数十年前から掌蹠膿疱症、数年前から胸椎の痛みあり整形外科でのMRIで脊椎炎を指摘され当科にこられた。SAPHO症候群と診断した。前医で扁桃腺摘出を受けていて、いま鎮痛剤にNSAIDsを飲んでいるが皮膚症状も骨格痛もいまひとつ。
胸骨周辺や脊椎などの骨炎と、重症にきびや掌蹠膿疱症 などの皮膚症状を伴うことが多い症候群である。いまだ確立された診断基準がなく、骨格症状と皮膚症状の出現にtime lagがあることから診断がなされるまでに相当の時間がかかることも多い。稀な疾患のため十分な検証試験が組めず確定した治療法もない。病因にアクネ菌の感染症は絡むようだが抗菌薬の長期治療的効果はあまりなさそう。DMARDsや抗TNFなどのRAの薬、そしてパミドロネート静注などビスフォスフォネートが効くかもしれない。
(→ SAPHO症候群で見られる骨関節病変の治療 も)
まとめ
・スペインのレトロスペクティブ研究では、患者の59.6%で皮膚病変の以前に関節病変。前胸壁の痛みが最も頻繁に現れ(73%)、末梢関節炎(32%)、仙腸関節痛(26.9%)の順。皮膚症状は63.5%で示された。
・最も一般的な筋骨格系病変は、膝、足、MCP,MTP関節炎、腱付着部炎、仙腸関節硬化症、前胸壁(胸骨、鎖骨、肋骨)や軸骨格や骨盤骨炎。下顎骨は、症例の約10%に影響。
・皮膚症状は、重度にきびacne(集簇性または電撃性)と掌蹠膿疱症 (PPP)。 大規模コホート研究では、皮膚病変は患者の40%~68%で筋骨格系症状に先行、30%で同時に発生、32%~60%の患者で遅れて発生。
・SAPHO症候群は、仙腸骨炎、腱付着部炎、傍椎骨骨化、および強直を含め脊椎関節炎spondyloarthritis(SPA)と、臨床的および放射線学的特徴を共有することができる。
・HLAプロファイルを分析する遺伝的研究では、乾癬および乾癬性関節炎のグループと比較してSAPHO症候群患者で異なる遺伝的背景を発見。
・骨シンチ検査では、胸鎖関節は胸骨柄と胸骨とともに、特徴的な"ブルヘッドサインbullhead sign牛角様所見 "を示す。
・MRI検査は、SAPHO症候群における軟部組織の腫脹、関節内滲出液、および滑膜反応の評価において最も敏感な手法。
・SAPHO症候群の診断について検証された基準は存在しない。ほとんどの患者が完全SAPHOの診断を満たしていない。
・SAPHO症候群の一つの病因仮説は、遺伝的素因個人において、微生物によって引き起こされる自己免疫反応に起因して"反応性関節炎"につながる、というもの。
・Propionibacterium acnesは、SAPHO症候群、PPP、壊疽性膿皮症、および他の臨床条件において役割を果たし得る。
・テトラサイクリンまたはアジスロマイシンの長期的投与後の臨床的改善は 感染仮説をサポートしている。
・SAPHO症候群はまれな疾患であるため、その治療を分析したプラセボ対照無作為化試験はない。
・治療に使用することができる薬剤は、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、経口および関節内コルチコステロイド、抗菌薬、ビスホスホネート、及び生物学的製剤である。
・抗菌薬(アジスロマイシン週に500 mgを25回使用)を使用して27人のSAPHO症候群患者を分析した研究では、治療16週間後に骨炎のMRIスコアの有意な改善を示したが、この改善は、28週目(抗菌薬治療を停止した後12週目)では持続しなかった。
・頻繁ににきびの治療のために示されているイソトレチノインも、SAPHO症候群のフレアの治療に記載されている(日本は未承認)。
・メトトレキサート20mg/週は、コルチコステロイドおよびイソトレチノインの使用後再燃を提示したSAPHO症候群患者において再燃を安定させた。 スルファサラジンとレフルノミドの使用の報告もある。
・関節炎、骨炎、および集簇性座瘡や電撃性、そして汗腺炎、その他の皮膚症状、または孤立CRMOに関連付けられている腱付着部炎の難治症例が、抗TNF-α薬で治療され、良好かつ迅速な初期の臨床応答が頻繁に得られたが、これらの薬物の長期使用の一連の記述はない。
・症例報告で、アレンドロネートとイバンドロネートなどの経口ビスフォスフォネートとの良好な臨床反応を示している。静脈内パミドロネートの使用は、かなりの数の患者において部分的または完全寛解を生成することができる。(静注パミドロネート毎日60㎎3日間連続、を処方され、良好な反応または持続的寛解を示した)
・ゾレドロン酸による治療の成功はまた、難治性疾患患者で報告されている。
・SAPHO症候群に生じる下顎骨のび漫性硬化性骨髄炎は、プレドニゾロンとビスホスホネートの使用により満足な応答を示すことが報告されている。
参考
Rheum Dis Clin North Am. 2013 May;39(2):401-18.
同じ症状で苦しんでいる方の少しでも助けになれば幸いです。
骨シンチの結果で確定診断を受けました。
現在、プレドニン、アザルフィジン、セレコックスから始まり、12月24日からエンドキサンが1日朝1錠×3日を続けています。
下半身のパーツが外れている様な感覚が内服を始めて繋がった感がでた気はしましたが、薬効が効いていないのか、9月から現在まで生理的欲求以外では寝ているのがやっとの状況です。
これから社会へ復帰できるのかとても不安です。
歩くと、おばあちゃんのような歩き方。
誰かに付き添ってもらわないと電車には乗れない状態です。病院へ行くには友達に車で送ってもらっている状況。
仕事も休職になってしまいました。
みなさん、日常生活は自らできているのでしょうか。私は今は無理です。
とてもつらいです。
みなさんそれぞれの個体差がありますから一概には言えませんが、どれくらいの期間で寛解方向へ迎えたのでしょうか。