感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

乾癬性関節炎の治療について –その1–

2015-12-08 | 免疫

前回に続きまして乾癬性関節炎の治療について。関節リウマチと比べますとまだまだ文献やエビデンスも少なめではありますが、近年いろいろわかってきています。主な治療ガイドラインは、やはり早期治療は有効か、NSAIDsや従来型DMARDsの効果や位置づけは、生物学的製剤はどうか、併用療法は、治療目標や基準は、注意すべき併存疾患は、など。最近の文献をまとめました。

生物学的製剤で適応は日本では乾癬に対しては、レミケードは乾癬の4病型(尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症)に対して(用量は5mg/kgを初回、2週、6週、以後8週おき)、ヒュミラは尋常性乾癬および関節症性乾癬に対して(用量は初回80mg、以後2週ごとに40mg、効果不十分なら80mgへ増量可)と2剤が適応を持っていますね。

 

 

治療について

 

・乾癬性関節炎(PsA)は、以前に関節炎の軽症型と考えられていたが、現在は重要な関節損傷と生活の質の損傷を引き起こす可能性のある攻撃的な疾患として認識されている。

・患者の約40%〜60%は、初期X線写真の変化を伴う重篤な、破壊性の関節炎を経験する。

 

・HaroonらはPsAの283人の患者にて、診断前に6ヶ月以上の症状のある患者はびらん性末梢関節疾患、破壊性関節炎、関節変形、機能障害や仙腸骨炎を持っている可能性があると報告、 薬物フリーの寛解を達成するのが大幅に少なかった。[Ann Rheum Dis. 2015 Jun;74(6):1045-50.]

疾患の早期認識が重要である。しかしながら、PsA治療における早期の積極的な治療の有効性は確立されていない。

・McHughらは早期治療がPsAにおいて長期的な罹患率にプラスの影響を持っていることを確認:疾患進行は疾患確立の患者(期間>2年)で悪化することが認められ早期治療的介入の重要性を強調した。 [Ann Rheum Dis. 2011 Dec;70(12):2152-4. ]

・RAと同様に臨床医はPsAにおいても “window of opportunity”を有しているかもしれない、

・疾患特異的な考慮として、他と比較して最も顕著な相違の一つはPsAで発生する有意な不均質性であり治療を選択する際に関節のみでなくいくつかの関連する関節外症状と併存疾患も考慮しなければならない。

 

・乾癬および乾癬性関節炎の研究と評価のためのグループ(GRAPPA)は2009年に疾患管理のための勧告を出版。[ Ann Rheum Dis. 2009 Sep;68(9):1387-94.] ここでは、末梢関節炎、皮膚や爪病変、軸性病変、指炎、腱付着部炎に病型を分け、それぞれに治療薬を定めている。

・PsA治療のためのEULARの勧告は2011年に開発された。関節の炎症の最初の治療として、非ステロイド性抗炎症薬を提案、もし 必要なら、メトトレキサートなどcsDMARDsの導入、そして最終的に、もし炎症は持続すればTNF阻害剤(TNFis)の導入をする[Ann Rheum Dis. 2012 Jan;71(1):4-12.]

・治療の目的と併存疾患(特に、心血管疾患および代謝症候群)を考慮することの重要性、も包括的な原則で扱われている

・その後、secukinumab or ustekinumab, やtsDMARD: apremilastなどの新規な治療法が出現し、また新たな治療戦略やtreat-to-target 勧告があり、これら更新の結果はEULAR2015会議で発表されている。(近々主論文が掲載)

 

 

DMARD

 

・従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)は、ランダム化比較試験の欠如にもかかわらず、観察研究に基づいた証拠で、PsAのファーストライン治療のまま。

・生物学的療法(後述)が導入される前はPsAのための治療法は、物理的および作業療法などの補助的なアプローチとともに、主にメトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)、非ステロイド性抗炎症薬などから成っていた。

・MTX、SSZ、レフルノミド、およびシクロスポリンはPsA治療において使用されている。

・DMARDは一部の患者では、少なくとも効果的であると多くのリウマチ医の認識。

・PsAにおけるこれらの薬剤の使用をサポートする高品質の実験的証拠が不足している。

・部分的に有効であるが、これらの薬は、低疾患活動性や寛解状態を達成することができず、多くの場合、十分に許容されない。

・従来型DMARD療法で治療されたPsA129名の患者の前向き研究では、臨床的改善にもかかわらずびらん性疾患は2年間で患者の47%で発生した。[Rheumatology (Oxford). 2003 Dec;42(12):1460-8. ]

 

・MTXについては、2003年以来2無作為化対照比較試験(RCT)が公開されている。 

・Scarpaらは初期(<12週間の疾患期間)の少関節炎PsA35例で、3ヶ月間はNSAID単独、 またはNSAIDプラスMTXに無作為化、その後はすべての例で併用した。

3か月目では併用群は有意に良好な関節症状を示したが、6か月目では2群間に差はなかった。[Clin Rheumatol. 2008 Jul;27(7):823-6. ]

・乾癬性関節炎試験(MIPA)では、MTX群とプラセボ群では6か月で結果(PsARC, ACR20/50/70, DAS-CRP)に差は認められなかった。 [Rheumatology (Oxford). 2012 Aug;51(8):1368-77.]

・ノルウェーのDMARDレジストリで、MTXの有効性および保持率は、430人のPsA患者および1280名のRA患者で比較した。 [Ann Rheum Dis. 2010 Apr;69(4):671-6.] MTX治療の6ヶ月後、PSAおよびRA患者の両方が、ほとんどの疾患活動性対策や患者報告アウトカムに改善した。

・日本人患者における研究が発表された。 [Mod Rheumatol. 2015 May;25(3):431-4. ]  TNFIプラスMTXと単独MTXで治療された51名のPsA患者は遡及的に検討された。両方の治療は臨床活性を低減するのに同等に有効であった。

・MTXに関して興味深い問題の一つはその毒性のRA患者とPsA患者での違いで、最近の横断研究では肺毒性がPsAと患者と比較しRA患者でより一般的であったことを確認した、その肝毒性はPsA患者においてより一般的であった。[J Rheumatol. 2008 Mar;35(3):472-6.]

 

・スルファサラジン

系統的レビューでは、6つ のRCTはプラセボ群とSSZを比較した。 SSZはPsAにおける有効性を実証した。その効果の大きさは非常に低く、例えば、腱付着部炎などの他の症状には効果がない。

・SSZは、PSAでX線撮影の進行を停止していないようである。

・SSZを受けた患者の三分の一までにおいて胃腸の不耐性、めまい、および肝臓毒性、などが観察されている。 [Arthritis Rheum. 1996 Dec;39(12):2013-20.]

 

・現在、ホスホジエステラーゼ4阻害apremilastとヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤を含めて、乾癬およびPsAの治療のための臨床開発にある

 

 

次回に続く

 


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