総合内科入院の方で意識レベル低下、髄液細胞数増加あり検索中、基礎疾患に長年の関節リウマチがあったため当科に相談がありました。髄液は単核球優位で、グラム染色や培養で菌検出なく、無菌性髄膜炎疑いです。どんな鑑別リストになるのでしょうか。ごく稀なようですが‘リウマチ性髄膜炎‘というのもあるようです。
まとめ
・用語「無菌性髄膜炎」とは脳脊髄液(CSF)中に識別される細菌性病原体によって引き起こされたものではない髄膜の炎症によって特徴づけられる臨床病態
検査・診断
臨床的特徴を有する患者において
CSFの髄液細胞増加症(単核または多核細胞優勢のいずれか)の同定
総CSF細胞数(通常は100〜1,000細胞/ mm 3以上)
細菌塗抹標本およびCSFの培養は一様に陰性
タンパク質濃度(通常正常から 穏やかに上昇)、
グルコースレベル(通常は正常から少し落ち込み)は正常
腫瘍壊死因子(TNF)および乳酸のレベルは低い
・臨床およびルーチンの検査結果にて、無菌性髄膜炎と部分的に治療された細菌性髄膜炎の間の区別の難しさはあり、代替原因が明らかになったり、患者が有意な臨床的改善を実証するまで、ほとんどの患者は後者の病態のために治療されるべき。
・コクサッキーやエコーなどのエンテロウイルスは、無菌性髄膜炎の最も一般的な原因
・臨床症状は、頭痛、発熱、倦怠感、羞明および髄膜徴候が含まれる。痙攣、神経障害、重度鈍麻は、特定の非ウイルス性感染性髄膜炎を除いて稀。
鑑別リスト
ウイルス :
エンテロ(ポリオ、コクサッキー、エコー)、アルボ、HSV-1、HSV-2、CMV、EBV、HHV6、VZV、
インフルエンザA/B、ムンプス、麻疹、パルボウイルスB19、HIV
その他感染
マイコプラズマ、スピロヘータ(ボレリア、梅毒、およびレプトスピラ)、 マイコバクテリア、ブルセラ、ボレリア、レプトスピラ、トキソプラズマ、リケッチア、クリプトコッカス、カンジダなどの真菌類
部分的に治療された細菌性髄膜炎(コモンな菌)
髄膜近傍の細菌感染(副鼻腔炎、中耳炎、乳様突起)
薬剤性
非ステロイド性抗炎症薬 (特にイブプロフェン)
トリメトプリム/スルファメトキサゾール、ラモトリジン、スルファサラジン、アモキシシリン、シプロフロキサシン、アロプリノール、アザチオプリン、免疫グロブリン(IV)、OKT3、イソニアジド、バラシクロビル、メトロニダゾール、MTX髄注
ワクチン接種後
結合組織疾患
膠原病:特に全身性エリテマトーデス、あとシェーグレン、関節リウマチ
血管炎: ウェゲナー肉芽腫症、中枢神経系血管炎、川崎病
肉芽腫疾患(主にサルコイドーシス)、
ベーチェット病
髄膜に波及した新生物 白血病
臨床評価・検査
I 血液検査; 血算、ESR、CRP、ウイルス特異的急性期と回復期ペア血清IgGまたはIgM検査(エンテロウイルス、アルボウイルス、アデノウイルス、LCMV、EBウイルスおよびHSV-2)、
II CSF検査;細胞数(総数と分画)、 グラム染色、抗酸菌染色、細菌培養と感受性、タンパク質、グルコースおよびガンマグロブリン、ウイルス分離、ウイルスと結核のためのPCR検査
III 画像; 頭部CTスキャン
IVその他; 咽頭および直腸スワブからのウイルス分離
適応があれば
I 血液検査; 抗核抗体、リウマチ因子、抗SSA/SSB抗体、血清タンパク電気泳動、ライム病抗体価(ELISA)、血清アミラーゼ、ウイルス分離、VDRL、トレポネーマ蛍光抗体吸収試験
II CSF検査; CSF乳酸、クリプトコッカス抗原、インフルエンザ桿菌用のラテックス凝集試験、VDRL、FTA-抗体テスト、アンジオテンシン変換酵素(ACE)レベル、ツベルクロステアリン酸、細胞診、B burgdorferi, Brucella, Histoplasma やCoccidiodesのための特異的IgM抗体
III 画像; 胸部Xray、 脳MRI
IV その他; PPDテスト
参考文献
Arq Neuropsiquiatr. 2013 Sep;71(9B):659-60.
Neurol Clin. 2008 Aug;26(3):635-55, vii-viii.
Indian J Pediatr. 2005 Jan;72(1):57-63.
リウマチ性髄膜炎について [J Clin Neurosci. 2010 Jan;17(1):129-32. ]
・MRIスキャンは脳内の髄膜増強を明らかにし、病理学的所見は髄膜リンパ球浸潤、血管炎およびリウマチ結節を示す
・生検標本の病理学的検査により診断