にIFXに追加したMTX療法はIFXの継続率を改善した。 。 [Arthritis Rheum. 2011 Feb;63(2):382-90. ]

・ノルウェー(NOR-DMARD)レジストリは、MTXの存在下または非存在下でTNFiで治療された患者で同様の6ヶ月EULAR応答率を示したがしかし、1、2年での薬物の継続率はその差がIFX治療サブグループで最大であったことと併用療法で高かった。 [Ann Rheum Dis. 2014 Jan;73(1):132-7. ]

・PsA例にてTNFiとMTXの併用治療を検討した14の研究の文献検索レビューでは、TNFi使用の単剤療法によって達成ものを超えて臨床症状の何の改善も認められなかった。[J Dermatolog Treat. 2011 Oct;22(5):276-84.]

・これらからは、併用療法はIFXではその薬剤の生存を改善するかもしれないことを示唆している。

・TNFi単独療法を失敗した患者に従来のDMARDを追加することの有効性を改善するという根拠はない。 [Joint Bone Spine. 2015 Mar;82(2):80-5.]

 

 

次回に続く

 


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